【「ガザ危機を見る眼」(前編)】東京大学名誉教授 板垣雄三氏 IWJインタビュー | ☆Dancing the Dream ☆

☆Dancing the Dream ☆

Let us celebrate
The Joy of life ♡
with ☆Michael Jackson☆


「ガザ危機を見る眼」~東京大学名誉教授 板垣雄三氏 IWJインタビュー
[収録日時] 2023年11月2日(木)



10月7日以前に何があったか?
10月7日に何が起きたか?
その後何が起きたか?

 認識の陥穽(落とし穴)
「イスラエル・ハマース戦争」ではない
「植民地主義 vs それへの抵抗」だ

「イスラエル・ハマース戦争」 と、メディアでよく報道されている。
この認識は、間違っている。
これは、「国対国(政府対政府)」の戦争ではない。

 メディアでは、安易に「パレスチナ自治政府」と呼ぶ。
「パレスチナ自治政府」と呼ばれるものは、エルサレムの北側のヨルダン川西岸のラーマッラにある。
「オスロ合意」に従って、パレスチナ人の「暫定自治政府」を作っていくという予定だった。
「オスロ合意」の実際は、ノルウェーが舞台を提供してイスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)とが話し合いをして結ばれた協定である。
それを後から追いかけて、ホワイトハウスで調印式をやっただけという話である。
 実は、その前段には、イスラエルと北朝鮮間の秘密交渉の経緯がある。
イスラエルがアメリカを排除した上で、北朝鮮と国交樹立を目指していた。
イスラエルは北朝鮮を援助する代わりに、北朝鮮がシリア、イラクなど中東の国々にミサイルの製造法を教えたり提供したりすることをやめさせるという秘密の交渉を北京で行っていた。
アメリカは途中でそれに気づき、圧力をかけた。
次に、イスラエルは、方向転換して、PLOと密かにオスロで交渉をした。
その後、アメリカの顔を立てて、アメリカで「オスロ合意」の調印式をやったというだけの話なのだ。
 「オスロ合意」はそれを結んだイスラエルの側のラビン首相は、暗殺された。
イスラエルの側からは、極右が「オスロ合意」を潰しにかかる行為が継続されてきた。
それを最も強力に進めていたのが、ネタニヤフである。
 「オスロ合意」の結果、一応、パレスチナ「自治政府」はできたが、名前だけで「自治」というものの実体はない。
時と共に、ますます実体のないもになっている。
民衆の側では、「自治政府」というものを全く頼りにしていない。
民衆の側からは、「自治政府」はイスラエルの支配の手先にされてしまっていると見られている。

 また、メディアでは、「ガザを実効支配するハマス」と言っている。
これもメディアの情報操作である。
17年間もイスラエルによる封鎖状態の下にあるなら、中身は「実効支配」ではない。
ガザは「壁」を作られて、人や物の出入りもシャットアウトされる。

 ハマスは、2006年には、政権をとった。
1960年台の末から主導権を握ってきたファタハといういわゆる”自治政府”が体たらくになってしまい、2006年の選挙でハマスは議席多数をとった。
ハマスは根拠地をガザの方に置き、政府に代わる機能を果たした。
「実効支配」とは、”不法に実力で支配している”という意味であるので、ハマスは「実効支配」などしていない。

 しかし、ハマスとファタハは、一つの民族の力としてまとまるということができなかった。
パレスチナ人の側にとっては、内側で指導精力が分裂している状況である。
イスラエルの方は、それを狙って、1980年代、第一次インティファーダでハマスが誕生したとき、ハマスを歴然と応援していた。
イスラエルは、イスラーム主義の方にテコ入れしていたのだ。
 この方式は、イスラエルの発明で、それをアメリカに教えていた。
アメリカは、CIAがアフガニスタンでムジャヒディンを育成し訓練した。
 イスラエルやCIAが、最初の社会主義的なレジスタンスからイスラム主義を強めるように働きかけて行ったという面はある。
社会主義を潰していくときに、イスラームを利用しようという思惑はある。
 現在のイスラエルとハマスの関係は、当初とは異なり、決裂している。

 このようにパレスチナの人々は、内側からも重荷を抱えている。
色々の角度から植民地主義にがんじがらめにされている。

 パレスチナの人々の戦いは、「征服・支配・抑圧する側の威力 vs される側の必死の抵抗」。
これは、「植民地主義とそれへの抵抗」である。

この抵抗は、国際法の基本的人権のひとつとして、「抵抗権」がある。
世界中で植民地が独立するときに、武力で戦って独立を勝ち取る「武装抵抗」が認められている。
パレスチナの武装抵抗をテロであるかのように言い、イスラエルにとっての911事件であるかのような言説は、プロパガンダである。


