〝複雑な完成形からグレードを下げる〟
という従来有りがちな発想を捨て、
〝簡素な基本形からグレードを上げ、
新たなものを創造する〟
言うは易し行うは難し、である。
〝7回は“No”(「要らん」)
5回は“Yes”(「頼む」)〟
ドルフィン🐬がそう囁く機構。
❓
パテックの年次カレンダーのことだ。
大・小の月を区別して、月末に
日送り調整をする要(かなめ)となる
ドルフィンレバーとカム
のやり取りを、喩えて言ったもの。
(パテックフィリップマガザン Spring 2016, Vol.4 No.1 英語版による)
驚くべきは、開発に当たって
(既に四半世紀以上前のことになるが)
永久カレンダー機構のグレードを下げる
(同マガザンでは 「簡素化する」simplifyとしている)
のではなく、
単純カレンダー機構をアップグレードした。
(同マガザンの表現は、新機構への出発点とするとし、カムやレバーではなく歯車による機構への拘りを謳っている)
年次カレンダーというと、私など
どうしても永久カレンダーより下にみて
価格も含めて過小評価しがちだった。
しかし、違うね。見かけや扱い上は
2月だけ手動で切り替え。この点では
永久カレンダーの持つロマンには
及ばない。が、内部の機構に注がれた
叡智と労力は、240Q開発に
引けを取らぬものだったことだろう。
〝イルカの囁き〟は聞こえぬが、
その結果がダイアル上に表出した様は
見てみたいものだ‥‥とは思うものの、
96年当時の5035の定価からすると
(YG:285 〜 WG:293諭吉)
年次カレンダーも倍以上に高騰して、
(WG&RG:865諭吉)
その真価を理解し始めた頃には
手が出ないのが現状、皮肉だな。