小野昌弘インペリアル・カレッジ・ロンドン大学准教授による
素晴らしい講演に引き込まれました。
前半30分の「新型コロナに対する免疫」についての解説を
文字起こししてみました。
基礎のところですね。
生命…人体の不思議…
免疫システムとウイルスとの攻防…
人の生命を守るための科学者の探究…
コロナ疲れというけれど、
「知る」ことによって、
ここは乗り越えなくっちゃ!と
改めて冷静に覚悟できました。
命あっての物種!
SARS~Cov-2ウイルスは多様な疾患である
問題の大きい疾患
感染者のうち
危篤~死亡 ~1%
重症 ~5% ➡︎後遺症
軽症~中等症 ~60%➡︎後遺症
無症状 ~30%?
何が新型コロナ感染後の運命を決めているのか?
「免疫系」の役割が非常に大きい。
新型コロナの何が脅威なのか?
①重症化や死亡率が高い。(インフルエンザなどよりかなり高い)
②流行が一気に広がってしまう。(感染の効率が良い)
③免疫がある人がまだ圧倒的にすくない。
①②があるので、
流行制御しなければ多数の患者が同一地域に同時発生し、
医療崩壊になる。
③免疫がある人が少ない故に、①②が起こる。
流行動態から言っても「免疫」というのは非常に重要。
新型コロナウイルスの構造
コロナという名は「王冠」の意味。
「王冠」のような周囲の突起を「スパイクタンパク(Sタンパク)」という。
新型コロナウイルスは、
遺伝子情報をRNAという塩基にコードしている。
RNAは、「A U G C」の4つの種類の分子(塩基)が
一種の文字情報のようになっていて遺伝子をコードする。
このRNAを使ってタンパクを作って、
タンパクを使ってそれを組み立ててウイルスを作ることができる。
この遺伝情報、約3万個のRNA塩基配列のコードを全部ひっくるめて、
コロナウイルスの設計情報:「ゲノム」と呼ぶ。
我々はコロナ約3万塩基「A U G C」のどれか書かれているゲノムの
3万文字で苦しんでいる。
新型コロナはどのように我々の細胞に感染するのか?
コロナの王冠「スパイクタンパク(Sタンパク)」が、
我々の細胞(鼻腔、肺、消化管の上皮細胞)にくっついて、
そこを足掛かりにして中に入って、
その細胞の中で複製をして、細胞を殺しながら増えていく。
足掛かりになるタンパクは、
人間の「ACE2」という名前のタンパクだということが分かっている。
それが鼻腔、肺、消化管の上皮細胞にある。
だから、匂いが分からなくなったり、味が分からなくなったり、
咳が出たり、肺炎になったり、消化器症状が出たりする。
コロナにスパイクタンパクは
どのように人間の細胞にくっつくのか?
コロナのスパイクタンパクを拡大すると、
上部に「チョコンと飛び出たものがある(:受容体結合ドメイン)」。
これが人間の細胞の「ACE2」にくっついて、
それを足掛かりにして細胞の中に入り込む。
ここをブロックすれば、良いという事ではある。
感染をどのようにブロックするか?
重要な免疫細胞
人間側のコロナに対する防衛は「免疫」。
免疫系の細胞で重要なものは、2つのグループに分かれる。
①自然免疫の細胞:一種の「前線部隊(マクロファージ、樹状細胞)」
これらは何をしているか?
・「ウイルスがいる」と見つける事ができる。
・ウイルスの種類(構成分子など)を得意的に認識する事ができる。
・リンパ球(別の免疫細胞)に危険を伝える事ができる。
自然免疫細胞はとりあえずの対応なので
ウイルスの細かい種類の区別や記憶はできない。
それができるのはリンパ球の方になる。
②リンパ球:我々がよく言ういわゆる感染に打ち克つ『免疫』に必須なもの。
なぜか?
