としぞーといっしょ  ~せつぶん~  其の三 | ethlinの煩悩毛だらけ

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煩悩さらけ出し日記

としぞーといっしょ  節分 せつぶん 節分  其の二





嫌な予感がして、帰る足が自然と早くなる。

出先で酒を勧められたが、断わるいい機会になった。



「しかし…なんだっていうんだ…」


出かける前の佐之助の様子も気になる。

そしてこんな日に限って、風間達があらわれるのでは…といった気持ちもある。


「洒落にならねぇ」


一人呟き、屯所の灯りが見える所までたどり着くと


「おい!佐之…どうした?」


佐之助が外にいた。


「あぁ、土方さん。帰ってきてくれてよかった」


ほっとした表情で出迎えてはいるが、様子がおかしい。


「奴らが来たのか?」


玄関を潜ると、中は静かだが…。


「それがよう…」


佐之助はトロに話した事の内容、トロが千鶴に問いかけた事、みんなが勘違いに便乗して、千鶴の唇を奪おう


としようとしている事を説明した。


「バカか?あいつらは」


悪態をつきながら部屋に向かう。

なにやら総司と千鶴、トロの争う声が聞こえた。


「総司のやつ…俺が不在の時を狙って、好き勝手やりやがって…」


部屋まであと一寸といった時


ドタン

と盛大な音と、トロの叫び声が響いた。


「トロ!大丈夫か?」


角を曲がって見えたのは、倒れている千鶴と傍らでないているトロ、斎藤に押さえつけられている総司の


4人だった。


「総司!!何してやがる」


総司の舌打ちに苛立ちながら、千鶴の傍らにしゃがみ、様子を調べる。

どうやら額にタンコブが出来ただけの様だが、意識はなく、ぐんにゃりしている。


「副長、今しがた雪村が転倒し、意識を失ったようです」


「えぐ…えぐ…としぞー…ちづるちゃんがぁ~」


皆の様子から見て、総司が何かやらかしたのだろう。


斎藤が止めに入り、千鶴は逃げようとして転倒・・・か。



「トロ、千鶴は大丈夫だ。部屋に運ぶから手伝ってくれ」


しゃくりあげるトロを落ち着かせ、千鶴を抱き上げる。


「佐之助!!千鶴を部屋まで連れていく。布団の用意を頼む」

「わかった」

「斎藤!!総司が逃げ出さない様に見張っとけ。新八と平助が戻ってきたら、縄でしばっとけ」

「御意」


踏み出した時、足元に多数の豆粒が転がっている事に気がついた。


これで滑って転んだのか・・・。


可笑しさがこみ上げてくる。


まったく・・・お前は・・・





敷かれた布団に千鶴をそっと寝かしてやる。

千鶴はそのまま眠ってしまったようで、静かな寝息をたてている。


「としぞー…トロが悪いニャ…。トロがいけないのニャ」

「トロ、気にすんな。普通の連中はあんな勘違いしねぇから、トロは悪くない」



泣きじゃくるトロの頭を撫でて、落ち着かせてやる。

全く…あいつらが千鶴に好意を持っていたことは薄々気づいていたが、まさかこんな騒ぎまで起こすとは…。


「世の中わからねぇ事ばかりだな…」


そう一人呟いて、千鶴の髪をそっとすいてやる。

タンコブは腫れがひいて、うっすら赤くなっているだけだった。

急に佐之助は咳払いを一つして



「んじゃ…土方さん、千鶴は任せたぜ。俺はトロと後始末に行ってくる」


とトロの手を引いて、部屋を出ようとした。



「えぇ~、トロ・・・千鶴ちゃんの看病したいニャ~」



ごねるトロに肩車をして、佐之助はあやすように続けた。



「トロはこれから総司って鬼の鬼退治しなきゃなんねーしな。総司に思いっきり、豆をぶつけてやれ」


「豆まき、まだできるニャ!?いくいく~♪おにたいじに行くニャ~♪」


「頼んだぞ、佐之助、トロ」



佐之助の肩車が高すぎて、トロは鴨居に額をぶつけていたが、豆まきがよっぽど楽しいのか、鼻歌交じりに


部屋を去っていった。






手ぬぐいを濡らして戻ってきた頃には、額のたんこぶは跡形もなく消えていた。


人外の回復力とはいえ、痛かっただろう。


そっと冷えた手ぬぐいを額にあててやる。



「うーん」



千鶴は唸り声を上げたが、また寝息を立てて眠ってしまった。



「こうやって寝てる姿は、普通の女と変わらねぇな・・・」



もとより特別に扱ってるつもりはない。


それにこいつの正体は、この異常な新選組の中では、けして異質なモノではない。



「鬼副長がいる新選組だからな」



クスリと一笑して、穏やかに眠る千鶴の寝顔を見つめる。



「しかし、節分に日に、豆で転ぶなんて・・・本当にお前は馬鹿だな」



そう呟いて、そっと傍を離れる。


廊下に出ると騒がしい声が聞こえてきた。


おそらく新八と平助が帰ってきたのだろう。



「あいつらにまとめてお灸をすえてやるか・・・」



もう一度、眠る千鶴の方を見つめ、そっと呟く。



「ぼやぼやしていたら・・・あいつらの中の誰かに連れ攫われちまうな」



春間近の月明かりの下、一人この想いをそっと心の中にしまう。


今はまだ・・・


これからもきっと・・・


口にすることはできない、この想いを・・・。