遅ればせに、あの『Million Dollar Baby』(2004年)を観た。
同じく、ヒラリー・スワンク主演の『Boys Don't Cry』(1999年)と共に、なんとなく避けてきた作品だ。
たぶん恐ろしかったのだ。
自分の奥底にある 古傷の血だまり、
その傷口が開いて 血が噴き出すのを恐れるような感覚だ。
なぜそんなことを感じたのかは、うまく説明はつかない。
しかし、
ここ数日で、この2本を、ついに観た。
ふと、馴染みの歯科医の先生の冗談とも本気ともつかない、
ある話を思い出した。
ふだんは、日本国中どこでも改造チャリで旅をする元気な先生だが、最近、肺気腫で入院したという。
「"疲れ"や"老い"や"病気"の原因は、体の内部の深~い所に溜まっている汚れた血である。」と言う説を、入院先の医院長は古くからの友人で、彼と白熱ディスカッションしたらしい。マジでこの説を研究して、学会に発表するつもりだと言う。
この話、、
東洋医学でいう「淤血(おけつ)」というヤツじゃなかろうか?
「ふる血」とか「汚れた血」と言われるもの。
感覚的には、解る気がするので、
「必要なら、被験者になりましょうか♡」と言っておいた。
「なら、まず、岩盤浴に行って、とにかく身体を温めて!」とのことだった。
しかし、私には、
『Million Dollar Baby』と『Boys Don't Cry』が、
身体の深い所に溜まった汚れた血へのアプローチには、先に効いたような。
これらの映画は、私には、深部の「淤血」を排出させる効果があったようだ。
傷みをもって傷みを制す。そんな感じ。
私には強烈な薬草のような映画となった。
ところで、
スコットランドは
英国より独立せず!でしたね。
http://www.theguardian.com/politics/video/2014/sep/17/scottish-referendum-explained-for-non-brits-video
(↑非英国人のための 早解りビデオ)
米英の著名人たちも、スコットランド独立問題に関して、
この数か月、賛成・反対の意見を活発に表明していましたが、
『Million Dollar Baby』の監督のCイーストウッドも、
スコットランド、アイルランドの血筋をもつとのこと。
この映画の根底にも、ケルトの血が、脈打っている。
Cイーストウッドが演じるフランキー・ダンは、
LAでうらぶれたボクシングジムを経営する気難しい不器用な老年のトレーナーだが、滅び行く言語ゲール語で、イエーツを愛読している。
アイルランド人イエーツは、遥か昔のケルト世界を旅する魂をもつ詩人だ。
ケルトの古い神話や伝説を研究し、神秘主義思想に傾倒していた。
アメリカは、プロテスタント(新福音主義)が政治と深く関わり、パワーを持つが、
アイルランド移民家系のフランキーの宗教は、カソリックである。
フランキーは、毎夜、疎遠になっている娘の無事を神に祈り、
毎日のようにカソリック教会のミサに通う。
しかし、根本的に、宗教的疑問を払拭できず、毎度、神父に基本的な疑問を投げかける"説教クレーマー"のような存在で、神父に煙たがられている。
フランキーは、本質的にはクリスチャンとは言えず、彼の魂はイエーツが描き出すような原始宗教が息づく幻想的なケルト世界を浮遊することを好んでいるのだ。
アイルランド移民は、祖国の飢饉などに押し出され、
アメリカ辺境地域に流れ着き、多くは、警察官、消防士、軍人など、危険に晒される職業を主とした。アイルランド人の血気盛んな気質ともマッチしたという。
フランキー・ダンは、ボクシングの世界に身を置く、
伝説の名カットマン(Cut man)だ。
「カットマン(Cut man)」とは、
ボクシングなどの格闘技で選手の腫れ、鼻血や裂傷などのカットした傷をセコンドで、インターバル中にケアするプロフェッショナルのことなのだそうだ。
傷から流れる血は、
ボクサーの視野を奪い大きなハンディを負わせる。
1分間という短い時間でいかに止血して傷が広がらないようにするか。カットマンの技術が試合の結果を左右することすらあるのだ。
ある日、彼の元に、ボクサーを夢見る"生まれながらの貧乏人(trash)"マギー・フィッツジェラルドが闖入してくる。
彼女は、中西部 ミズーリ州、オザーク高原の出身だ。
住人の大半はスコットランド・アイルランド系の子孫である。
マギーは、フィッツジェラルドという姓から察すると、ノルマン系アイルランドだ。
トレイラー・ハウスを塒にする崩壊家庭で育ち、親兄弟は自堕落に人生を放棄している。マギーは、13で故郷を出て、LAでウエイトレスをしながら、客の食べ残しを食べ、殺風景な部屋に暮し、小銭をコツコツと貯めて、憧れのトレーナー、フランキーに指導を頼みこむのだ。
