一英語教師の読書ノート -17ページ目
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Teaching Literature Overseas

Teaching Literature Overseas: Language-based Approaches. 1983. ELT Documents: 115.


 文学作品を英語力養成のために使用することの利点の説明を求めて読んだが、"Language-based approaches"とうたっているわりに、従来の教授法に近いように思う。また、教材がシェイクスピア、コールリッジ、ワーズワース、ウォーなどで、対象としている学生のレベルが高く、あまり自分の授業・研究の参考にならなかった。本が古いせいもあるだろう。

齋藤孝+斎藤兆史 『日本語力と英語力』

 近年のコミュニケーション志向の英語教育に警鐘を鳴らし、名文(アガサ・クリスティ作品など)の素読により文法の型を身につける授業を勧めている。

 著者(斎藤兆史氏)の勤務校の東大の学生のような、高い英語力と学習意欲のある学生には有効な教授法かもしれない。しかし、英語力、学習意欲ともにあまり高いとは言えないことが多い大多数の学生に、この教授法は効果的ではないだろう。第一に、大半の学生はアガサ・クリスティ作品の素読ができる英語力を持たない。子供向けの易しい作品として『ピーター・ラビット』や『マザー・グース』なども挙げられているが、優れた作品であっても児童文学を愛好する少数の学生を除きあまり学生の興味をひくとは思えないため、これらも教材として適切でないだろう。第二に、素読と文法中心で90分の授業をもたせるのは、よほど学生の側に意欲がない限り難しいのではないだろうか。教員の力の差と言われればそれまでだが、少なくとも私にはできるとは思えない。

 素読により確かな文法を習得し英語力を高めるという英語教授法が効果的なのは、学習者の英語力が予め高い場合に限定されるように思う。そうでない学習者を教える時は、他のやり方を考えるべきだろう。

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