洋の東西を問わずシンガーソングライターが一般的になって、親しみやすい歌詞が生まれたのも事実だが、プロの作詞家らしい(格調高い)歌詞が減ったのも事実だ。同様、自分の曲を歌う分には問題ない、あるいはふさわしいが、とてもプロの歌手とは言えない場合も少なくない。

個人的には、加山雄三、松任谷由実がその代表と思っている。無論、最終的には声(唱法を含む)に対する好みの問題に帰するのだろうが。加山雄三が「君といつまでも」をはじめ爆発的にヒット作を連発した年でもレコード大賞は獲れず、「特別賞」(でお茶を濁された)となったのは、私の様に「歌(唱法)が素人くさい」と感じた審査員が多かったのではないか。レコード大賞などその選考がいかがわしい、最たるものと言われれば、その通りではあるが。

フランク・シナトラ、エルビス・プレスリー、アンディ・ウィリアムズ(人畜無害と言った唱法ではある)、ハリー・ベラフォンテといったところがすぐに「プロの歌手」としてあがるが、全て故人だ。

 

今、聴きたいと思うのはスティングだ。スティングStingとは無論本名ではない。「蜂の一刺し」という意味(だから、どうでもいいことながら、ロッキード事件の榎本美恵子証人を思い出してしまう)。私がFM放送で英米の曲を聴いていたのは独身時代つまり1980年頃まで。だから、彼の属していた「ポリス」は記憶にはあるが、その時に熱中したわけではない。ソロとなったスティングをたまたまTVで見てその声に魅了されたのだ。少しハスキーで、憂いを帯びた声でしっとりと詞を歌いあげる、その声にだ。〔私の中では、玉置浩二―日本で最もセクシーな声(唱法)と評価するーに似ている。〕Fields of Gold;Shape of My Heart ;Englishman in NewYork;Fragileが代表曲と言えるだろう。シンガーソングライターではあるが、Fragileなどはスタンダード曲なので堂々たるプロ、プロ中のプロの歌手と思う。

 

最近You TubeをパソコンでなくTVの大画面で見ている。やはりパソコン内蔵スピーカーのチープな音より遥かにいい。昔パシー・スレッジで大ヒットした「男が女を愛する時」を見ていたらマイケル・ボルトンのものも出て来た。これが凄い。男性的な声だ。You Raise Me Up(トリノ五輪で荒川静香がエキシビションで使ったと記憶する)を検索したらVanny Vabiolaなるヒジャブで顔を覆った東洋系と思しき女性歌手が出て来た。聞いたことも無いし、正直、魅了される容姿でも無かったので、飛ばそうと考えたが、せっかくだからと聴いてみたらこれがいい。The Power of Love;My Way;Unchained Melodyとスタンダード曲を次々と聴いてしまった。(気になって調べてみたら予想通りイスラム教国インドネシアの歌手。)声(唱法を含む)が好きだと次々と聴いてみたくなるものだ。私がビートルズに熱中したことがないのは、ジョン・レノンやポール・マッカートニーの声が好きでなかったことが原因だろう。結果的にはビートルズの曲で好きなものは極めて多いのだが。