なぜ 彼じゃないのだろうと思った。
思ったら涙が出てきた、止まらなかった。
よりによって何で こんな状況で。
わたしは今 彼がどんな顔をして どんな声をあげて笑うのかを知らない。
もう ずいぶんと長い間知らないのだ。
現代の情報システムは進歩しているから どこかで彼の写真や文章を見かけることはあるけど それだけだ。
画面の中で 彼はピクリとも動かない。
隣を歩いていたこともあったのに。
わたしに会いに来てくれたこともあるのに。
一緒に夕陽を見たこともあるのに。
やっぱりどうして 彼じゃないんだろう。
いつも いつも。


