明日は夏祭りだ。
仕事の帰りにおねぇと待ち合わせして、スーパーで明日の炊き出しの材料を二人で選んでいる。
炊き出しと言っても簡単に食べられるおにぎりとお漬物くらいだけど。
「土方さんはおにぎりの具材、何がいいって言ってた?」
「えっとね、オーソドックスだけど、梅干と昆布、あと鮭。梅干は酸っぱいのが好きなんだって。家から持ってきたやつあるよね?あの美味しいやつ。あとね…シーチキンは好きだけど、マヨネーズ味のシーチキンがおにぎりに入ってるのは嫌いだって。私もアレは苦手…お寿司なら食べられるけど」
「じゃあ後は…塩鮭と甘塩たらこと塩昆布…梅干は家にあるし…あと海苔か…」
わぁわぁ言いながら食材を手にする。
(おにぎりだけど…歳三さんのために何か作ってあげるのって…初めてだな…)
それが嬉しくもあり、心にチクリと痛みを感じさせる。
(みちるさん…みちるさんは…きっと…歳三さんにたくさんお料理作ってあげたりしたんだろうな…)
顔も正体も今どうしているのかも…知らない…きっと知ってはいけない…そんな人の事がずっと心に引っかかっている。
(歳三さんは「自分がみちるの幸せを壊した」って言ってたし、若様もみちるさんの事「壊れた」って言ってた…。どんな意味なのか怖くて聞けないし…何よりも…みちるさんの存在が…)
自分でもよくわからない、この感情がなんなのか。
なぜこんな事ばかり考えているのか。
単純に言えばただの妬きもちだ。
でも、みちるさんを今でも大切に思っている歳三さんの気持ちを大切にしてあげたいと思い、その考えが自分自身の心をチリチリと焼きつける。
(本当に嫌だ…こんな…偽善な…自分が怖い…)
「ethlinどうしたの?真剣な顔して塩鮭握っちゃって」
気がつくと塩鮭のパックを握りしめ立ち尽くしていた。
「あっあはははは…なんでもない。定価と半額になったのがあったから、どっちがいいかな~って考えてた」
「半額で十分、十分。すぐ焼いちゃうしね。それに少し時間が経ってる方が味がしっかりしてるし…佐之は梅干し嫌いだから鮭が多めになるんだよね~。総司…くんも酸っぱすぎるのは苦手って言ってたな。新八さんは昆布が苦手らしいし、平助くんは何でも食べるけど、やっぱり鮭とかたらことか好きみたいね。鮭ユーザー多いからたくさん買うよ」
「ふふっ…佐之さん、子供みたいだね」
「ホント、ガタイのデカイ子供だよ」
そう言いながら笑うおねぇは本当に幸せそうだ。
「ねぇ…おねぇは…今幸せ?」
「何?幸せに決まってるでしょ…」
優しくふわりと笑う。
大好きなおねぇ。
私の憧れの…おねぇ。
おねぇが幸せなら私も嬉しい。
ずっと幸せでいて欲しい。
ふいにおねぇが私の顔を覗き込んだ。
「ethlinは?ethlinだって今幸せでしょ?」
幸せ?
幸せなはずだ。
大好きな人がいて
大好きな人に想われていて
大好きな人との一緒の時間を過ごす。
これ以上の贅沢なんてないはずなのに、なぜ私の心はさざめくのだろう。
「うん…幸せ…すごく…幸せ…怖いくらいに…」
胸が痛い。
あの人を想えば想うほど胸が痛くなる。
あの人をもっと知りたいと思えば思うほど…不安が募る。
「じゃあ明日は気合入れておにぎり作らないとね。ethlinの作ったおにぎりは全部土方さんに食べてもらわなきゃ♪」
「あはは~じゃあちゃんと上手に握らないと…だね♪」
楽しい夏祭りがやってくる。
複雑な想いを乗せたまま…私とおねぇの…夏祭りが始まる。