日曜日。

 

映画を。

 

ていうかまず、自分を叱っておく。

 

 

夜中、寝ぼけてスマホをいじってたら、Amazonプライムビデオでパラマウントプラスというチャンネルが観られるようになったことを目にした。

 

そこには「スタートレック」が全部観られますよーみたいな惹句が踊っていて、前々から、それこそ”TOS”や”TNG”をじっくり時間をかけて観てみたいと思っていた私は、まさに「ビビビ」と、ていうか寝ぼけててね、衝動的に加入してしまったわけです。

 

 

で、起きてみると...実際に観られる「スタートレック」シリーズはここ最近の3つのシリーズだけで、それこそ映画版も観られず、ただただ茫然、イッキに後悔に襲われて今に至っている訳です。

 

でもまあ加入してしまったんだからしょうがない、他にどんなラインナップがあるのかなと観てみると...何だかあちらのアニメやドキュメンタリーがメインで、肝心のパラマウント映画なんてほんの一握り...なんじゃこりゃ。

 

 

...という訳で、これもまた分不相応だったな、愚か過ぎて笑うしかないのです。

 

 

とはいうもののやはり少しでも元を取って解約してやろうと思ってはいます...にしてもバカですね、私は。

 

 

とりあえずあの周防正行監督の名作「Shall We ダンス?」のハリウッドリメイクをチラッと観たりするくらいで、もうホントね、ラインナップの貧弱さに驚いてるというのが正直なところ。

 

 

ま、私の趣味に合わないというだけなんだろうけど、それにしてもね。

 

 

 

という訳で今日はその「元を取る」をさっそく敢行...今年は「オッペンハイマー」がアカデミー賞を席巻したけど、同じオスカーウィナー、コーエン兄弟、ジョエル&イーサン・コーエン監督が2007年度アカデミー作品賞をはじめとして4部門でオスカーをゲットした「ノーカントリー」を観てみた。

 

 

前にはAmazonプライムで観られたのにいつの間にか観られなくなってて、もう忘れかけてたんだけど、題名を目にしてあああ、そういえば、と...にしても2007年の作品なのか...ずいぶんほったらかしにしてたんだな。

 

 

テキサス州? ニューメキシコ州? 国境地帯...70年代? 80年代? まあとにかく荒涼としたアメリカ西部の砂漠地帯が舞台のメインで、皆殺しにされた事後の麻薬取引現場を偶然見つけた狩人の男が、そこで取引されるはずの大金を持ち逃げすることで、殺し屋や犯罪組織に追われる羽目になってしまう...ある耳巻き込まれ型の逃亡劇ではあるんだけど、話はそう単純でもなくて、いわゆるアメリカの病魔のひとつである「ベトナム帰還兵」としてのアメリカ人の悲哀を絡めたクライムサスペンス。

 

 

アカデミー作品賞ということで、構えて観てたんだけどね、コーエン兄弟って、ああこういう感じか...多分「ファーゴ」くらいしか観たことなくて、その観客の目をくぎ付けにする緊張感、追いつ追われつの中に叩き込まれる息苦しさ...ああ、コーエン兄弟、怖いよー、というね。

 

 

公開当時にハビエル・バルデムの演技が話題になっていたことは知ってたし、それがこの映画の売りなんだろうと思いながら観たんだけどね、まさにそのバルデム演じる殺人鬼の徹底した冷徹さ、得体の知れない恐ろしさにくぎ付けになった。

 

 

追いつ追われつの逃亡的としての面白さの中に、やるせない人間ドラマというか、救いのないアメリカの寂寥感というか、しかもクライマックスからラストに至る、いわゆる「結論」を徹底的にあいまいにして、それこそ殺人鬼よろしく冷徹に観客に放り投げるので、ただただあっけに取られて、余韻に浸る暇さえ与えない...コーエン兄弟、そこまでやるかと。

 

 

でも全体的には、クライムサスペンスの緊張感が途切れることはないし、それこそジョシュ・ブローリン演じる逃げる溶接工、追う殺人鬼バルデム、そしてトミー・リー・ジョーンズ扮するくたびれた保安官のいわば三すくみで、その三人がなかなか同じ画面に表れない巧みな構成で物語を進めていく筆致は、ロジャー・ディーキンスの乾いた映像も相まってもうホント、あっという間の2時間2分。

 

 

にしてもアメリカ、ベトナム戦争の病魔にいまだに侵されているんだな、戦争はろくなことはないなと改めて思い知らされるし、いやそれだけじゃなく、アメリカという国そのものの恐ろしさ、やるせなさ、寂しさみたいなものがこの作品にある意味凝縮されていたのかも知れない。

 

 

あとはまたいつもの余談だが、原題は”NO COUNTRY FOR OLD MEN”というもの悲しさが溢れたいいい題名なのにもかかわらず、なんですかこの「ノーカントリー」というただ短くしただけで、意味が全く分からない、薄-い、パッとしないバカ邦題は。

 

 

更に余談だけど、このパラマウントプラス版の「ノーカントリー」、字幕がずれてる...でるタイミングが遅い。

 

最初はそれがストレスで、観るのやめようかと思ったけど、作品そのものの面白さに引きずられて何とか最後まで観ることはできた。

 

にしてもAmazonプライムって字幕がずれてるの、たまにあるよね。

 

最近観られるようになった「羊たちの沈黙」とか。

 

 

それだけでも解約の理由にしてもいいよね。

 

でもまあ、さっきも言ったけどひと月で「元を取る」ために貧相なラインナップだけど少しでもあれこれ観てやろうかとは思っている。

 

 

もうね、ホント貧相...今日の”NO COUNTRY FOR OLD MEN”がいい作品だったことがせめてもの救いでした。

 

 

「スタートレック」はそれこそ、今の私のストリーミング環境の中にあって、更にネットフリックスに加入できるくらいの「一角の人物」になるまで、我慢します。