・新型コロナウイルスの「抗原」を得意的に認識できる。
・免疫記憶をもつ。(ワクチンの標的)
コロナにも色々ある。風邪のコロナ、感冒のコロナから別のウイルスもある。
今問題になっている新型コロナウイルスそのものだけを
特別に覚えておく事ができるのはリンパ球だけ。
だからワクチンの話をする時にはこの「リンパ球」が大事になる。
「リンパ球」は2種類ある。
▶︎①B細胞
B細胞は「抗体」を作る細胞。
B細胞がコロナに対する「抗体」を作ってくれると、
抗体がコロナにくっついて、不活化してくれる。
感染から守ってくれる。
▶︎②T細胞
T細胞は「ウイルスのタンパクの断片(ペプチド)を認識する」
事ができる。
それで、ウイルスが感染している人の細胞を殺してしまう。
ウイルス感染が広がるよりもウイルスには死んでもらった方が良い
というメカニズムがある。
⑴「キラーT細胞(CD8):ウイルス感染細胞の除去をする。
これがないと治癒がなかなかできない。
⑵「ヘルパーT細胞(CD4):細胞を殺すことはあまりしないが、
代わりに「B細胞」や「キラー細胞」の成熟を助けて、
免疫応答の全体を指揮する。
※小野先生の専門は「ヘルパーT細胞(CD4)」を中心としている。
新型コロナに対する「免疫」
治癒に至り、再感染を防ぐための機序
B細胞免疫…「抗体」生産してウイルスの中和、不活化ができる。
T細胞免疫…ウイルス感染細胞の除去、抗体の成熟を助ける。
そして、感染が終わると、
B細胞も、T細胞も「記憶細胞」になって感染を覚える事ができる。
「メモリーT細胞」「メモリーB細胞」となる。
だから、
基本的には「ウイルスに一度罹るともう一度罹らないはず」ではある。
※ちなみに抗体検査というのは、B細胞が作った抗体の部分だけを見ているだけ。
免疫の機能は上記のとうり色々な事があるので、
抗体だけで全ての事が言える訳ではない。
中和抗体とは?
抗体は、体の中に入ってくるあらゆるものに対して作られ得るが、
抗体ができても、あまり何もしない事もある。
でも、ウイルスが入ってきてウイルスの働きを止めるような抗体を作る事が
「免疫系」というのはできる。
このような「抗体」を「中和抗体」と呼ぶ。
新型コロナウイルスの「Sタンパク(スパイクタンパク)」は
人間の細胞の「ACE2」にくっつきたい。
そこへ、「抗Sタンパク中和抗体」はウイルスのSタンパクに結合して
「ACE2」にくっつくのを邪魔をしてくれる。
多くの新型コロナワクチンは
コロナウイルスのSタンパクを免疫する
コロナから回復した患者の血清を調べてみると、
こういう「中和抗体」ができている事がよく分かる。
コロナから回復できるには、
大抵の人がコロナウイルスに対する「中和抗体」を作って、
そのウイルスが細胞に感染できないようにできている。
「Sタンパク(スパイクタンパク)」にくっつくような抗体が
「中和抗体」である。
だから、ワクチンの戦略としては、
人に投与する事で
「Sタンパク(スパイクタンパク)」に対する「中和抗体」を作らせる事が、
基本戦略になる。
オックスフォードワクチン
(アストラゼネカ:アデノウイルスベクターワクチン)の臨床試験データで、
ワクチンを打った人達が、
どれだけコロナのSタンパクにくっつく抗体をつくるか?を調べた。
1回目摂取、2回目摂取(ブースター)、回復者血清(コロナに罹って回復した人)のSタンパクに対する中和抗体の量をグラフ化してみると、
ワクチン接種をするとコロナに罹って回復した人と同じくらい「中和抗体」を作れる事が分かる。
自然感染・ワクチンともにT細胞免疫を誘導する
各社のワクチンは、「中和抗体」だけではなく、
「T細胞免疫」を誘導するということも分かっている。
自然にコロナ感染して回復した場合もT細胞免疫が誘導される。
ただし、「T細胞免疫」の場合は、まだ「抗体」よりも測定がしにくいので、
T細胞免疫に期待されている↓⑴⑵は、まだ不明である。
⑴長期的な効果があるのか?
