米銃乱射「4チャン」影響 NY州報告書、法改正を要請
共同通信 2022/10/19
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銃撃事件が起きたスーパーの前で抱き合う人たち=5月、米ニューヨーク州バファロー(AP=共同)
【ニューヨーク共同】米ニューヨーク州は18日、州北部バファローで5月に発生した銃乱射事件へのインターネットの影響に関する報告書を発表した。10人が死亡した事件は黒人に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)とされ、報告書はネット掲示板「4チャン」が白人被告(19)=殺人罪などで起訴=の人種差別的な主張を強めたと指摘、運営会社の民事責任を追及する法改正を求めた。
4チャンは日本の「2ちゃんねる」に影響を受けて英語版として創設され、2015年に2ちゃんねる開設者の西村博之氏が所有者になったとされる。報告書は「ヘイトスピーチと過激化の温床となっている」と糾弾した。
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4chan(Wikipediaより)
URL www.4chan.org (NSFW)
www.4channel.org (SFW)
言語 英語
タイプ 画像掲示板
運営者 西村博之
設立者 クリストファー・プール
営利性 営利
登録 登録機能なし(匿名)
ユーザー数 約2200万人(月間)
開始 2003年10月1日 (19年前)
2022年バッファロー銃乱射事件
2022年5月14日、アメリカ合衆国ニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットで黒人を狙った銃乱射事件が発生した。犯人は18歳の青年で、4chanの/pol/と/k/のアクティブユーザーであったという。また白人至上主義・反移民主義に基づく憎悪に満ちた内容の犯行声明を4chanに投稿していたことが、事件後に明らかにされた。犯行声明は180ページ以上にのぼる。犯人は襲撃の直前にライブストリーム動画をTwitchで配信し、4chanユーザーはその動画を拡散させた。事件後、ニューヨークの司法長官は、容疑者が利用していたTwitch、Discord、および4chanと8chan(現・8kun)への捜査を開始したと明らかにした。また4chan管理人のひろゆきの元には、非常に拘束力が強い「サピーナ」と呼ばれる罰則付召喚令状が送付され、州当局から情報提供を求められているという。これに関連して元2ちゃんねる副管理人の山本一郎は「代理人経由で米捜査当局から4chanや8kunの実情についてのヒアリングがあった」としている。
Modern Diplomacyは、4chanの管理体制の不備が過激主義の温床になったとして次のように指摘している。
4chanが極右テロの温床であることは明らかだ。しかし、なぜこの画像掲示板はこのような状態になっているのだろうか。その答えは、コンテンツに対するモデレーションの甘さにある。〔……〕かつて4chanは、多くのユーモラスなミームを生み出したが、その後、ヘイトとテロの温床となった。ミームは危険な思想を伝えることができるため、RedditやFacebookのようなウェブサイトは、危険な偽情報の流布を防ぐために厳しく規制される必要があるが、4chanには厳格なモデレーションが欠如している。もはや4chanは自らモデレートすることはないだろう。もはや4chanは長居をしてしまった。今日の情報化社会において4chanに居場所は残されていないのである。
事件を受けてCNNは、ひろゆきに繰り返しコメント要請を求めたものの「返答がなかった」「何の声明・見解も出していない」と批判的に報道している。その後、ひろゆきはTwitterに自身の顔写真を添付した上で「おいらが白人だと思いますか? おいら自身が、4chanは白人至上主義者のサイトではないという生きた証拠です」と英語で書き込んだ過去の投稿を「なんでおいらが白人なんだ? 色盲なのか?」と英語で引用リツイートした。これに対して朝日新聞記者の藤原学思は「論理的に、サイトの運営者が白人ではないことは、サイトのユーザーに白人至上主義者が多くないことの『証拠』にはならないはずだ」と述べている。
2022年5月27日、ひろゆきは4chanの管理責任を巡る一連の批判についてインターネット報道番組『ABEMA Prime』で次のように反論した。
