【孫崎享が読む 時代の深層】自民党裏金問題の深層/ガザ情勢の見方 | ☆Dancing the Dream ☆

☆Dancing the Dream ☆

Let us celebrate
The Joy of life ♡
with ☆Michael Jackson☆


孫崎享チャンネル
ガザ情勢、迷走の岸田政権等 2023/12/23(土)

自民党裏金問題
・自民党では安倍派が99名と最も大きい勢力だった。
・森派が55名、麻生派が56名、岸田派47名、二階派が40名、森山派8名。
・パー券裏金問題は、各派共関係しているのに、検察のターゲットはなぜ安倍派と
 二階派に絞られるのか?
・二階派には岸田政権では主要な閣僚はいないので、麻生派、岸田派に比べると
 影響力は比較的少ないはずである。
・検察がなぜ安倍派を狙ったかについて、気位の高い検察の人事に安倍派が介入して
 きたので、検察は安倍派をターゲットにしているという説が流布されているが、
 この説には不可解な点が残る。
・検察人事への介入に関与したのは、安倍政権の安倍と菅であり、安倍派全員が関与
 したわけでもなくメディアで取り沙汰されている政治家が関与したわけではない。
・仮に検察人事介入への報復であれば、安倍は死亡しているので、最もターゲットに
 なるのは菅義偉でなければならない。
・この一連の流れのなかで、菅義偉はむしろ無党派ということから発言力が
 高まっているので、検察の報復説というのは成立しない。
・それでは、なぜ、安倍派と二階派なのか?
・これを行なったのは、「岸田官邸、検察、マスコミ」。
 岸田官邸が安倍派を閣僚から排除した。
 マスコミは、朝日新聞等を中心に「安倍派、安倍派」と書いてきた。
・「岸田官邸、検察、マスコミ」の3者は同じ方向を向いている。
 この3者を同じ方向に向かすことができる勢力とは、何なのか?
・この騒動が起こって何か新しいことが起こったか?
 この騒動の中で、明確に今までと違った方針、大々的な方針とは何か?
・それは武器の輸出。「防衛装備移転三原則」の運用指針改正である。
 これまで日本政府は「武器の完成品の輸出」は禁じていた。
 これは日本の安全政策の一つの柱だったが、国会の議論もなく、
 規制を緩めてパトリオットを輸出する決定がなされた。
・パトリオットは、米国に輸出される。
・米メディアのポリティコ (Politico)が明確に書いた。
 「共和党がウクライナ支援に否定的で予算が通らない」ので、
 米国はパトリオットを含め必要な武器が輸出できない状況にあるので、
 日本が米国に輸出し穴埋めをし、間接的にウクライナに武器を輸出される。
・ウクライナ戦争は、武器の供給が減少しているので、
 南部の戦闘はあきらめて、ロシア国境の頭部に集中せざる得ない状況。
 もはや勝負あった。
・ウクライナ戦争終結は、ロシアの占領地を認める形で、和平となるだろう。
・ほとんどの国々が、ウクライナから手を引こうとしている段階で、
 日本の間接的武器供与が行われようとしている。
・この時、安倍派はどう動くか?
 現在の安倍派の最高権力者は、森元首相である。
 森喜朗は「ロシアが負けることは、まず考えられない」
「プーチン大だけが批判されるのはどういうことか」
 ロシアとの良好な関係を築いてきたのに、
 「ウクライナにばかりに肩入れして良いのか」と言っていた。
・安倍派が安泰であったら、「防衛装備移転三原則」の運用指針改正は
 できなかったのではないかと考えられる。 
・では、二階派はなぜ、ターゲットになったのか?
・二階は、いまの日本で「中国とのパイプが最も強い政治家」である。
・アメリカが「台湾有事」ということで、中国との対決を進めていく上で、
 アメリカにとって二階の存在は必ずしも好ましくない。
・安倍が首相を辞める直前に、CSISが報告書を出している。
 「日本には中国に媚びるグループがいる」
 「ひとりは、安倍官邸の今井尚哉 内閣総理大臣主席補佐官」
 「もうひとりは、二階である」と書いている。
・この論文が出てしばらくして、安倍は首相を辞めた。
 中国問題が安倍氏の退陣と関係していたかもしれない。
・この状況の中で岸田が、最も信頼をおく形で対話しているのが麻生。
 麻生と最近頻繁に会い密談をしており、麻生の発言力が強まっている。
・今、麻生は誰よりも米国寄りの政治家と言われ、微妙な台湾問題について
 「台湾有事は「日本存立危機事態」にあたる可能性がある」などと
 台湾への介入に前のめりな発言をしている。
・「安倍派」「二階派」を外すことは、アメリカの思惑だと考えることは、
 十分可能であろう。
・最近、出てきた話「女性天皇を安倍氏が反対した」というもの。
 安倍の存在のおかげで女性天皇の話が空中分解したが、
 いま再度、この議論が復活している。
・今後、岸田政権はどうなるのか?
 岸田にとって最大の安倍派と組むことは安定政権につながること。
 「安倍派潰し」は、岸田自身の考えではない。
 