10月7日の破裂「アルアクサの大洪水」は
ハマースだけでなく多くの勢力が一致団結した総力戦

 「イスラエル・ハマース戦争」 という言い方に、もう一つの間違いがある。
10月7日の爆発というのは、ハマースがこの日、境界線を超えてイスラエル領内に入ったという。
しかし、ハマースだけがやったのではない。

 しかし、2018年前後に、盛んにガザの住民が境界線に集まり「故郷への帰還の大行進」という平和的デモを行い、それをイスラエルが撃ち殺すということが、繰り返されていた。
パレスチナ人にとっては、境界線の向こう側に行くことは、領内に侵入するのではなく、奪われた自分たちの土地に戻るということだ。
 10月7日に武装した部隊が、壁やフェンスを壊し進んだ先は、元々、パレスチナの土地だったのであるが、その武装部隊はハマースだけではなく、イスラミック・ジハード(イスラム聖戦)、ジハード・イスラーミー、人民抵抗団(人民抵抗委員会連合)など多くの組織が関わっていた。
ハマースの武装勢力・アルカッサームという軍団(ハマスの中は担当分野に分かれて組織化されている)とともに、ジハード・イスラーミーの方はアルクッツ旅団、ファタハの中からもハマスに協力する分派でアルアクサ殉教者軍団、また、マルクス主義 毛沢東主義のパレスチナ解放人民戦線などの左翼からも応援を受けてた。
多くの勢力が一致団結して、10月7日の「アルアクサの大洪水」という作戦が実行された。

 10月7日の「アルアクサの大洪水」作戦は、ハマスが行った大テロ事件であるかのように問題になっているが、実際は大きな広がりをもったものだった。
さらに、それを支持する民衆は世界に広がる。



第6次ネタニヤフ政権
極右勢力の異常

「娯楽殺人」「聖地襲撃」
 去年2022年11月に誕生した「第6次ネタニエフ政権」は、乱暴なことを言う極右の宗教勢力を巻き込んだ政権であると言われる。
今年2023年1月のはじめから、”難民キャンプを集中的に攻撃する”、”子供を狙って撃ち殺す”ということが頻発した。
イスラエルからの入植者たちが自警団として銃をもって動き回っている。
彼らがパレスチナ人を狙って撃ち殺す。これが一つの「娯楽」のようになっている。
これが、殊に、ナブルス、エルサレムなど、西岸地区の至る所で起こった。
これが「娯楽殺人」と呼ばれるものだ。
しかも、その場合に、「子供を撃つのが面白い」というような猟奇的な事態になっていた。

 2022年4月15日、「覆面の男数十人」が、エルサレムのアルアクサモスクでのラマダーン月の夜の礼拝を襲撃するという事件が起こった。
イスラエル治安部隊は150人が怪我をし400人ものアラブ人を逮捕した。
イスラエルの過激な右翼たちが、この地がイスラエル国家のものであることを示すために、イスラムの聖地でユダヤ教のユダヤ民族のエジプト脱出を祝う過越の祭りの山羊を屠るペサハの儀式まで行おうとした。

 イスラムの聖地(ハラム・シャリーフ)が襲われ汚される事件。
これは、ガザから見たエルサレムとかいう次元の話ではなく、イスラム世界全体、中東アラブ、東南アジア、アフリカ、欧米を含めてからイスラム教徒にとって非常に深刻な問題だった。
ハラム・シャリーフはユダヤ教の聖地でもあるので、イスラム教から聖地を奪い取り、聖地からユダヤ教を排除しユダヤ教の手に取り返すという、イスラエル極右による運動の一環だった。これにイスラエルの治安部隊も加担した形だ。


来るべきものが来た
閉塞状態の破裂

冷静な読み「イスラム世界の民衆の怒り」が味方
イスラエル市民も反ネタニヤフ

 イスラエル建国以来、75年間、ずっと国際法違反が重畳放置され、既成事実化してきたことの結末である。
一つには、国連はパレスチナ難民は郷土に帰る権利があるという「帰還権」を決めたが、イスラエルによって踏み躙られたままの75年である。このほか国連で何を決めようが、安保理事会のアメリカの拒否権で、イスラエルの沢山の国際法違反はそのまま放置されてきた。
イスラエルという国を作ったのはアメリカとソ連であるが、アメリカの罪は重い。
違反を正させずして、これから先をどうするかという話になっている。
パレスチナにとっては、絶望的な状態の極で、破裂してしまった。