4chanが生まれる前から、米国ってKKKとかいっぱいいたんですよね。なので4chanが何かをしたというより、米国ってそういう文化、そういう風習、そういう人たちが色々出てましたんで、ネットがどうこうっていう問題ではないと、僕は思いますけどね。多くの人が情報伝達する場所(N対Nのコミュニケーション)は、それは情報を知る人が増えるよねっていうことで、一応そういったサイトの中で、米国、英語圏で一番でかいのが今4chanなので、じゃあ4chanで情報知った人が多いよねと……構造の問題とサイトの方向性の問題をごっちゃにするのはよくない。
また、ひろゆきはゲスト出演した町山智浩の「4chanだけじゃなくて、そこから派生した8chanというのもあるんです。連邦議会襲撃犯たちの情報源になっていたと。そこでアメリカ自体を揺るがす暴力事件の思想みたいなものがあって。人種差別とかそういったものは4chanだけが野放しになっていて、危険なメディアになっている」という発言に対し、「4chanだけが野放しとか、嘘言うのどうかと思いますよ。利用者が多いだけで、FacebookとかTwitterとかとも同じようにニューヨーク州から調査を受けてますよ。今、嘘付きましたよね?」と批判した。それ以外にも「(問題がある投稿は)報告があれば消す。米国の法律に従っている」「児童ポルノは自発的に消している」「4chanは儲かっていない」等と述べ、4chanは管理責任を果たしていると表明した。
さらに、ひろゆきは銃社会であるアメリカに対して「『銃に問題があるわけじゃない。別のことに問題があるんだ』というふうにしたがるメディアや、お金を持っている人たちがいっぱいいる。なので多分『ネットが悪い』というかたちで『じゃあ、ネットが何とかなればいい』で銃規制が進まないっていうオチにアメリカはするんじゃないかと思ってますけど」と述べている。ちなみに米国では通信品位法230条(英語版)のプロバイダ免責規定により、プラットフォーム管理者は、ユーザーの投稿に関する責任を負わない。しかし、多発する差別的なヘイトクライムの背景には4chanなどの影響もあるとして、ジョー・バイデン政権は230条の撤廃を主張している。
偽情報専門家のキアラン・オコナーは、掲示板における匿名性について、恥や報復を心配せず、思ったことを発言できるとしつつも、卑劣で有害なヘイトスピーチも許可されていると指摘する。なお、英語圏には4chanと似た掲示板としてRedditがあるが、こちらは幅広いガイドラインが定められており、フェイクニュースや陰謀論、特に良識に反したヘイトスピーチは原則として禁止されている。しかし、4chanは米国法に違反しない投稿は原則すべて許可されており、ガイドラインもそこまで厳密ではないため、Redditで規制されるような投稿も可能となっている。これらを踏まえ、オコナーは「ユーザーが過激化する動機を掲示板で簡単に見つけられるようなことはあってはならない」とした上で「4chanが憎悪犯罪(ヘイトクライム)の可能性を下げることを真剣に考えているのであれば、白人至上主義を促進するようなコンテンツは許可しないとか、明確なルールを定めたコミュニティーガイドラインを作成すべきだ」と提言した。
これら経緯から海外メディアは4chanを「憎悪に満ちた掲示板」(CNN)、「悪名高い画像掲示板」(WIRED)、「インターネット上で最も卑劣な場所の1つ」(Guardian)等と報道している。また、この銃乱射事件が起こる前から、ジャーナリストの清義明は、ひろゆきの自由放任主義に基づく4chanの管理体制を強く批判しており、全6回のルポルタージュ連載「Qアノンと日本発の匿名掲示板カルチャー」最終回の結びで「言論の自由の社会実験」が失敗した理由を次のように論じた。
西村氏が「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」というような、リバタリアン的性善説が機能する世界は、残念ながら虚構にすぎない。自由を維持するには、それを自らコントロールしなければならない。そうしなければ、弱肉強食の混沌か、または逆に国家や法が現れる。インターネットの言論の自由の社会実験が失敗したのは、その自由をコントロールする前提が欠けていたからだ。西村氏はおそらく今でもこれをわかっていない。
— 清義明 (2021年4月2日). “Qアノンと日本発の匿名掲示板カルチャー【6】サイバースペースにおける「言論の自由」の社会実験の失敗/下” (日本語). 論座(RONZA). 朝日新聞出版. 2021年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月8日閲覧。