ガザ情勢
・ガザは平坦な地形で、大きくない土地。
 イスラエルは「軍事的に完全に制圧できる」と思っている。
・しかし、このガザ侵攻は、イスラエルにとって、
 非常に大きい「安全保障上のマイナス」を作ることになるだろう。
・今、ガザの戦闘員を含めた死者は、3万人〜4万人と言われている。
 爆撃されて殺害された人数としては極めて大きい。
 しかし、ガザにはまだ220万の人口が存在する。
・あまり議論されてこなかったが、ヨルダン川西岸に380万のパレスチナ人が
 存在する。アラファトからアッバスにつづく指導者の「ファタハ」が支配するが、
 西岸にも、「ハマス(イスラム抵抗運動)」がおり、西岸においてハマス支持が
 急激に増えている。西岸の広さは東京23区程度。
・西岸では、イスラエルが武力を用いて入植地を拡大していた。
 無抵抗に陥っていた380万のパレスチナ人がハマスの抵抗運動を支持すれば、
 ガザよりも起伏のある戦闘しにくい土地の西岸は、治りにくくなるだろう。
・ヒズボラが支配しているレバノン。ヒズボラとイスラエルの衝突も起きている。
 スンニ派のヒズボラはイランとの結びつきが強い。
・イエメンのミサイル、無人機によるイスラエルへの抵抗運動も行われている。
 これを米英等10カ国がミサイルで対抗し撃ち落としているが、
 無人機対ミサイルではミサイルのコストが圧倒的に高い。
・イエメンのイスラエル攻撃をしているグループの人気が急速に拡大している。
・パレスチナと同じアラブのエジプト、サウジも、座して見ているはおかしい
 という世論が当然イスラム社会に生まれる。
・米国とイスラエルの安全保障は非常に不安定なものになっていく。
・長期的にはイスラエルの崩壊につながる動きになる可能性もある。

