今日からお休み。
ただ昨日の夜、父の二番目の妹にあたる叔母が亡くなったと母から電話があった。
数年前から入退院を繰り返していたものの、ここ最近は回復したという話を聞いていたので、その急逝にかなりショックではあるんだけど、私のいとこにあたる叔母の子供の娘二人はある程度覚悟していた様子だったということで、淡々と葬儀の手配やら何やら進めているそうだ。
そもそも今年こそは帰省しようとしていたのも束の間、広島ではインフルやらコロナやら少し流行の兆しがあるらしく、うちの両親から帰って来るなと釘を刺されていたんだけど、叔母の急逝を受けて帰る気満々、と思いきやこれも「家族葬」だから帰って来るなと再度釘を刺されたのでそれに従い弔電を送るのみにした。
しばらく会ってなかった叔母だけど、父の多くの兄弟の中でもどこか面白キャラというか、親しみのある叔母だったのでショックなんだけどね、今の諸々のご時世も鑑みて、直接お別れができないのはやはり残念だ。
という訳で、その叔母の死を受けているにもかかわらず不謹慎極まりないんだけど、今日は映画を観に行った。
言い訳をしておくとネットでチケットをゲットした後で訃報を聞いたというのもあるし、帰って来るなと釘を刺されたこともあるしね、叔母ちゃん、許してね...ということでユナイテッドシネマとしまえんに。
11月に公開され、それなりに話題になり、かなりヒットしている日本映画...それがいまだに劇場にかかっていて、しかもとしまえんではまだIMAXでかかっている...年末だしね、そんなにヒットしてるのならやはり観ておこうということで...山崎貴監督の話題作「ゴジラ-1.0」を観てきた。
「ゴジラマイナスワン」と読むらしいんだけどね、何で1ではなく1.0なんだろうね...ま、そのあたりは後程調べて観ることにして、とりあえず今年最大の話題作「ゴジラ-1.0」。
ぶっちゃけ山崎貴という監督には全然思い入れも何もなくて、というよりこれまであまり多くは観ていないんだけど、いくつかその監督作を観た限りではどこか「珍作」が多い人というのがこれまでの私のイメージ。
しかも一番引っかかっているのが、あのネトウヨの権化、名前を出すのも忌まわしいあの百田某原作の作品を撮ってるということがどうしても受け入れられなくて、無知なのかイデオロギーに興味がないのかは分からないけどあいつの原作で映画を撮っている、もうそれだけで印象が悪くてね、当然その該当作も観てないので、いくら話題の「ゴジラ」シリーズ7年ぶりの新作であろうともどうしてもどこか拒絶反応があって、公開当初は全く観に行く気はなかったんだけど、ジワジワと巷でも評判になり、しかもそれなりにロングランしてて、しかも来年はモノクロバージョンまで公開されるというじゃないか...うーん、これは観ておいた方がいいのかなと。
しかもこの年末年始は内外問わず特別な話題作もなくて、観たい作品も特にないのでね、せっかくのお休みなのに劇場で映画を観ないのはもったいないという気持ちもどこかにあって、それならもう思い切って「ゴジラ-1.0」、観ておくかというね。
...スイマセン、また前置きが長いですね。
という訳でIMAXの大画面、大音響で観てきました。
なるほど、なかなかの力作。
ゴジラのまさに怪獣としての得体の知れなさ、問答無用に人間を蹂躙する圧倒的な破壊力、無感情に襲ってくる徹底的な極悪非道っぷり...よく言えば「ゴジラ」のひとつの到達点とでも言えるような振り切りっぷり、その潔さに感心した。
時代設定を太平洋戦争終結直前から戦後数年に据えたこともひとつのアイデアとしては秀逸だったし、その日本が戦争直後をどう総括しようとしているのか、その模索している最中にゴジラをぶち込むという、その徹底的な絶望感の創出は巧かったと思う。
ただ序盤に繰り広げられる人間ドラマパートがいささか薄っぺらいというか、キャラの作り方、そのアンサンブルの方法もどこかステレオタイプで、そのあたりは少し戸惑ったが、それもまあゴジラの極悪非道っぷりとのコントラストだと捉えれば許容範囲だったようにも思う。
あとはひねりがなさ過ぎるというか、展開がある程度読めてしまうというか、意外性の乏しい「意外性」の連続であったことも少し消化不良に感じてしまった。
あの伝説の戦闘機が出たところではテンション上がったけどね、全体的にはよくも悪くもオーソドックスな展開、スピード感、卒のないハッピーエンド...ま、細かいツッコミは野暮かもしれないけどね。
それでもやはりゴジラの造形の素晴らしさと、その圧倒的なヴィランっぷり、その恐怖感の演出も含めて、キャラクターとしての存在感は圧倒的だった。
第1作へのリスペクトも卒なく織り込まれていたし、それこそ「ジョーズ」へのオマージュなんかもあったりして、連綿と積み重ねられてきた映画という芸術媒体の中にあって、まさに現代の映画という意味でもレベルもそれなりに高かったように思う。
ただやはり返す返すも残念なのは人間ドラマのありきたり感、薄っぺらい印象はどうしても拭えない。
役者さんそれぞれはみんな熱演だったんだけどね、熱演だった分、そのそれぞれのステレオタイプのありきたりなアンサンブルで終わってしまったことがもったいない。
あとはやはり改めて思ったのは伊福部昭のあの旋律の偉大さで、今回もまさに効果的にあのおどろおどろしいスコアがこの作品を見事に盛り上げていた。
つい色々と腐してしまったけど山崎貴という監督は「ゴジラ」に対してちゃんと尊敬を示し、大事に扱い、しかもオリジナリティを盛り込んで頑張って撮ったんだなと。
偉そうなことを言うと、山崎貴、少し見直したぞと。
それでももうひとつだけ注文を付けると、日本人の内面的な戦後処理をゴジラの襲来とその殲滅に収斂するのはいささか乱暴だと思わなくもない。
いわゆる「特攻」の扱いもどこか軽いし、戦争を始めた「政府」に対するスタンスも全てを「民間」で処理しようとする描写のみで済ませてしまうところも、何となく隔靴掻痒感があったりして。
まあこの辺りは山崎さんが「シン・ゴジラ」でやったことはやらない的な発言をしているようで、あの「政治家・官僚ファンタジー」とは一線を画するまさに対極の民間人のドラマにしたのはそれはそれで拘りだったんだろうね。
それも含めてまああれこれツッコミを入れればキリがないんだけど、全体的には思ったよりもよくできていたように思う。
あとキャラクターそのものはステレオタイプどころか一貫性がなかったヒロインを演じていた浜辺美波がよくてね、最近よく見るけど、この作品でもそのキャラ設定の貧相さを抜きにしてなかなか魅力的だった。
ま、観る前にかなり斜に構えていたことを差し引いても、想像以上にいい作品だった...かな?
今年はこの「ゴジラ-1.0」をもって劇場での映画鑑賞は終わり...多分。
あとは叔母さんの訃報を今一度ちゃんと受け止め、残りの休暇も私なりに有意義に過ごそうと思う。