病院に行ったときのこと。
今の日本の世相を表すような光景を目の当たりにしました。

寒い日で外来で診察を待つ間、午前中でも救急車が5台来て病院も慌ただしい雰囲気でした。

受付にひとりのお爺さんがいました。
救急で搬送され、治療が終わり会計をしているようでした。
受付の女性がキツい口調で話していたので自然と会話が耳に入ってきたのですが、どうやら保険証がないという話でした。そのうち、事務の男性に対応が変わりましたが話が進まず、また別の方がいらして身辺の聞き取りのような話をしていました。

ご家族の有無や住所など聞いていましたが、家族はおらず埼京線で新宿に出て、そこから横浜に向かう途中で体調を崩したらしく救急搬送となったようです。
住所はどこ?という質問になるとどうやら埼玉県らしいのですが、地名が二転三転したりなどハッキリせず、どうやら認知症のようでした。

私は診察が終わり会計をと思いながら待合ロビーを見ると、そのお爺さんがポツンと下を向き肩を落として一人座っていました。
身元が分からない認知症の可能性がありそうとという感じで、病院は恐らくは警察を呼ばれたのでしょう。「そこを動かないで!」とかなり強い口調でお爺さんに言っていました。


認知症にも色々ありますが、本人は決して好きで認知症になるのではありません。
みんないずれ年齢を取り老人になります。
誰も認知症にならないという保証はありません。

確かに認知症の方に対応するのは物凄く根気がいります。家族となればそれはある意味、毎日が戦いです。
怒りの強い認知症タイプは別ですが、自分でも何で分からなくなってしまったんだろう…と落ち込むタイプの認知症の方に怒鳴ると、より本人を追い込み落ち込ませてしまいます。

家族は感情的になりついキツいことを言ってしまい、患者本人は落ち込み、それを見た家族も何てことを言ってしまったんだ…と落ち込みます。

私も経験したことですが、このお爺さんの肩を落として俯いて座っている姿を見て、かつて亡き父が同じように肩を落とし俯いている姿を思い出しダブって見えて、とても切なく悲しくやりきれない気持ちになりました。


病院にはこうしたご高齢者がたくさんいらっしゃるでしょうし、日常茶飯事なのかもしれません。病院も経営ですからその対応も理解できます。
かたや診療科の窓口で「今日は検査の後に診察があるはずなんだけど」と延々と話し続けるご老人もいたり(「今日は検査のみですよ」と窓口の方は繰り返し話していました)、勝手に診察室に入って行くご老人もいたり(看護師さんが「呼ばれていないのに入ってはダメでしょ」と話していました)、あちらこちらで病院スタッフが根気強く対応していました。


忙しい中でくどくど話をされればイライラもするでしょう。しかし年齢とともに、空気を読むとか察知するができなくなってしまうのは仕方のないことでもあります。

ただ、決して他人事ではなく、いずれ我が身も高齢者になる日を考えれば、慈悲の心を忘れてはならないなと改めて感じた出来事でした。