読者からの質問
・公安について。公安は体制を破壊するものを抑える。
 米国ではFBI、英国ではMI5がある。各国その機能を持つ組織がある。
・日本の特捜部について。日本の特捜部の特徴は、米国との関係の深さ。
 特捜部は、戦後の隠匿物資(軍、政府、政治家が隠し持っていた財産)を
 GHQの命令で探し出す役割を負う組織だったので、出発点から米国との
 協力関係にあった。特捜部は田中角栄追い落としに大きな役割を担った。
 他国のように犯罪組織を摘発する部局とは異なり、米国の影響を受ける組織。
・今後、政治家との結びつきで利益を得ていく企業。
 三菱重工のような軍需産業。特定の企業が連携を強めていく。
・辺野古について。デニー知事の不承認は当然のこと。
 米国にとって辺野古の重要性は2000年以降急激に後退した。
 2017年くらいにはすでに中国は1200発のミサイルで在日米軍基地を攻撃できる。
 米軍が高価な兵器を沖縄に置けば置くほど打撃をうける可能性が強い。
 辺野古は軟弱地盤で地下100mの杭打ちが必要だが、できていない。
 米国にとって辺野古は無意味であり、辺野古は土建屋の利権でしかない。
・ガザの地下トンネルを水浸しにする残虐な戦術について。
 実行の2、3週間前に、NYタイムスやワシントンポストに出ていたので、
 イスラエルは米国と密接な協議があったと思われる。
・イスラエルが行っていることは、多くの植民地政策と「逆行」している。
 多くの植民地政策は、支配地域の住民が不満を持たないように、
 生活を向上させる政策を併せて行う。
 イスラエルはそれを全く行わない。意識的にパレスチナ人の生活を悪化させる。
 この政策では、抵抗が確実に増大する。
・ヨーロッパ諸国は100万発の弾丸をウクライナに送る決定をしたが、
 21年末で30万発で7割以上実施されなかった。
 その穴埋めを韓国が行った。
・沖縄辺野古の代執行について。日本の裁判所の問題。
 砂川事件
 米駐留軍が使用する東京都砂川町(立川市)の基地拡張のために測量を強行。
 反対派のデモ隊の一部が米軍基地内に立ち入り刑事特別法2条違反で起訴された。
 この訴訟で安保条約およびそれに基づく米国軍隊の駐留は憲法前文および9条に
 違反すると主張し一大憲法訴訟となった。
 第一審の東京地方裁判所は、安保条約は違憲で、被告人らを無罪とするという
 判決を下した(伊達判決)。 
 この判決に対して検察側は、高等裁判所をとばして異例の跳躍上告を行った。
 最高裁判所は原判決を破棄差戻しする判決を下した。
 このように、最高裁は、安全保障の問題になると、
 政府のために動く法律機関と言って良い。
・特捜部とアメリカとの関係は現在も継続しているのか?
 特捜部、検察の要所に就く者は、米国に留学したり、米国大使館に勤務するなど
 アメリカとのパイプを継続する努力をしている。
・特捜部、検察が権力を持つのは?
 政治家のダーティな部分を握っていることが強い影響力を持つ。
 そこが他の省庁と異なる。
・武器輸出解禁でパトリオットをいくらで売ったのか?
 日本は防衛費を倍増し、日米協力を言い出している。
 「日本はパトリオットを日米協力のために貸している」という設定も可能。
 防衛費増強、武器製造、それがアメリカに使われる、
 という可能性もある時代となった。


 ーーーーーーーーーーーーーー

「防衛装備移転三原則」の運用指針改正 PAC3を米へ輸出も決定
NHK 2023年12月22日 21時15分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231222/k10014297161000.html
政府は、外国企業から技術を導入し国内で製造する「ライセンス生産」の防衛装備品について、ライセンス元の国への輸出を可能とすることなどを盛り込んだ「防衛装備移転三原則」の運用指針を改正しました。これを受け、地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」をライセンス元のアメリカに輸出することも決めました。

目次
改正によって輸出可能になる装備品は
改正の意義と残る課題は
安全保障環境の変化で広がる輸出対象
1967年 武器輸出三原則など
1983年 例外的措置
2014年 防衛装備移転三原則
2023年 改正防衛装備移転三原則
官房長官「わが国の安保 地域の平和と安定に寄与」
専門家「外交安全保障政策でも極めて重要なツール」
専門家「将来によくない影響を及ぼす可能性」

