6263 礼讃 | 秋色コスモの 機械式時計と趣味のブログ

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  • 6263  手巻きコスモ    
    黒Big DAYTONA

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    この時計に対する雑感。

    今のデイトナにない部分を有している。
    機能性・実用性からすると「???」
    というものもあるが、よくも悪くも、
    この独自のステータスを築き上げている
    6263のエレメントなのだ。


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    オイスターケースなのに手巻き。
    これは当然、防水性を堅持するための
    一手間だ。でも
    手巻きの操作でもう一手間。
    …………いや、
    ホントはこんなふうに思っては
    いけないのだろう。
    6263を持つ人は、
    こういう手間が喜びや快感だと
    受け止められる領域に達した人なのだ。
    例えはやばいが、
    これは一歩間違えると、
    新聞やニュースを賑わす、
    一般には理解しがたい
    フェチ系の犯罪者に似た変態性がある、
    とまで思えてくる。


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    リューズガードがなく、
    リューズとプッシャーがむき出し、
    しかもリューズはトリプルロック機構を
    搭載したとはいえ、
    小ぶりなケースからすると
    どうみてもアンバランスな
    デカ・リューズ。
    さらにリューズに対して、
    上下のプッシャーが非対称に位置する。
    バルジュー72系の
    機械の配置を反映したものだ。
    知らないとビックリする。
    ただ、ビックリするのは初歩の初歩。
    それはとりもなおさず、
    6263を購入するレベルには
    至っていないということ。

    ケースサイズも小ぶりなら、
    ベルトの幅も通常のオイスター
    プロフェッショナルモデルよりも狭い。
    サイドのケースラインは、
    よい意味ではスリム。
    しかし、現代的なトレンドからすると、
    華奢なまでに痩せている。
    五桁あたりのようなマッシブな
    どっかり感*がない。
    *六桁はもはやマッシブなどっかり感とは言えない。余分な贅肉に見えてしまう
    (個人的な印象・意見ですニコニコ


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    分厚いプラスティック風貌に
    これまたプラスティックベゼル。
    6263を6263たらしめているゆえんだ。
    このベゼルは、
    パーツとして換算すると、
    おそらくこれだけで
    70〜80万ぐらいにはなるのではないか。
    こうなると、宝石や貴金属と同等の
    価値があるものとなる。
    それでいて、素材の性質上、
    宝石・貴金属よりもヤワだ。

    何ともいえない存在の軽さ。
    いや、存在感はあるが、物理的に軽い。
    装着した際の負担はない。
    身に着けているのを忘れる重量。
    ただ、メンタル的には
    とてもこんな軽さはない。
    モノが一生モノなら、
    ガチッとどこかにぶつけようものなら
    それこそ後悔も一生モノだ。
    おいそれとそこらへ着けて出ようと
    思えない代物だ。 

    購入には勇気がいる。
    少なくとも、庶民レベルの
    フツーの金銭感覚の持ち主
    (以降「一般庶民」と記す)であれば、
    「清水の舞台から飛び降りる」
    の域を超えている。
    だって、陳家な話だが、
    時計に一般庶民がかける金額は
    給与の1割程度って見ても
    間違いあるまい。
    もちろん、個人差はある。
    あくまでも一般的に見ての話だ。
    600万オーバーの時計だ。
    一般庶民の時計の100倍以上の価格だ。

    車に置き換えよう。
    一般庶民は
    200万~300万の車に乗るとする。
    その100倍って、2~3億だ。
    受注生産のフェラーリやランボルギーニ
    その他の特別にチューンした超、
    超高級&超高性能車のレベルだ。
    新品ならいざ知らず、
    薄汚れた30~40年前の中古時計に
    こういう金額をつぎ込むのは、
    どうみてもクレージーとしか
    言いようがない。

    百歩譲って、その額が用意できても、
    この手巻き時計にその額をつぎ込むのに
    躊躇するに足る理由は事欠かない。
    機能面で、フツーの時計に対する
    付加価値がどれだけあるのか。
    時間と分と秒がわかる
    という機能に加えて、
    ストップウォッチ機能があるだけだ。
    これはオモチャと言うには
    あまりに高い。

    そもそも一般的なクロノグラフを
    買うにしてもそうだが、
    モジュールを重ねたものであれ、
    最初から統合的に組み込んで
    設計したものであれ、
    この機能を日常的に頻繁に使う人は
    まずいない。それこそ、
    「カップラーメンのできる
    時間を計るのに使う」
    程度しかない。

    したがって、
    ガチャガチャいじって、
    この機能が面白いと思うのは
    買ってしばらくの間。
    そのうち、普通の時計の機能に対して、
    これだけ金 を払っただけの
    意味はあったのか?
    と自責の念にかられるのが、
    クロノグラフコレクターの宿命だ。
    リーゾナブルな価格帯の
    機械式クロノグラフであってもそうだ。
    ノーマルのデイトナみたいに、
    持っていること自体に
    威張りのような付加価値を
    求めるならば(それでも高いと思う)
    いざ知らず、
    現行ノーマルデイトナ5本以上が
    買える金額だ。

    おまけに、
    これを日常的にガンガン使う
    という心境には普通ならない時計だ。
    お蔵入りして、
    適度に出して見る、弄る、
    というだけのために、
    この額はなかなか、というかフツーは
    出さないし、出せない。 
    {5C72A30D-D9F4-4FD9-8487-B9F8E18E3767}


    それにしても、
    二昔以上前のレーサーが
    6263を腕にしている姿を
    思い出す。他でもない
    ポールニューマンのことだが、
    ヘルメットはフルフェイスじゃないし、
    マシン(車)も今からすれば、
    電子制御も何もない、
    性能的にははるかに劣ったシロモノ。

    でも、なんかカッチョイイんだ。
    5桁デイトナでもない。
    ましてや、現代のレーサーが
    6桁デイトナはめて
    マシンと写っていたとしても違う。
    この4桁手巻きコスモは、
    小さくて華奢で軽いが、
    一つの完成形であり、
    残念ながら、5桁も6桁も
    技術は最先端でありながら、
    6263の完成形の域までは
    到達していないような
    気がしてならない。