 しかし、そういう面だけではない。
ハマスの側には計算もある。
ハマスは、情勢を見抜いて動いているのだ。

 イスラエルの道具立てにされている無能なラマッラーの”自治政府”に民衆は愛想を尽かしている。
サウジアラビアやアラブ諸国は、イスラエルと密かな結びつきを持とうとしている。
アラブ首長国連邦、バーレーン、モロッコ、スーダンまでイスラエルと国交を開いている。
これは、アラブの国々の「指導部、支配層」が揺れ動き浮遊している様である。
浮遊とは、地に足がつかず、「民衆」から離れて浮かび、揺れ動いているということ。
しかし、これに対して、”「民衆」が非常に厳しい目を持っている"。
 ハマスの蜂起というのは、このアラブの ”民衆の動き” を見越してのものなのだ。
支配層に対する厳しい眼差し。
”内側からの動揺(民衆の動き)”は、どんどん大きくなりつつある。

 日本のマスコミの国際報道は、しばしば「国」しか見ていない。
「国」単位の話ばかりしている。
それは、結局は、「民衆」から離れて浮き上がった「指導部」の話をしているだけである。
「民衆」を全然見ていない。
これは、日本の外務省もそうなっているように見える。

 中東のイスラムの一般民衆というのは、非常に政治的な人々である。
ウラマーという法学者などがリーダーになって主導するというようなことではなく、イスラムの民衆は一人一人が政治のことを考えている。
そして、ハマスは、民衆の側が「抑えつけられたままではいない!」ということを見越しているのだ。
イスラムネットワークで連絡が付いている面もあるし、ハマスは、そういう大きな民衆の動きを掴んでいる。

 従って、10月7日の破裂は、イスラエルだけでなく、アラブの指導者たちも飛び上がって驚いた。
しかし、アラブ社会の民衆の方は、
「監獄状態のガザがこのまま続くとは思っていない。何かが起こらざる得ない。来るべき時が来た」
アラブだけではなく、世界のイスラム社会の民衆は「こういうことが起きて当然だ」と思っている。
 
 10月7日の破裂とともに、サウジアラビアの動きも止まった。 
アラブ首長国連邦とイスラエル間で飛んでいた飛行機も止まった。
アラブ諸国の指導部は、このままイスラエルと国交を継続していると、もう一度「アラブの春」の蜂起のような、革命騒動が起きかねないと震え上がったのだ。
つまり、アラブの支配層も信念のないフラフラとした根無し草であることが暴露されたわけである。

 現在、日本でイスラエル大使館の前で戦争に対する批判を訴える運動は、それ自体は確かに注目されるものだが、イスラエル大使館だけではなく、アラブ諸国の大使館にも、「もっと民衆の声を聞け」と申し入れをする行動が大事である。

 さらに、ハマスは、「イスラエルの社会亀裂」も読んでいた。
今年の7〜8月、ネタニエフ政権は、司法改革司法制度を政府主導に変えようと動いた。
イスラエル議会からイスラエル市民になっているパレスチナ人を追放するとか、西岸をイスラエルが丸ごと併合するとか、政権が無茶をするときに、「待った」をかけて釘を刺してきた司法の力を抑えようというものだ。
 しかし、これの動きに反対して、イスラエル空軍の予備役の人々が、「軍務のサービスを拒否する」という声明を出した。
その署名運動が広がり、空軍予備役の6割超の人たちが署名した。
 この動きは、イスラエル軍の戦闘能力が激減するとして、大事件になった。
今現在はその人たちがガザに空爆しているのは事実だが、イスラエル社会に深刻な亀裂が起きているのも事実である。

 10月7日の破裂は、感情的なものではなく、冷静な政治的な判断があったのである。

(〜1:38:34 つづく)





【3分でわかる】相次ぐイスラエルとアラブ諸国の国交正常化、読み解く2つの鍵は「世代交代」と「脱・石油」
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f7fc07dc5b664c95bd72c97
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f7fc07dc5b664c95bd72c97

イスラエルとアラブ諸国の国交正常化をめぐって 2021.02.01
京都産業大学
https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/ir/2021_lir_64.html