政府は22日、持ち回りでNSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開き、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を改正しました。
それによりますと、外国企業から技術を導入し国内で製造する「ライセンス生産」の装備品の輸出について、これまではアメリカに対し部品のみ認めていましたが、完成品も含めてライセンス元の国への輸出を可能とします。
これを受けて地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」をライセンス元のアメリカに輸出することも決めました。
2014年に防衛装備移転三原則が策定されて以降、自衛隊法上の武器にあたる完成品の輸出は初めてとなります。
また、日本の事前同意があれば、ライセンス元の国から第三国に輸出するのも可能とする一方「現に戦闘が行われていると判断される国へ提供する場合を除く」としています。
このほか、安全保障面で協力関係のある国に対し戦闘機のエンジンや翼などの部品の輸出を認めるほか、「救難」や「輸送」など5つの類型の装備品に、殺傷能力のある武器を搭載していても輸出を可能とします。
改正によって輸出可能になる装備品は
今回の改正によって一定の要件を満たせば殺傷能力がある武器や弾薬の完成品についても輸出できることになります。
このうち、外国企業から技術を導入して国内で製造する「ライセンス生産」については、これまではアメリカに対して部品を輸出できるとしていましたが、アメリカ以外のライセンス元の国に対しても完成品を含めて輸出できるとしました。
防衛省が把握しているライセンス元の国はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、スウェーデン、ノルウェーの8か国あります。
また、ライセンス生産した装備品は令和4年度までに完成品と部品で少なくとも合わせて79品目あり、このうち4割の32品目はアメリカがライセンス元となっています。
具体的には、「F15戦闘機」、「CH47輸送ヘリコプター」、地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」などがあります。
アメリカ以外では、
▽「81ミリ迫撃砲」がイギリス
▽「120ミリ迫撃砲」がフランス
▽「90式戦車」の「砲身」がドイツ
▽護衛艦の「127ミリ速射砲」がイタリア
▽「5.56ミリ機関銃」がベルギー
▽「84ミリ無反動砲」がスウェーデン
▽「20ミリ多目的弾」がノルウェー
などとなっています。
これらの装備品はライセンス元の国からの要請があれば、輸出できるようになります。
また、日本の事前同意があればライセンス元の国が第三国に輸出することもできるとしていますが、武器や弾薬については特段の事情がないかぎりは現に戦闘が行われている国は除くとしています。
ライセンス生産以外では、他国と共同で開発・生産した装備品について、パートナー国が完成品を輸出した国に対し、日本が部品を直接輸出できるようにしました。
現在、日本が他国と共同開発しているのは
▽弾道ミサイル用の迎撃ミサイル「SM3ブロックA」と▽「次期戦闘機」
の2種類で、日本が輸出を想定しているのは次期戦闘機の部品です。
防衛省によりますと、日本がどの部品を担当するかは調整中だということですが、パートナー国のイギリスやイタリアが第三国に次期戦闘機を輸出して、日本が担当した部品に不具合などが見つかった場合に、速やか交換できるようにするというねらいがあるとみられます。
このほか、日本と安全保障面での協力関係がある国に対しては、武器や砲弾の部品を輸出できるようにしました。
防衛装備の輸出に当たっては日本の安全保障に及ぼす懸念の程度を厳格に審査し、総合的に判断するとしています。
改正の意義と残る課題は
今回の改正で、「ライセンス生産」の装備品にかぎってですが、これまで実質的に認めてこなかった殺傷能力のある完成品の輸出が可能になり、一つの転換と言えます。
一方で自民党と公明党の実務者協議で、公明党内に慎重な意見が強かったことから結論が出なかった課題があります。
このうち、イギリス・イタリアと開発する次期戦闘機が念頭にある、共同開発した装備品の第三国への輸出をめぐっては、政府は2024年2月末までに結論を出すよう求めています。
また、安全保障面で協力関係にある国への輸出の対象を「救難」や「輸送」など5つの類型に限定しているルールの見直しについても結論が出ていません。
この2つの見直しは、共同開発の進展や相手国との連携強化に資する一方、殺傷能力のある装備品の輸出にさらに道を開く可能性もあり、年明け以降に再開される協議の行方が注目されます。
安全保障環境の変化で広がる輸出対象
武器を含めた装備品の輸出について日本は、国際紛争の助長を回避するという平和国家としての理念に基づき、慎重に対処しながらも安全保障環境の変化に合わせて輸出の対象を広げてきました。
1967年 武器輸出三原則など
1967年、佐藤内閣は共産圏諸国や紛争当事国などへの武器の輸出を認めないとする「武器輸出三原則」を打ち出しました。
1976年には三木内閣が三原則の対象ではない地域についても「輸出を慎む」とし、実質的にすべての輸出を禁止しました。
1983年 例外的措置
しかし、1983年に中曽根内閣がアメリカから要請を受けてアメリカへの武器技術の供与を例外として認める決定をします。
それ以降、迎撃ミサイルの日米共同開発や、PKO活動に従事する他国軍への銃弾の提供など、個別の案件ごとに例外的な措置として輸出を認め、その数は2013年までの30年間で合わせて21件となりました。
