死刑台のエレベーター――
ジャンヌ・モロー演じるフロランス・カララ夫人が、
約束の時間に現れない不倫相手の恋人・ジュリアンを探して
夜のパリの街を彷徨う。
完全犯罪を企て夫を殺害して戻ってくるはずの恋人ジュリアン。
不安に駆られ待ち合わせたカフェを出ると、
夕立の雷鳴が轟く。
彼女のハイヒールの足取りは、薄氷を踏む狐のようだ。
不安と孤独、焦燥感を掻き立てるような
マイケル・ディヴィスのミュート・トランペット。
ジャンヌ・モローのカララ夫人の
美しく傲慢な、そして、脆く壊れそうな演技も素晴らしいが、
マイルスがフィルムのラッシュを見ながら
即興で演奏し録音したときの映像が残されている。
こちらも恐ろしくも美しい。
なにもかも悪魔的に完璧だ。
闇から、映写機の光と、
マイルスの目だけが光る。
まばたき一つしないマイルスの眼差しは、
死刑台の綱をゆるゆると降ろす厳粛なる処刑人のようだ。
また、即興の旋律は、闇の魔王が紡ぎだす
死刑台へ向かう恋人たちの危うく暗い道のようでもある。
驚異的な眼差し。驚異的な音だ。