愛子さま無事誕生を告げると、「一刻も早く雅子さま愛子さまのもとにかけつけたいはずの陛下が、私をいたわるようにお優しいお顔、お優しい声で『先生の教えてくれた通り物事が進み、安心して誕生を迎えることができました』と姿勢を正しておっしゃってくださり…涙をこらえられなくなりました」とは、主治医を務めた堤治医師の言葉(「愛子さまご誕生の瞬間」)である。主治医ならずとも、こんな皇室を戴く日本国民の幸せを思う。
「文藝春秋」1月号の「緊急特集」は「天皇と日本人」である。「このままでは皇統が絶えてしまう!」という危機感が「緊急」特集としたのだろう。現行法制では次世代は悠仁さまただ1人しかいないのだし、「愛子天皇」を実現させるにしてもこの度成人となられたのだから。この特集のトップは本郷恵子東大史料編纂所教授、野田佳彦元総理、古川貞二郎元官房副長官の鼎談「愛子天皇は実現するか」である。3人に共通するのは「天皇皇后両陛下は国民の心の拠り所」ということだ。その尊敬を集める生き方や凄みは「やはり世襲にある」と本郷は喝破する。そして、「最も大事なことは、皇位の安定を図り、今の天皇制を将来、幾代にもわたって継承していくこと」(古川)、全く異論はない。ただし、私が3人と異なるのは、「愛子天皇」ではなく、以前から書いている通り、男系男子で行けるところまでは行く、それが不可能となった時は女系天皇も認める、というものだ。
「行けるところまで」のために、旧宮家の子孫(男)を幼児の頃から皇室の養子として育てる。右派論壇人と私が異なるのは、それでも継承者減の壁に突き当たる、綱渡りは変わらず、その時の対応を今直ちに決めておくことが必須ということだ。現状既に皇統の危機であり、どう展開するにせよ、天皇には天皇としての心構えが不可欠だからだ。高市早苗(この特集の1つ「女性天皇には反対しない」、このタイトル、誤解を招きやすい。女系天皇は反対であり、そちらの方が高市の言いたいことだから)が言う通り、「側室制度の復活などは考えたこともない」のが当然(そんなことは、現代では、天皇制で最も重要な尊敬を集めることができなくなる)だからだ。江戸時代以降400年、19方の天皇の内、嫡出子は4方のみという現実を考慮するのは当然のことだろう。旧宮家からの復帰にしてもいったいどれくらいの該当者がいてそのうち何人が応じてくれるかわからない。
そして佐伯啓思「『民意』亡国論」、これは「緊急特集」には入っていないが、彼はこう結んでいる。
「主権者」を抑制するものがなくなったとき、「主権者」の暴走、つ
まり「民意」の暴走が始まる。それは、デモクラシーの政治のみな
らず、皇室にも襲い掛かる。主権者であるわれわれが、今日、デ
モクラシーも皇室制度をも破棄しつつあるという危惧は、決して杞
憂というわけではない。「主権」とは、ただ至高の権力を行使する
権利ではなく、国や国民に対する大きな義務をも含んでいる。主
権者は国益と同時に、歴史や文化の付託を受けた者でもあって、
「民意」が意味を持つのは、このような条件のもとでのみなのであ
る。
全面的に同意する。佐伯の念頭にあったのは、眞子さまと小室氏の結婚騒動かもしれないが、私はこの皇統の危機における「民意」にも心すべきだと考えている。「女性天皇」と「女系天皇」の相違の正確な理解もなく、「愛子天皇」支持が「民意」の8割という世論(佐伯は、理性的で熟考された意見の集合である輿論ーパブリック・オピニオンーと峻別している)に、私は疑問を呈する。
そんな中で「文藝春秋」が、タイトル一つとっても「愛子天皇」よりと見えるのが気がかりだ。総合雑誌で圧倒的な部数を誇り、さらにそれ以上の影響力があるからだ。「諸君!」があった時代とは明らかに変わっている。問題は、「愛子天皇」実現ではなく、「悠仁天皇」後を今早急に決めておく要があるということだ。
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