伊勢崎 賢治
東京外語大教授。NGO・国際連合職員として
世界各地の紛争現地での紛争処理、
武装解除などに当たった実務家。
東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンなどの
紛争解決に携わった。
911のテロ事件は、
アルカイダによるものとし、
アメリカ・ブッシュ政権は、報復戦争として、
テロとの戦争を始めた。
アルカイダは、国際テロ組織で
世界中に存在する。
ではアルカイダとどう戦うのか?
アメリカは、アルカイダの創始者・オサマビンラディンを
ターゲットとした。
しかし、アルカイダのオサマビンラディンの一派を匿ったのが、
アフガニスタンのタリバン政権である。
アメリカは、テロリストを匿ったタリバンのアフガニスタンを攻撃を開始する。
そもそもタリバンとは、
「覚醒」という意味である。
アフガニスタンは、多民族国家で、
その歴史のほとんどが、多数の軍閥の内戦の歴史であった。
タリバンは、その「世直し運動」として登場したのである。
タリバンは、バシュトゥーン族のイスラム神学生たちによって組織され、
軍閥の内戦に虐げられた一般民衆の救済を旨とした。
かつて、米ソ冷戦時代、
ソ連がアフガンに侵攻してきたとき、
アフガンを攻めてきた時にアルカイダは、
アメリカのCIA、石油王国サウジアラビアと共に、
同じイスラムの同じスンニ派としてタリバンを支援し、
ソ連に勝利した。ソ連は後に崩壊する。
タリバンにとってアルカイダは同朋だったのだ。
アルカイダは、ウサマビンラディンによって作られた。
ウサマビンラディンは、
サウジ出身の裕福な財閥ビンラディン一族のひとりである。
ビンラディン一族は、欧米富豪の如く享楽的な暮らしをするセレブであるが、
ウサマは、一族の中の変わり種で、非常に真面目なイスラム教徒であった。
イスラム教の思想に則り、アラブマネーをアフガンの人道支援に投じた。
当初は、非武装の人道家であったのだ。
しかし、後に武装する。
そして、アルカイダを作る。
質素な暮らしをし、真面目なイスラム教徒、
困窮する人々を救う人道家が、
なぜテロリストになっていくのか?
日本国内でも、約20年前にテロが行われ
国中を震撼させた。
オウム真理教の一連の事件である。
オウム真理教は、裕福な家庭に育った、
高学歴の若者たちであった。
テロリストの作りにくい社会を作るには、
テロを取り締まる法律を作るなど、
取り締まりを強化することは重要である。
しかし、それよりも、より根本的な問題、
何が彼らをテロに駆り立てるのか?について考えていくことが、
国内問題と世界が抱えるテロリストとの闘いに通じる。
テロとの戦争とは、非対称戦争。
対象戦争とは、国家と国家、軍事と軍事の戦い。
非対称戦争とは、戦略または戦術が大幅に異なる戦争。
ゲリラ民兵と戦うのである。
毛沢東は、「ゲリラは、民衆の海を泳ぐ魚である。」と言ったように、
民衆とゲリラの見分けが付かない。
これがテロリストとの戦いの困難さの所以である。
民衆を殺すことは国際法で許されないからだ。
(実際にはアメリカの空爆は、一般民衆を大量殺害している。)
アメリカは、
2001年から現在まで、アメリカ建国以来、最長の戦争を続けている。
なぜならば、勝てないからである。
アメリカは、民意的にも経済的にも、この戦争に疲弊している。
テロとの戦いは、軍事力は有効ではなく、
人心掌握が必要であるこということを学ぶ。
そして、 COIN(Counter Insurgency Operation)という
新たなドクトリンに方針転換していった。
アメリカの民主主義を根付かせるために、
まず軍閥の武装解除をさせ、
選挙によって傀儡政権を作る方針を打ち立てるのもそのひとつである。
しかし、その内政干渉は、
アメリカでは上手くできない。
唯一、資源が目的でもなく、
武装もしていない国として信頼され、
交渉できる国は、憲法9条を持つ日本である。
アメリカに原爆を落とされ、焦土と化した国が、
経済成長を遂げた国。また、平和国家であるがゆえに尊敬され、
愛されている。
平和国家というイメージは、
戦後日本が築き上げてきた貴重なブランドである。
9条という特異な憲法をもつ国にしかできない、
武力を用いない、テロとの闘い(戦いにあらず)があるはずである。
安倍首相は、
2015年の中東訪問で、
「平和国家日本」というブランドを水の泡にしてしまった。
安倍首相は、
来年夏の参院選後に
改憲に着手すると発表した。
安倍が思い描くのは、
セキュリティ・ダイアモンド。
戦前レジウムに取り憑かれた愚かな中国包囲作戦である。
中国は、すでにパキスタン・ルートを通じてアフリカ大陸、
スリランカに軍事拠点を持ちインドを抑えている。
中国は、すでにアメリカに匹敵する大国なのだ。
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