『響け!ユーフォニアム3』第四回「きみとのエチュード」について、改めて。
今回は求の物語〜これまで明白でなかった彼の人生の背景が描かれた。
苗字で呼ばれるのを極端に嫌うなど周りとの協調を避けるような言動や気にかけてくれる友人・樋口への拒絶的態度のワケは全て、亡き姉の件が発端になっていたことが明らかに。
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→ 祖父・月永源一郎と仲のいい、心から音楽を愛する姉は、彼が指導する高校へ入学し吹奏楽部に所属する。
→ しかし、指導者の孫ということで他の部員から妬まれ、演奏とは関係ないところで苦悩することに。
→ 源一郎はそんな空気を気にせず実力本位でコンクールメンバーに選ぼうとするが、それが更に状況を悪化させる。
→ 心労が重なり吹奏楽が好きな気持ちを次第に失っていった姉はやがて病気に罹り、失意のまま亡くなる。
→ 落ち込む求を心配する源一郎は、進学のタイミングに合わせ彼が通う学校への移籍を決めるが、それを知った求は祖父のもとでは音楽をやりたくないと反発、中高一貫の龍聖学園を離れ北宇治高校に入学。
→ そこで緑に出会い、純粋に音楽・吹奏楽が好きだった姉の面影を彼女に垣間見、姉が夢見ていたことを体現しているかのような緑にはそのままでいて欲しいからこそ、事の真相を語ろうとはしなかった・・・
以上の経緯を求は、部長である久美子には打ち明ける。
全部受け止めた上で、祖父や樋口にはきちんと事情を話すよう久美子は説得する。
「気持ちは演奏に出るよ」と。
過去、様々な人間関係を見てきた久美子だからこそ、また自分自身を振り返っても当て嵌まるからこそ言えるこの言葉。
それを素直に受け入れ実行した求は、以後確実に変わっていくだろう。
「僕は北宇治の人間です」と断言したのだから。
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この第四回は、幾分アニメオリジナルのエピソードを採り入れている。
というのも(これはネタバレではないので書いても構わないと思うが)求のストーリーは原作最終楽章では前編にとどまらず後編にかけても綴られており、この1話で完結させるとなると時制や事実関係の辻褄合わせが必要となり、オリジナル要素を付け加えない訳にはいかないのだ。
それでも原作の本質を決して曲げず、穢さないかたちで上手く組み立てられていたので全然違和感は無く、寧ろより感動的な仕上がりになっていた印象すら受ける。
それを象徴するのがラスト、緑と求によるエドワード・エルガー作『愛の挨拶』コントラバス二重奏。
恒例のサンフェスでのパレード映像を見送ってまで採用されたこの演奏場面、制作者の拘りが窺える。
エルガーは『威風堂々』ぐらいしか知らなかったが、この楽曲も美しい旋律が魅力的(今エピソードとの相乗効果もあるだろうが)。
ちなみに原作では入部直後「コントラバスなんて誰が弾いても同じ」とのたまう求に、その圧倒的な実演で緑が打ちのめしてみせた時に弾いた曲で、これをきっかけに求は緑に弟子入り志願したと描かれている。
その曲をここで採用するとは、京アニさん、なかなかやるな。
恐らく亡き姉が好きだった曲であろう、一緒に何か弾きませんかと緑に聞かれ、求はこの曲をお願いするという風にアニメでは改変。
演奏の途中、求の家の窓から木の葉(緑)が入り込むシーンの差し込みはお見事。
長らく閉ざされていた彼の心の窓が開け放たれた瞬間であった。
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とはいえ、サンフェスでの北宇治のマーチング映像が無いことに不満をおぼえる向きもあるとは思う。
遠目に『三百六十五歩のマーチ』が聴こえていたけど、あれって北宇治かな?
なんか違うような気もするけど(フラッグのデザインも違うし)。
一期や『誓いのフィナーレ』では長めに描かれていたマーチングが今回だけカットされた、いや、そもそも三期では演奏シーン自体が少ない、と批判する人もいるかもしれない。
しかし、それはこのユーフォ三期がどこに力点を置いているかを考えると納得せざるを得ない筈だ。
一期・二期初頭までは下手で不熱心な部員が練習に励むようになり徐々に上手くなっていく様子を解りやすく示す為に、練習場面も含め演奏シーンが多くなるのは必然だった(具体的に描かないとストーリー展開が説得力を持たないから)。
が、それ以降、劇場版も含め、部内及び家庭の人間関係がクローズアップされる話が主流になるにつれ演奏の上達より人と人との会話、或いは心模様を描くことに重点が置かれるようになる。
そして三期は主人公・久美子が部長を務める以上、今までより学年を問わず部員との接点がより濃密になるので人間関係メインの展開にならざるを得ず、演奏シーンが減少するのは自然の成り行きといえよう。
その分、いざ演奏となると今回のように非常に意味があり重みのあるシーンに変貌を遂げる可能性がある訳で、個人的には肯定的に捉えている。
それに(ネタバレにならないよう慎重に書くが)この先次第に実演を混じえないと描ききれない話が出てくるので、不満のある方も今は我慢といったところか。
代わりに、この第四回では想像していた以上に立華高校を取り上げてくれたことに感謝。
梓だけではない、そっくりなあの2人は西条花音&美音でしょ!
スピンオフの立華高校編のアニメ化を望む声は根強いものの、演奏はマーチング主体の動画となる為、不可能ではないが色々難しいと制作者が明言されているので期待薄なだけに、今回の細かい描写は嬉しかった。
あの円陣といい掛け声といい、完全に橘スタイル。
京都橘吹部をきっかけにユーフォ好きになった自分にとってはこれ以上ない贈り物だ。
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サンフェスが終了したことでコンクールに向けての練習が一段と熱を帯び、そしてオーディションも実施されることになる。
第2弾PVで既に明らかなように、昨年までと違い今年は大会毎にオーディションを行なうことが部長から告げられ、部員達の間に例年以上の不安と緊張が広がる。
そこに黒江真由の存在がある種の火種となって・・・いや、ここから先は自重するとして、これまで久美子は他人の悩みを解決することに奮闘してきたが、遂に自らが自らのことに関して最大の心労を味わうとだけ言っておこう。
あがた祭りのポスターが最後に映っていたが、どうだろう、過去のシリーズでは結構印象に残るシーンが多かったが、今回は如何に?