昨年あたりから日本でもTV放送でOPSを採り上げるようになった。これは当然の如く大谷翔平の活躍によるものだ。On-base percentage Plus Slugging percentage の略で出塁率と長打率を単純に足した数字で数学的には意味がないが、打撃能力の指標としては最高のもの、とは以前にも書いた。昨年大谷は日本人初のホームラン王を獲得し、それは無論素晴らしい!ことだが、OPS 1.066とナンバー1を記録したことが、打者としての観点からは、ドジャースの1000億円超えの評価を獲得したと言える。何となればドジャースの所属するナショナル・リーグでは大谷(1カ月ケガで欠場とはいえ)のホームラン数を超える打者が複数いたからだ。この数字どれほど凄いものか、以下を見ていただこう。

ランク        OPS                     評価

A.      0.9以上         excellent

B.       0.8334~0.8999   very good

C       0.7667~0.8333       good

D.       0.7000~0.7666       average

E.       0.6334~0.6999

F.       0.5667~0.6333        bad

G.       0.5666以下 

 

MLBに所属した日本を代表する打者について見ると

イチロー  0.757

松井秀喜  0.822

であり、長打力の無いイチローがDランク(並)で、松井秀喜がCランク(良)に対し、大谷は、同じくMLB所属全期間で0.922であり、Aランク(excellent)なのだ。では、去年と今年(まだ始まったばかりですが)1.0を超えるのはどうかと言うと、リーグで1~2人しかいない、まさにMVPクラスということになる。

投手と異なり、日本人野手でMLBで長期間活躍した者は上記3選手に留まるのがよくわかる。またイチローは日本で騒がれたほどにはアメリカで評価されなかったことも理解できる。打者としての評価はC(並)だったのだから。ただ、イチローの場合、傑出した守備、走塁能力があった。他の日本人野手はほとんどイチロー(並)以下なのだ。当初は、これがわかっていなかったから、打率が高いのになぜ日本人を使わないのかと、不信感すら覚えた。打率が1分や2分高くともOPSで負けていたのだ。数年前までTV中継のアナウンサーや解説者すら理解していなかった。それでもWBCで日本が最多優勝を誇るのは、傑出した投手力(ことに制球力)とオールジャパンで1チームを編成するくらいなら十分打力でも対抗できるのと、MLBはさほどWBCに力を入れていないからだとは以前にも書いた。

打撃3冠とは打率(首位打者)、ホームラン数(ホームラン王)、打点(打点王)を指す。結果の評価としては無論意味がある。しかし、それぞれ単独では、点取りゲームである野球の打者評価の指標とはなりえない。ことに打点は、前を打つ打者の出塁率との兼ね合いの要素が大きい。しかし、OPSはこれ1つで打者の結果評価の最高の指標であると同時に能力評価も可能である。よって最も重要な指標として、野手のスカウティングに使っている(MLBに遅れて日本球団も近年重要視し出した)。

 

最近、筒香が日本球界に復帰して大活躍しているニュースを悲しい想いで見た。投手の黒田博樹がMLBでもまだ十分働けたのを、恩返しの想いで日本球界に復帰したのとは全然違う。黒田の場合、まだまだMLBで高額年俸のオファーがあったのに男気で広島カープに復帰したのだ。日本のホームラン王もMLBではホームランどころかヒットすら全く打てず、ほとんどが2軍(3A)暮らしだった。それくらい打者の彼我のレベル差は大きい。上記3人はほとんど例外的存在なのだ。これが悲しい。