2014年 防衛装備移転三原則
装備品輸出のルールを大きく転換したのは2014年の安倍内閣です。
新たに「防衛装備移転三原則」と「運用指針」を決定し、平和貢献や国際協力、それに日本の安全保障に役立つ場合にかぎり、厳格な審査のもとで、輸出を判断していくとしたのです。
ただ、他国と共同で開発・生産したものなどを除いて、完成した装備品を輸出できるのは「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」に該当するものに限定しました。
実際にこれまで完成品を輸出したのは、フィリピンに対する警戒管制レーダーの1件のみで、殺傷能力のある完成品を輸出したことは一度もありません。
2023年 改正防衛装備移転三原則
今回改正した防衛装備移転三原則では「官民一体となって防衛装備の海外移転を進める」としています。
こうした方針のもと、外国企業から技術を導入して国内で製造する「ライセンス生産」について、ライセンス元の国に完成品を輸出できるようにしました。
これにより、ライセンス生産しているF15戦闘機や砲弾など、殺傷能力や、ものを破壊する能力のある完成品も輸出できることになり、政府は22日、ライセンス元のアメリカからの要請に基づいて地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」の完成品を輸出することを決定しました。
防衛省関係者によりますと、アメリカの要請の背景には、ロシアの侵攻を受けているウクライナの支援によって不足している迎撃ミサイルを補いたいというねらいがあるとみられています。
岸田首相「平和国家としての歩み堅持変わらず」
岸田総理大臣は22日夜、総理大臣官邸で記者団から「殺傷能力のある武器の輸出は紛争を助長しかねないという懸念にどう答えるか」と問われたのに対し「防衛装備移転三原則そのものは維持しており、力による一方的な現状変更は許さないなど、国際秩序を守っていくために貢献していきたい。平和国家としての歩みを堅持することも変わりはなく、国民に取り組みの積極的な意義について丁寧に説明を続けていきたい」と述べました。
官房長官「わが国の安保 地域の平和と安定に寄与」
林官房長官は、臨時閣議のあとの記者会見で「わが国にとって望ましい安全保障環境の創出などを進めるための重要な政策的手段であるという観点から、与党のワーキングチームの合意内容を踏まえて行った」と述べました。
そのうえで、地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」のアメリカへの輸出を決めたことについて「特に慎重な検討と厳格な審査を経て、認めうることを確認した。日米同盟の強化の観点から大きな意義を有するもので、わが国の安全保障およびインド太平洋地域の平和と安定に寄与するものだ」と述べました。
専門家「外交安全保障政策でも極めて重要なツール」
防衛装備移転三原則と運用指針が改正されたことについて、安全保障が専門の拓殖大学の佐藤丙午 教授は「時代の要請にしたがって見直されるのは自然の流れだ。防衛装備移転は総合的な意味で日本の抑止力を向上させ、平和と安定に貢献している。国際的な防衛協力体制の中で一つのピースとして作用することが極めて重要で、日本の外交安全保障政策の中でも極めて重要なツールになるので、積極的に進めるべきだ」と指摘しています。
外国企業から技術を導入して国内で製造する「ライセンス生産」について、ライセンス元の国に完成品を輸出できるようにしたことについては「そもそも先方の国で作っているものなので、そこに輸出することの違和感はそれほどない。相手国との関係が強化されるなど、日本の安全保障において対外関係の重層化が期待できるので極めて順当だ」話しています。
その上でライセンス生産した地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」の完成品のアメリカへの輸出を決めたことについては、「ウクライナ戦争やガザの問題を見ても、防空能力が極めて重要な役割を果たしている。世界的に防空能力に対する需要が高まることが予想されるが、アメリカ国内だけでは十分に生産できないとなると日本がアメリカの防衛企業にかわって、製造するということは合理的な判断だ」と指摘しています。
専門家「将来によくない影響を及ぼす可能性」
防衛装備移転三原則と運用指針が改正されたことについて、安全保障が専門の流通経済大学の植村秀樹 教授は「これまで日本は平和国家の看板を掲げて、武器輸出は極めて慎重に進めてきたが、今回の改正では武器を輸出する国になることを政府が宣言していて大きな変化だ。国会で議論をして国民的な合意を得るというプロセスが十分に行われず、国会が閉まっている時に閣議決定するというやり方は、将来によくない影響を及ぼす可能性がある」と指摘しています。
外国企業から技術を導入して国内で製造する「ライセンス生産」について、ライセンス元の国に完成品を輸出できるようにしたことについては、「少しずつ日本の防衛産業や防衛政策のあり方が変わっていくきっかけになり得るものだ。殺傷能力のあるものも含めて売れるようにすることが日本のあり方として適切なのかは疑問だ」と話しています。
そのうえで、ライセンス生産した地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」の完成品のアメリカへの輸出を決めたことについては、「飛躍した言い方かもしれないが、日本の企業がアメリカの防衛政策を支える兵器工場になっていくことにもつながりかねない。日本が『国際紛争を助長しない』と言っても、アメリカのやり方次第では最終的に国際紛争を助長することになりかねず、考え直すべきだ」と指摘しています。


