日曜日に映画を観なかった。

 

仕事でへとへとだったからだ。

 

今もへとへと...でももうね、ほんの小さな間隙を縫って、思い切って劇場へ。

 

 

はやぶさ2がりゅうぐうに着地したという何ともタイムリーなニュース(?)を見届けて、若き天才、デイミアン・チャゼル監督最新作「ファースト・マン」をとしまえんのIMAXで。

 

アメリカ本国では5千万ドルにも届かない、いわゆる「大コケ」となってしまった作品だけど、それでも宇宙開発モノは外せないでしょう、しかもあの「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼルだぞ、外せないでしょう。

 

ここ10年くらいはすっかり劇場に足を運ぶ機会が減ってしまったんだけどね、IMAXフィルム撮影とか、グリーンバックを使わない「特撮」だとかね、チャゼル監督のそんな諸々のこだわりに注目せずにはいられない。

 

ニール・アームストロング...アポロ11号の月面着陸、その人類第1号、ファースト・マン...その半生をまさにドキュメンタリー・タッチで淡々と描いていくんだけど、もうそのアームストロングの捉えどころのない冷静な、いや冷徹なキャラクターに故意に感情移入させないようにしてたんじゃないかとさえ思えるほど、物語そのものも恐らくほぼ史実に忠実に時系列通りにじっくり、淡々と、劇的な演出を極力排除したような作りで、疲れもあったせいかぶっちゃけ何度も睡魔に襲われた。

 

時折差し挟まれるクレア・フォイという女優さんが演じる妻のジャネットとの独特の距離間のある夫婦関係のその重さや、子供たちとの微妙な関係性などを含めて、物語全体はことごとく起伏の少ない、ドラマ性を排除したかのような、ホント、淡々とした語り口にはやや戸惑った。

 

 

それでもジェミニ計画、アポロ計画などという私の大好物...その精密な作りのガジェットやアナログに徹した画作りに魅せられたのも事実。

 

その画作りの最大の功績はクリストファー・ノーラン監督作の多くでプロダクション・デザインを担当しているネイサン・クロウリーを招聘したことだろう。

 

ノーランのあのアナログ推しにチャゼル監督も感化されたのか、この人選は大正解だったようだ。

 

フィルム撮影、それもIMAXフィルム撮影を含んでて、しかもCGを極力排除した徹底的なアナログ撮影のその本物感...

 

しかもその特撮シーンを16㎜、人間ドラマ部分を35㎜フィルムで撮影していたらしく、その荒々しい画作りは当時の時代の雰囲気をうまく醸し出すことにも一躍買ったのかなと、素人目にも思えた。

 

あとはアームストロング目線の画面が多用されていて、キャラクター描写の冷徹さとは対照的に手振れ画面が頻繁に出てくることも含めて、その臨場感だとか緊張感を意識的に醸し出そうとしていたことが特徴的だった。

 

 

それはデジタルIMAX劇場の大画面でもうまい具合に出ていて、まさに追体験する映画としても没入感は半端ない。

 

 

 

極めつけはやはり「ルナ・シークエンス」で満を持して登場したIMAXフィルム撮影によるその臨場感。

 

本来ならIMAXフィルム上映館か、IMAXレーザーで観るのが本筋なんだろうけど、としまえんのなんちゃってIMAXでも月面のシーンはその音の巧みな使い方、いや使わないことかな、臨場感はホント、ハンパない。

 

それは2Kの荒い画面でもその月面のきめ細やかな感じは素晴らしかった。

 

返す返すも本物、つまりは1.43:1という画角が奢られたIMAXフィルム上映で観られてればなと思うけど、それでも少しは上下に広がって画面は大きくなるからね...まあでも1.90:1の憂鬱...しゃあないか。

 

そんな感情移入しにくい物語の中で淡々とミッションを追行していくアームストロングを演じたライアン・ゴズリング。

 

 

「ラ・ラ・ランド」もだけど最近では「ブレードランナー2049」にも出ていた...ここ最近私がなぜが劇場でよく会う役者さん。

 

 

今回のニール・アームストロングはその寡黙で冷徹なキャラクターを淡々と、なおかつ静かなその内面をとても丁寧に演じていて、今回もいい仕事してたなあという印象。

 

 

もうとにかく淡々としててね、とにかく感情移入を許さないというか、つかみどころのない、それでいて自分の「仕事」に対する執着というか執念はどことなくあふれ出ていて、クライマックスまでは常に微妙な距離感を感じさせてた。

 

そのクライマックス...それまでの淡々とした物語にたった、たったひとつだけ伏線を回収するんだけど、そこで私の涙腺は崩壊しました。

 

もうね、ずるいよ、ゴズリング。

 

このワンシーンのための「淡々」だったのか、やるな、チャゼル、というね。

 

 

全体的には起伏のないお話だったけど、そのクライマックスからラストに至るまでの「激変」に私の魂はすっかり持っていかれてしまいました。

 

 

本来ならもう少しいい体調で観られれば良かったなという後悔は少なからずあるけれど、うーんまたいい映画に出会えた幸せに私は今、包まれている。

 

 

ただね、ひとつだけ、音楽が...テルミンを活用した独特のあのスコアが良くも悪くも耳から離れない!

 

これもチャゼル監督のものすごいこだわりから導きだされたチョイスだったようで、そのあたりはTBSラジオの「たまむすび」で町山智弘さんが解説してたのを聴いてたので、それはそれでとても興味深かった。

 

 

ていうかさ、今思い出したんだけど同じTBSラジオの「アフター6ジャンクション」の宇多丸さんの「ムービーウォッチメン」って今日、まさに「ファースト・マン」じゃなかったっけ?

 

あとでラジオクラウドでチェックしなければ!

 

でもホント、いやあ映画って劇場で観るとやっぱりいいね。

 

チャゼルくん、ありがとう。