同じプロンプトを5回ずつ投げると、`claude-sonnet-5` は平均15.8秒、`claude-opus-4-8` は平均32.6秒で返ってきた。出力の文字数は約2倍、コストは約8.8倍。

これを見て、ちょっと黙った。

「Opusのほうが賢いんでしょ?」という話ではない。道具箱に例えるなら、筆と赤ペンと、めったに開けない引き出しの奥の一本、くらいの違いがある。

こんばんは、せおっちです。楽天ECの現場を見ながら、AIエージェントや業務改善ツールを作っている。自社システムは約260社、Chrome拡張は約700ユーザーに使ってもらっていて、記事もツールもこの手のモデル選定をしながら毎日量産している。今日はその選定を、実測ベースで整理してみる。

元になったのは、Zennに上がっていた実測記事(https://zenn.dev/numarn/articles/claude-model-tier-switch-handson)。ターミナルから1回だけ指示を投げる `claude -p` で、同じプロンプトを `claude-sonnet-5` と `claude-opus-4-8` に5回ずつ投げ、応答時間・出力量・コストを比べたもの。体感ではなく実測、というのがこの記事の値打ちだ。

| 指標 | `claude-sonnet-5` | `claude-opus-4-8` | 倍率 ||---|---:|---:|---:|| 応答時間(5回平均) | 15.8秒 | 32.6秒 | 約2.1倍 || 出力文字数(5回平均) | 1,470字 | 2,940字 | 約2.0倍 || コスト(5回平均) | $0.0049 | $0.043 | 約8.8倍 |

条件は、同一プロンプト1本を元記事の環境で5回ずつ実行した平均値。モデル名も価格もAnthropic側で今後変わる前提で見てほしい。

ここで一つ注意しておきたい。コストの8.8倍という数字は、単価だけの差ではない。Opusは出力そのものが約2倍長いので、その分がそのままコストに乗っている。同じ文字数を書かせた場合の単価差は、もう少し縮む数字になるはずだ。

毎日使う側からすると、モデルの良し悪しは「賢いかどうか」より泥臭いところで決まる。待つ時間。読む量。財布から出ていく金額。この3つだ。

Sonnetは筆、Opusは赤ペン

実際に私が回している工程はこうなる。

| 工程 | モデル | 理由 ||---|---|---|| ネタ出し・構成案 | Sonnet | 量とスピードが要る || 初稿 | Sonnet | まず粘土として形にする || 辛口レビュー | Opus | 弱点の指摘が厚い || リライト・整形 | Sonnet | 指示通りに直すには十分 || 最終判断 | 人間 | 責任はモデルに渡さない |

コマンドにすると、これだけの違いになる。

```claude -p "この記事の弱点を指摘して" --model claude-opus-4-8claude -p "この指摘を踏まえてリライトして"```

`--model` を付けるかどうかだけで、レビュー役と実務役を切り替えられる。普段はSonnetを既定にしておいて、Opusを使いたい工程だけ明示すればいい。

赤ペン大僧正。 Opusは文章に説教するのがうまい。ただし毎回説教されると仕事が進まないので、レビューだけに登板させる。

待ち時間関税は、人が画面の前にいるときだけかかる

待ち時間関税。 16.8秒(32.6秒-15.8秒)の差は、1回なら誤差でも、回数が増えると効いてくる。

ただしこれは「人間が画面の前で往復しているとき」に限った話だ。`claude -p` の本領はそこじゃない。cronやバッチに組み込んで無人で回せるのが `claude -p` の価値で、夜間バッチで10往復させても、そこに座って待つ人間はいない。待ち時間関税がかかるのは、リアルタイムに人が画面を見ながらやり取りする工程だけだ。

その前提で、私が対話しながら回している工程に当てはめてみる。1記事あたり10往復というのは実測ではなく、自分の作業感覚に基づく想定値だが、それで計算すると16.8秒×10往復で約3分。これを1日3本、30日続けた場合を途中で丸めずに一気に計算すると、16.8秒×10往復×3本×30日=15,120秒、約252分、つまり約4時間になる。

対話しながら書く工程にOpusを常用すると、月にこれくらいの待ち時間が積み上がる、という参考値。夜間バッチや `claude -p` を組み込んだ自動処理には、この関税はかからない。

出力そうめん流しは、レビューでは助かる

Opusの出力は平均で約2倍長い。出力そうめん流し。 長く流れてくる文章は、レビューでは助かる。「ここが弱い」だけでなく、なぜ弱いか、どの読者が離れるかまで書いてくれる。

ただしタイトル案を10個だけ欲しいときに同じ厚みで返ってくると、読む側の仕事が増える。長さは工程によって価値にも負担にもなる、というだけの話だ。

コストは金額そのものより、どこで使うかで決まる

$0.043と$0.0049の差を、1ドル150円換算で見ると、1回あたり約6円と約1円弱。差は約5円。

Opusをレビュー工程だけに使うなら、1日3本、月90回使っても差額は500円程度で収まる。全工程をOpusに置き換えた場合とは、まるで違う数字になる。

高いモデルを使うこと自体が悪いわけではない。安い仕事にまで高いモデルを充てるのがもったいない、というだけだ。整形やタイトル案の大量出しにOpusを使うのは、普段着のためにオーダースーツを仕立てるようなものだ。

オプス代がかさむと、家計を握る相方に「また課金して、似たような文章を増やしてない?」と真顔で聞かれる。Opusより効く追及だが、幸い無料だ。

自分の工程に当てはめるなら、この3つを聞く

その工程は「量を出す」か「厚く見る」か → 前者はSonnet、後者はOpus

待っているのは人間か、無人のバッチか → 人間ならSonnet優先、バッチなら気にしなくていい

外したときの損失は大きいか → 大きいならOpusでダブルチェックする

`claude -p` はコマンドである以上、運用にそのまま組み込める

一度 `--model` を決めてコマンド化すれば、毎朝の記事生成フローにそのまま乗る。1回きりのチャットと違って、`claude -p` は工程ごとにモデルを固定して、無人で走らせられるのが強みだ。書く役はSonnet、見る役はOpus、という役割分担を、コマンドの中に固定してしまえばいい。

最後に

この記事の結論はベンチマーク勝負ではない。`claude-sonnet-5` と `claude-opus-4-8` は、実測すると速さも量も値段も別物で、だから工程で使い分ける、というだけだ。

冒頭で黙った私が黙っていたのは、結局この一点だった。「賢さ」で選んでいたつもりが、実は毎回違う工具に持ち替えていただけだった。

筆はSonnet、赤ペンはOpus。そしてもう一つ、めったに動かさない御神体がある。本殿の奥にしまっておいて、掃除や賽銭箱の整理までは頼まない。それだけの話だ。

価格やモデル名は変わっていく。使う前に、公式の最新情報だけは確認してほしい。