内閣官房HP
防衛装備移転三原則について
(令和5年12月22日 国家安全保障会議・閣議決定)

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/bouei.html





アメリカが遂に日本政界の媚中派を名指し批判――二階氏や今井氏など

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
2020/7/30(木) 20:58
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2b1c397bfdc9e9f316e4cf744200e164ced47f48
習主席と会談し安倍首相の親書を手渡す自民党・二階幹事長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
 ワシントンのシンクタンク戦略国際問題研究所が安倍首相を媚中へと向かわせている政界の周辺人物を大胆に名指し批判した報告書を発表した。安倍政権の媚中政策によほどの危険を覚えたのだろう。

◆調査報告書の位置づけ
 ワシントンのシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS=The Center for Strategic and International Studies」は「日本における中国の影響力(China’s Influence in Japan)」と題する調査報告書(以下、報告書)を7月23日に発表した。報告書は情報アクセス基金(IAF =the Information Access Fund)を通じて、アメリカ国務省のグローバルエンゲージメントセンター(グローバル関与センター=Global Engagement Center)(DT Instituteが運営)の支援を得て作成されている。

 驚くべきは、報告書の中で自民党の二階俊博幹事長や安倍政権の今井尚哉(たかや)首相補佐官の実名を挙げて、日本の媚中政策を厳しく批判していることである。

 それ以外にも森まさこ法務大臣の媚中ぶりと、それを批判した作家の百田尚樹氏にまで触れていて、目を見張るばかりだ。

 以下、関連部分だけを拾ってご紹介する。

◆自民党の二階幹事長に関して
 安倍政権を媚中へと向かわせている最も影響力のある人物として、報告書はまず二階幹事長の名前を大きく取り上げている。

 その中で取り上げられているいくつかのエピソードを列挙してみよう。筆者の所感は「説明」と書いて区別する。

 二階1:二階(Nikai)は自分の故郷にある動物園のためにパンダを5頭も中国から買ったことがある。2019年4月には、安倍首相の特使として習近平と会談し、アメリカにはアメリカの意見(考え方)があるにもかかわらず(=それを無視して)(regardless of the United States’ opinion)、日本は「一帯一路」に協力すると提唱した。

 説明:これに関しては2019年4月26日のコラム<中国に懐柔された二階幹事長――「一帯一路」に呑みこまれる日本>に書いた通りで、アメリカが同じ見方をしていたことに励まされる。

 二階2:二階(Nikai)は、習(習近平)の国賓訪日を主張した。

 説明:筆者は多くのコラムで「習近平を国賓として招聘すべきではない」と主張してきたので、それらのコラムを全て列挙することはできないが、田原総一朗氏との対談本『日中と習近平国賓』では、「いかに習近平を国賓として来日させるべきではないか」に関して思いのたけを田原氏にぶつけ、それに対して田原氏は「中国と仲良くして何が悪いんですか!」と反論している。田原氏は対談の中で何度もご自分が二階幹事長に「習近平を国賓として日本に招聘すべきだ」と忠告したのだと仰っておられる。