「女はお断り」というフランキーも、練習熱心で、頑固なまでにボクシングへの情熱をもつマギーに、根負けし、期限付きで彼女のトレーナーになることを引き受ける。やがて、フランキーのボクシングをたたきこまれ、マギーは、天性の才能を開花させていく。次々に好ゲームの依頼が来て、連続KO勝ち。無敵のチームとなる。
ある日、英国チャンピオンからのオファーが舞い込む。
フランキーは、そのオファーを一蹴する。
"マギーはブリティッシュではないから勝ってもチャンピオンにはなれない"と言うのが理由であった。しかし、マギーとフランキーをずっと見守り続けていた元ボクサー、スクラップは、ボクサーの本質を知っている。かつてフランキーの制止を無視して片目を失明していたが、慙愧の念はない。ボクサーは挑戦して力を尽くせば本望なのだ。彼の労によって、ついに、フランキーは、英国チャンピオンとの試合を受けることを決意する。マギーとフランキーは共にアメリカを遠く離れ、英国へと旅立つ。
ビッグゲームのリングに立つマギーへの贐に、フランクは、絹のリングコートを贈った。アイルランドカラーのグリーン、背中には「Mo cuishle(モ・クシュラ)」とゲール語の謎の言葉が刺繍されている。その意味を問うても、フランキーは、誤魔化して答えない。
圧勝。その日から、マギーは「モ・クシュラ」と呼ばれるようになる。
モ・クシュラは、負けなしのクールな人気ボクサーになっていった。
モ・クシュラ!モ・クシュラ!モ・クシュラ!
ヨーロッパ中のリングを駆け巡り、観衆を沸かせた。
どこにでも、アイルランド人はいるのだ。
フランキーが、ボクサーとしてマギーに与えた鉄則は、
Tough Ain't Enough!
ファイトすることよりも、「自分の身を守れ」ということ、
そして「金が入ったら家を買え」ということ。
長いボクシング人生の蹉跌から学んでフランキーが言えること。
マギーは、貯めたリングマネーで、自分の家ではなく、母親に家を買った。
"君は、孝行娘だ" フランキーと共に久しぶりの故郷を訪れる。
しかし、喜ぶ家族の顔はなかった。母親にも兄弟にもマギーの心尽くしは届かない。「家を持つと生活保護が受けられないじゃないか!それより、金をくれ」と。
彼女には、家族と呼べるものはいないのだということを思い知らされる。
フランキー以外には。
そして、ついに、その日がやって来る。
夢にまで見たウエルター級チャンピオンシップの日。
人を殺しかねない汚いファイトで有名な、
凶暴なチャンピオンが相手である。"青い熊"と異名をとるビリーだ。
マギーは、何度も反則技を受けながら互角に戦い、
ついに決定的なダメージを与え優位に立った。そのラウンドの終了ゴング。
リングサイドに帰ろうとする瞬間、"青い熊"の反則の拳が
マギーの頭部に強烈な一撃を放った!
マギーは、頭から倒れこみ、リングサイドの椅子の角に・・。
彼女の頸椎はクラッシュした・・。
全身麻痺。
気管への挿管人工呼吸。
片脚、壊死。切断。
「ボス、頼みがあるの」
「 I got it all. Don't let 'em keep taking it away from me.
Don't let me lie here 'till I can't hear those people chanting no more.
私は満足よ。全てを得たわ。それを奪わせないでほしいの。
あの人々の歓声が聞こえなくなるまで、
私をここに寝かせておかないで。」
フランキーは、最後まで、
マギーのカットマン(Cutman)でした。
そして、二人は互いの「Mo cuishle モ・クシュラ」。
Million Dollar Baby (←クリック Wiki)
(4:00~)
Frankie Dunn:
All right.
I'm gonna disconnect your air machine,
then you're gonna go to sleep.
Then I'll give you a shot, and you'll... stay asleep.
Mo cuishle・・ means "My darling, my blood."
フランキー・ダン:
大丈夫だ。
俺が君の人工呼吸器をはずすよ。
だから眠るんだ。
それから 注射をするよ。 君は・・眠り続けるんだ。
モ・クシュラ・・の意味は、「君はわが愛しい人、わが血」だ。
国民的エンターティナー、コメディアンで歌手の
ハリーシーカムが歌う『Ma Cushla (Mo chuisle) 』
ウェールズ人のベルカント・テノール(美しい声のテノール)。
「Mo chuisle」は、直訳すると、
ゲール語で「私の心臓の鼓動」。