原田さんと永倉さんが駐車場まで迎えに来てくれた。
4人で会場へ向かう途中、少し遠くから歳三さんと沖田さんが見えた。
楽しくお話しているというより…絶対にいがみ合っている風にしか見えない。
走って駆けつけようと思うが慣れない浴衣と下駄のせいで走る事ができない。
「あっ…あぁ~沖田さん…また…チョ…」
「あっ?どうした、ethlinちゃん?」
私の手を引いて歩いていた原田さんが心配そうな顔をして振り向いた。
「歳三さんと沖田さんが…なんかケンカしてるっぽい…」
「あ?あぁ…そうだな。あの二人はいつもああだから気にすんなよ」
「でっ…でも…まさかぁ…歳三さんに…アワワ…あの怪しいチョコの箱を渡したんじゃ~」
焦りだけが先走りして足が上手く動かない。
モタモタしているうちに歳三さんが私達に気がついて駆け寄って来てくれた。
「うわ~ん
歳三さ~ん」
「ethlinどうした?もう足が痛いのか?見せてみろ」
足が痛いのと勘違いしたらしく、歳三さんが足元にしゃがみこむ。
「とっ…歳三さん…沖田さんが…チョッ…コ…」
気が動転していて、口が上手く回らない。
「とにかく落ち着け。ほら…深呼吸しろ」
「はっ…はい…」
あわあわしている私の背中を歳三さんが優しく撫でなでる。
「で?総司がどうした?」
「沖田さん…沖田さん…また…」
「あぁ…生意気な口きいたからちょっと言い合いに…」
「歳三さんにまたあの変なチョコ渡したんですか~。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。!!」
一瞬だけシーンとなったとなり、その後原田さんと永倉さんが大声で笑い出した。
「ふっ…変なチョコって…アレの事かよ。ethlinちゃん…いくら総司でもこんなところでアレを渡すなんで嫌がらせしねぇだろ?」
「…悪い…途中からおろおろし始めたと思ったら…ふっ…ふははははっ…笑いがとまらねぇや」
(なっ…なに?なんか私…おかしな事言った?)
「ethlin安心しろ。総司にはちゃんと言い返してやった。クッ…モタモタしやがって。履き慣れねぇもん履いてくるからだ。ほら…慌てずゆっくり歩け。置いてかねぇから安心しろ」
「はっはい~!」
先を歩く歳三さんの背中を追いかける。
ふと立ち止まり、優しく笑いながら耳元で囁く。
「…その…なんだ…浴衣…なかなか似合ってる。…ほら…手…かせ」
顔を隠すように背中を向けて、私の右手をそっと握る。
原田さんとはまた違う…ごつごつとした大きな手から、温かな体温が流れてくる。
恥かしさと嬉しさと…いとおしい気持ちで、私の胸はいっぱいになった。
「うぉ~待ってたぜ!差し入れ!!俺…腹減ってさ~」
「ふふふっ…平助くん、朝からご苦労さま。たくさんあるからね、遠慮せずに食べて」
お重を開けておねぇと二人、紙皿に取り分け始める。
「うわぁ~どれも美味そう~。なおさんやっぱ料理上手だよな♪」
平助くんはお重の中を見て大興奮している。
「嫌だな~おにぎりとお漬物と…簡単なサラダくらいだよ」
おねぇは謙遜しつつ、嬉しそうに笑う。
「おっ!やっぱり女子の作る料理はいいものだな。…ん?ずいぶんとおにぎりの大きさが違うようだが…」
近藤さんは不思議そうな顔をしておにぎりを見比べている。
(あわわっ…やっぱり客観的に見たらすごく変なんだ。私のおにぎり…)
「ちいせぇおにぎりは全部、ethlinお前が握ったんだろ?」
歳三さんはクスクスと笑いながら小さいおにぎりと一つつまみ、口にする。
「味はちゃんとしたおにぎりだから安心しろ。コンビニのおにぎりより断然美味い」
あっという間に一個を平らげてしまった。
「ほっ…ホントですか~」
たかがおにぎり、されどおにぎり。
自分が作ったモノを褒められるのはやっぱり嬉しい。
「一つ難点を言えば…たくさん食わねぇと、腹いっぱいにはならねぇな」
歳三さんは少し意地悪な顔でニヤリと笑う。
「あぁぁぁぁ~たくさん食べてください!!歳三さんのためにたくさん作りましたから!!」
「むっ…そうか…うむ…ではethlinくんの作ったおにぎりは歳に譲るとしよう」
「えっ!…ちがっ…近藤さんもたくさん食べてください!!」
あたふたする私の姿を見てみんなの笑い声が響く。
やがて伊東のおじさんが冷たいビールの差し入れを持って現れ、皆アルコールがほどよく回って屋台の周りは宴会場のように賑やかになった。
しばらくすると、会場に小さな子供達がチラチラと集まり始めた。
「だいぶ客が集まりかけてるな。新八、総司、そろそろ着替えて来い。ガキどもがウロウロし始めたからな。新八!お前の出番だ、早く戻って来いよ」
歳三さんに言われ、二人が席を離れる。
「そっか!みんな浴衣ですもんね♪新八さん…法被でも着て出てきそう・・・お祭り大好きそうですもんね~ふふふっ」
「お祭り大好きは正解だがな…まぁどんな格好で出てくるかは…見てのお楽しみだ」
歳三さんは意味ありげにニヤリと笑った。
「ふーん。なんかのコスプレでもしてくるのかな?」
おにぎりをもぐもぐと食べているとふいに誰かに肩を叩かれた。
「ふわぁい?」
くるりと振り向くとそこには…
「人が呼ぶ、子供が呼ぶ、ついでに若い姉ちゃんは大いに俺を呼んでくれ!!ふははははははは~仕事の鬼、永倉新八ここに見参!!」
鬼の扮装をした永倉さんが立っていた。
「………」
「どうした?ethlinちゃん?もっ…もしかして…おっかなかったか?」
新八さんを凝視したまま黙りこくる私の顔を、心配そうな顔の永倉さんが覗き込む。
「………ぷっ…永倉さん…似合いすぎ…うっ…ウケル…あははははっ~」
私はお腹を抱えながら笑い出した。
「新八…お前を呼んでるのは馬と競馬場だけだろうが…ったく…何が仕事の鬼だ」
ため息混じりで歳三さんが呟く。
「あはははは~永倉さん、お馬さん大好きですもんね…ダメだ…歳三さんの言葉が…ツボに入って…あははは…だめだ~笑いと涙がが止まんない…」
「おっ!そんなにウケたか?おっしゃ~!!そこまで喜んでくれたらやりがいも出るぜ!!」
「絶対にウケますって!もう太鼓判付です!!」
「はぁ~ethlin…あんまりこいつをおだてるな」
「歳三さん、大丈夫ですよ。お祭り楽しくなりそうですね♪私もいっぱいお手伝いして、屋台を盛り上げますから」
(えへへ♪夏祭りって楽しいや♪今年から夏が好きになりそう)
大好きな人と過ごす夏がこんなに楽しいなんて、私は初めて知った気がした。