 何れにしても、アメリカの報告書にまで「二階氏が習近平国賓招聘を主導している」と書かれているので、二階氏の最初の動機がどうであれ、二階氏が主張していることだけは確かだろう。

 二階3:日本の対中援助関係は、中国への影響力の始まりだとも捉えられている。自民党の二階幹事長は、習近平の国賓招聘や一帯一路を擁護し提唱するだけでなく、かねてから対中対外援助を擁護してきた。ODA(政府開発援助)とは、OECDによって「開発途上国の経済発展と福祉を促進することを主たる対象とする政府援助」と定義されている。

◆安倍政権の今井尚哉首相補佐官に関して
 今井1:首相補佐官で経済産業省官僚だった今井尚哉(Takaya Imai)は、ビジネス的立場から、中国や中国のインフラプロジェクトに対する姿勢をよりソフトに(友好的に)するよう、安倍首相を説得してきた。

 今井2:今井(Imai)は二階とともに強力なグループを形成していて「二階今井派(Nikai-Imai faction)」とも呼ばれている。

 今井3:Kitamura(北村)の盟友である経済産業省出身の今井尚哉補佐官は、日本の安全保障戦略の一環として経済問題を提起してきた重要人物である。

◆秋元司・衆議院議員に関して
 秋元1:秋元(Akimoto)は、自民党の親中グループで自民党の強力な二階派に属している。

 秋元2:2019年12月、秋元は中国の大手オンラインスポーツギャンブルサービス「500.com」から総額370万円(約3万3000ドル)の賄賂を受け取った疑いで逮捕された。同サイトは、中国政府が出資する半導体メーカー、清華紫光集団を大株主としている。清華ホールディングスは清華紫光集団の株式を51%保有しており、習近平や胡錦濤の母校である清華大学の完全子会社であるだけでなく、胡錦涛の息子の胡海峰が、かつてこの企業の中国共産党委員会書記を担当していたことがある。

 説明:要するに報告書は、二階派は中国のシャープパワーに取り込まれてしまっているということを強調したいようで、この項目に関しては非常に長く書かれているので省略する。

 筆者は2018年1月17日のコラム<「チャイナ・イニシアチブ」に巻き込まれている日本>で、中国が仕掛けてくる「心理戦」に関して書き、また2019年4月27日のコラム<「“一帯一路”国際シンクタンク」結成を提唱:「新国連」を立ち上げる勢い>で中国の「シャープパワー」に関して書いたが、報告書もまた筆者と同様の警鐘を鳴らしていることは非常に心強い。

◆森まさこ法務大臣に関して
 森1:アリババの創設者であるジャック・マーが3月2日に日本の自民党の親中幹事長である二階俊博に100万枚のマスクを送ったとき、日本の法務大臣森まさこは「ありがとう、ジャック」とツイートした上で、彼女(森まさこ)はジャック・マーを「友達」と呼んだ。そして彼女は「ジャック・マーと12月に深い会話」を交わしたと自慢した。

 森2:この賞賛は、日本の右翼の小説家である百田尚樹氏からの批判を受けた。

 個人への批判は概ね以上だが、安倍首相そのものに対する批判は全般的に非常に辛らつだ。特に習近平国賓招聘を重んじたためにコロナの初期対応を誤ったのではないかという点を指摘していることが注目される。

 それは3月9日のコラム<コロナ禍は人災>に書いた筆者の視点とあまりに一致しているので、これもまた驚いている。

 筆者自身は国を憂うあまり、「愛の鞭」のつもりで安倍首相の間違った路線に警鐘を鳴らしているのだが、アメリカの研究者や政府関係者らが同様の視点を持っているということはすなわち、安倍政権の路線はアメリカにとっても好ましいことではないことを示している。

 日本の政府関係者は、この事実を真剣に受け止めるべきだろう。