志賀櫻さんはこう言った。
志賀さんのベストセラー
『タックス・ヘイブンー逃げてゆく税金』のあとがきに綴られた
租税法専門の法学者・青山学院大学学長・三木義一氏の言葉にあるように、
志賀さんは、世界随一の国際租税のスペシャリストであり、
世界の誰よりもタックスヘイブンに肉迫した人物なのだ。
「正確な知識と豊富な実体験をもって、
タックスヘイブンの実像を語れる人は、
世界中探してもあなた(志賀櫻)の他に誰もいない。
マネーに心を奪われた者達と戦うためには、
市民に事実を知らせることから始めるしかない。」(三木義一)
志賀さんは、昨年12月に亡くなられてしまった。
かくも大切な人を世界は失ってしまった、ということだ。
マスコミの報道がほとんど無いのはどういうことか。
1991年、志賀さんは、第1次湾岸戦争のときに、
ロンドン大使館から出向し、イラク=クウェート国境で、
劣化ウラン弾による放射性物質を浴びて、毎年の検査をしていたというが、
日本の闇を白日の下に晒そうとしていた石井紘基が暗殺されたのだ。
各国の諜報機関さえ見え隠れする
タックスヘイブンの世界規模の闇に先陣を切って迫った男に
魑魅魍魎の影が付き纏っていなかったとは思えない・・
志賀さんがバッサリと断言した
「イギリスが一番悪い!」とは、
どういう意味か?
「税は文明の対価である」と言われるが、
誠実な納税者が、タックスヘイブンによって、
余分な税負担を強いられるのみならず、
犯罪やテロや金融危機の被害者になっている。
タックスヘイブンは、文明に災厄をもたらしているのだ。
そのタックスヘイブンというと、
個人資産家、多国籍企業、犯罪者、
金融機関、国際会計事務所などが暗躍し、
公共政策に役立てられるべきはずの税を
「ヤシの木の繁る島」の秘密のベールに隠し、
もう、その先はどうなっているか、すっかり解らなくなる~
そいういイメージが強いが、
最も重要な役割を果たしているのが、
先進国であり、
そのチャンピオン級が、
イギリスのシティとアメリカのマンハッタンであるという。
そして、実は、イギリスの「シティ・オブ・ロンドン」こそが、
世界最大のタックスヘイブンであり、
周辺にマン島、ジャージー、ガーンジーという
王室領のタックス・ヘイブンを抱え込んで
金融覇権を握っているのである。
シティの競争力の源泉は3つある。
①アジアとアメリカの中間にあるという地理的優位性
②金融ビジネスの標準語である英語を母語とすること
③シティにつらなるタックスヘイヴン群のグローバルネットワーク
そして、
シティは、英国王室と対等の政治的権利をもち、
王室の財政を支援する代償として強い自治権を持っている。
そもそもイギリスの中央銀行はシティの豪商が設立したものが
国営化されたものであり、
イギリスの議会政治制度はシティを模して作られたもの。
通常、都市は国王から下される許可状によって設立されるが、
シティには許可状はないのである。
よって、英国女王でさえ武器を置き立ち入るには市長の許可が要る。
シティには、グローバル資本主義と中世のコミューンの合体、
具体的には、オックスブリッジのエリートのネットワークを
表すかのようなこの街を象徴する鷲と獅子が合体した伝説の動物、
グリフォン像が配されている。(*ニコラス・シャクソン『タックスヘイブンの闇』)
イギリスは国内にシティを抱え込み、
ダントツの資産をもっている女王陛下の属領や海外領土など
世界中に広がるタックスヘイヴンの中心となることで、
グローバルな金融ビジネスを支配している。
シティの権限を国家が奪うことは叶わず、
シティの権益はイギリスの国益としている。
タックスヘイブンはイギリスの国策なのだ。
イギリスという国は、
国家の中にもう一つの国家を抱えている。
富裕餓鬼の女王陛下は、
胎内にさらに猛烈な餓鬼を孕んでいるのである。
このイギリスのあり方こそは、
いわゆる「アングロサクソン型の資本主義」の骨頂であり、
短期にいかに税金を払わず、とことん大金を儲けるか、
実物経済に全く関心がなく、あらゆる金融技術を駆使し、
ひたすらマネーゲームに暴走する新自由主義の母体だ。
つまり、「強欲 Greed そのもの」であり、
そもそも資本主義とは、金があればあるほど嬉しい、
豊かになりたいという欲望。
その欲望に駆られて行う富の収奪。
「人間のアニマルスピリッツですね。」志賀櫻さんは言う。
「人間のアニマルスピリッツ」・・
イメージとしては、
こういうこと↓では ないだろうか?


ルイス・キャロルの
『不思議の国のアリス』の続編『鏡の国のアリス』の中で
「赤の女王」はこう言った。
"It takes all the running you can do, to keep in the same place."
「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」
この女王の台詞から、
アメリカの進化生物学者・リー・ヴァン・ヴェーレンが、
生き残るためには常に進化し続けることが必要であり、
立ち止まるものは絶滅するという説を
『赤の女王仮説』と名付けて提唱した。
生物も、国家間の軍拡競争と同じように、
より有効な攻撃方法を身に付けることで、
多くの資源を獲得し、生存競争に勝ち残る。
捕食者と被食者の間の軍拡競走をしている、というのだ。
いかにも、世界各地を植民地化し繁栄を極めた大英帝国を象徴する
ヴィクトリア女王に良く似た、赤の女王の言葉らしく、
元イギリスの属領アメリカ人学者の言説らしい。
福澤諭吉は、
「イギリス人が隣国を圧制しているのが羨ましくてたまらない。
そのイギリス人をいつか奴隷のように
圧制してやりたいという獣心を抑えられない。」と言い、
日本は大英帝国の帝国主義を模倣して中国大陸の覇権を延ばした。
これでは、いかにもアニマルスピリッツだ。
しかし、アジアはちがう。アジアは目覚めたはずだ。
7世紀、"中国の華厳思想" と "イスラムのタウヒード"という
「近代思想」の礎が、アジアの東西で同時期に生まれ共振共鳴した。
共通する「多即一」という平和思想だ。
近代文明は、ヨーロッパ文明の源・ギリシャで生まれたのではなく、
ヨーロッパはイスラムに学び、日本は中国に学んだのである。
ヨーロッパの嫌イスラム、日本の嫌中国の感情は、
恩義ある者への深いコンプレックスから来るものだ。
現在の欧米仲春主義が歴史を偽っているのである。
(*「姿を見せない支配者が『嫌イスラム』を演出、世界を計画的にカオス化している」
東京大学名誉教授・板垣雄三先生講義より)
南方熊楠、早田文蔵、宮沢賢治、マイケルジャクソンが持っていた
立体的な曼荼羅のようなヴィジョンも
「どんなものでも自分だけで存在しているものはないし、
どんなものも他との関わり合いの中でしか存在しない」という
それぞれの分野から、いにしえの教えに通底する思想に至った。
日本は、どうなっているのか?
志賀櫻さんが、日本の暗部に切り込む。
志賀櫻・著『タックス・イーター-消えていく税金』(岩波新書)
このお話は、
つづく・・・