⑵重症化の抑制効果があるのか?
T細胞はどうやってコロナを認識するのか?
例えば、「肺胞上皮細胞」にコロナが感染(コロナのSタンパクがくっついて)して、
コロナのゲノムを細胞の中に入れ込んで複製していってウイルスがどんどん増える。
そうすると細胞が死ぬ。多にして自ら死ぬ。
なぜ自ら死ぬかというと、免疫細胞(樹状細胞)に食べてもらう為に死ぬ。
免疫細胞が食べると、「外来の病原体がいる」事が分かる。
上述のとおり、「自然免疫細胞」というのはそういう事ができる。
免疫細胞は、食べたSタンパクを消化してバラバラにする。
これを「抗原(もともとはコロナの一部/ペプチド抗原)」と呼ぶ。
そして、自然免疫細胞(樹状細胞)は、バラバラになった抗原を
「抗原提示用のタンパク(MHC)」の上に乗っけて、細胞の表面に出す。
そこへ「T細胞」(コロナのSタンパクを認識できる)がやって来て、
自然免疫細胞の表面に出された「ペプチド抗原(もともとコロナの一部)」に
反応を開始する。
「抗体」がウイルスを認識する仕方と、
「T細胞」がウイルスを認識する仕方はちょっと違う。
「T細胞」「抗体」は
ウイルスのSタンパクの別の部位を認識する
「抗体」はSタンパクの表面に結合する。
「T細胞」はSタンパクの内部を認識する。
つまり、「T細胞」は「抗体」の見れないところを見ているようだ。
スパイクタンパク(Sタンパク)はコロナの肝
コロナは、「Sタンパク」を使って感染するので、彼らの「肝」であるが、
一方で、彼らの「アキレス腱」でもある。
ここに簡単に「中和抗体」を作られてしまうからだ。
しかし、コロナは「Sタンパクの表面」を簡単に変える事ができる。
簡単に「抗体」に「Sタンパクの表面」にくっつく事ができるが、
「Sタンパクの表面」は簡単に形を変える事ができる。
※「T細胞」は、「Sタンパクの内部」を認識するので、
免疫学者としては希望が持てるところである。
コロナウイルスに対する血中の「抗体」は
1年くらいで減弱してくる
・SARSへの抗体は1年で半分くらい
・感冒のコロナウイルスへの抗体も1年で半分以下
(これが風邪に何度も罹る理由なんじゃないかという事)
新型コロナウイルスの場合はどうか?
・コロナのSタンパクに対する「抗体(IgG)」はゆっくり減っていき、
半減期が140日(4-5ヶ月)。
・一方、Sタンパクを認識して「抗体」を作ってくれる「メモリーB細胞」は
感染が治癒した後、逆にちょっと増えてその後ずっと維持されて
少なくとも8ヶ月は維持される。
「メモリーB細胞」というのは、もう一度同じウイルスが来ると
直ぐに同じ抗体を作れるはずなので、
大変希望の持てる結果になる。
・「T細胞」はどうかというと、
「コロナ得意的CD8 T細胞(キラーT細胞)」は125日(約 4ヶ月)で半減する。
「コロナ得意的CD4 T細胞(ヘルパーT細胞)」は94日(約3ヶ月)で半減する。
※しかしT細胞というのは非常に効率の良いシステムなので、
本当に少しいるだけで(10~100個いれば)彼らは増えるので
かなり大きな反応を起こす事ができる。
ただ彼らは意外に早く減るという事がわかっている。
よって、まとめると
新型コロナの免疫の記憶は、「メモリーB細胞」が維持されるので、
まったく同じウイルスについては、免疫の記憶は「1年以上持続する」
と考えて良いと思われる。
ーーー
****文字起こし〜今日はここまで*** 前半約30分 (29:55)まで