何気ない誘い | 秋色コスモの 機械式時計と趣味のブログ

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以前も一度取り上げたことのある

WATCHBEAT Vol.5(2009年9月)p.289

程よく“枯れた”
ヴィンテージ
ブラウンの魅力

この記事が頭の片隅に何となくあった。



そして、それ以前の2012年、

まだ16520初期個体を探していた頃、

何気に店頭で見せられた1665赤シード2型。

ブラウン化個体を初めて目の当たりにした

瞬間だった。ベゼルまで計算したかの如く

バランスよく統一感のあるブラウンに

変色していた。半ば作り物のように感じた。

「意図的にやらんとこうはならんだろ?」

状態だが、そんな事は無縁のお墨付き個体。

ケースコンディションもよく、

興味はなくとも綺麗だと思った。

当時で400諭吉強。

こんなのをそんな大枚叩いて買う人が
世の中にはいるんだ‥‥ハハハ

と漠然と思った記憶がある。



思えばこれが頭の何処かにずっとフックされ

4桁サブやシードを見かけるにつけ、

無意識の内にイメージを重ねていた。

ほとんどサブリミナル効果だ。

コンマ数秒の瞬間的に挟み込まれ、

植え付けられた情報ではない。が、

たかだか一度手に取って見た時間は、

以来今に至るまでの時間を分母とすれば

瞬く間に過ぎない。そう考えると、

勝手にこれも一種サブリミナルかと‥‥。



その表現の是非はともかくとして、

このイメージに加え、先の雑誌の記事と写真。
ダブルで私のVRオタ化したアタマを

マニピュレートしていたわけだ。



一度手に取って目にする経験が

こんな風に作用することがままある。

ショップの優秀なスタッフさんは、

コミュニケーションの端にさりげなく

「ちょっと珍しいのが入ってマスが見ます?」

なんて誘う。何気に見せてもらうと、

その場では何てことなくても、何年か後

何かの拍子に突然その個体のイメージが

首をもたげる。かなり増幅された形で。

その頃自分の嗜好も熟成していて

そのレベルに追いついていようものなら、

購買意欲までも増幅されることになる。

このヒト今は買わない、とわかっていて

何気に見せる。触らせる。体感させる。

ここで撒いた種はやがてデカイ収穫となって

帰ってくる。ヴィンテージウォッチの

トップセールススタッフは、このレベルで

先行きを見越してやるのだろうか。

顧客の成長を図りながらじんわり待つ。

いや、そんな意図的で策略的にイヤらしく

やっているのではないだろうけれど。

時計を買うというより、むしろ、いつもの

時計談義程度に寄った際、話題の一端に

何気に出てきて見せてもらった程度。

しかし、そのインパクトは脳の奥深く

刻み込まれているわけだ。

私の場合、思い返してみると

そんなパターンが多いように思う。