検索窓に「チャットGPT 画像生成」と打ち込んだ人が、生成ボタンの下に見る文字列は「GPT Image 2」。聞いたこともない名前。しかもその下に小さく「OpenAI公式サービスではありません」の注記。普通なら離脱案件です。
でもこれ、私はむしろ唸りました。Zennに上がっていた実装記事(https://zenn.dev/mict/articles/7bb3bc1675cb41 )を読んでいて、こんな正直な作りのLPは久しぶりに見た、と。
タイトルと導入文は検索者が打った言葉「チャットGPT 画像生成」のまま。でも生成欄では、裏で実際に呼び出しているモデル名「GPT Image 2」と解像度、必要クレジットまで表示し、「OpenAI公式ではない」ときっちり線を引く。検索意図には応える、でも技術の中身は誤魔化さない。この二枚看板を両立させた設計に、私は感心してしまったわけです。
呼び名先物、実体は現物
検索語というのは、確定する前に売買される「先物」みたいなものです。「チャットGPT」で画像を作りたい人は「チャットGPT 画像生成」と打つ。去年なら「ChatGPT DALL-E」だったかもしれない。呼び名は時代の気分で先に動く。
でも生成ボタンを押した瞬間に受け渡されるのは、確定した「現物」です。GPT Image 2はGPT Image 2でしかない。ブランドの看板が何を掲げていようが、現物の中身は変わりません。
この記事の実装は、呼び名先物と実体現物を同じ画面に共存させました。看板だけ本物にして中身を隠す。逆に中身だけ正確にして誰にも見つけてもらえない。今回はどちらでもない。
秘仏御開帳商法、後出しのコストは意外と高い

生成AIツールのLPを何十本と見てきましたが、多くは「チャットGPTで作れます」で釣っておいて、実際に使われているモデルがどれかは規約の奥深く、あるいはどこにも書いていない。ユーザーが課金してから初めて「あれ、これOpenAI公式じゃないの」と気づく。
寺の秘仏御開帳商法と同じ構造です。普段は厨子の奥に隠しておいて、拝観料を払わせた後にようやく本尊の顔を見せる。ありがたみは演出できても、事前に知らされていなかった人からすれば「話が違う」の温床です。
この「話が違う」、後から発生すると地味に高くつきます。月1,980円のツールに気づかず課金され続け、3ヶ月後に解約に気づいて5,940円を無駄にした、くらいなら笑い話。カスタマーサポートへの問い合わせ、返金対応、レビュー欄への低評価まで含めると、事業者側が払うコストは課金額の何倍にも膨らみます。
今回のZenn記事の実装は、御開帳を最初からやっています。生成ボタンの手前で正体を明かしてしまうので、後から「え、そうだったの」が起きようがない。信用って、「隠さなかった」というだけで結構な部分が積み上がるものです。
表口は検索語、帳場は正式名

自分でLPやnote記事を書くとき、あるいはAIツールを紹介する記事を書くときの実践的な教訓はシンプルです。
タイトルと導入は読者の検索語・通称にきっちり合わせる。ここでケチると誰にも読まれません。本文の実装や機能説明に入ったら、実際のモデル名・バージョン・提供元を一度は正確に書く。
これ、私自身のAIエージェント事業でも他人事じゃありません。約260社に自社システムを入れて、Chrome拡張は約700ユーザーが使ってくれていますが、問い合わせの言葉と裏側の実装は、いつもズレます。「ChatGPTみたいなやつ入れてほしい」と言われて、中身はGeminiだったり、Claudeだったりする。
楽天のコンサル現場でも似たことが起きます。店舗さんが「クーポン」「39ショップ」と口にするとき、それは運用上の通称であって、規約に定められた正式な適用条件や表示義務とは微妙にズレていることがある。通称のまま突き進むと、後で「思っていたのと違う」が発生する。だから打ち合わせでは、通称を否定せずに使いながら、実装の話に入る瞬間だけは正式名称と規約条件に一度戻すようにしています。
公開前に自分が使っているチェックは3つだけです。
1. タイトル・導入は検索語で始まっているか2. 本文のどこかに正式名・バージョン・提供元を一度は書いたか3. 非公式・免責の一行を入れたか
3つとも満たせば、表口は客を呼び、帳場では正直な勘定が回ります。
客寄せ看板と帳場勘定は、家計でも同じ

先月、私のカード明細に見慣れない980円の課金が3件並んでいて、我が家の中央銀行総裁(妻)に呼び出しを食らいました。調べたら、去年「ChatGPTの新機能かな」と思って試した謎ツールの継続課金でした。看板は見た通りだったのに、帳場の中身を確認していなかったのは私自身です。
だから記事を書く側に回ったときも、客寄せ看板だけ整えて帳場を隠すことはしない。表は検索語に合わせ、帳場では正式名を明かす。客寄せ看板・帳場勘定、これだけの話です。
散歩しながらこの記事の下書きをChatGPTに向かって喋っていたら、途中で「それ、あなたも同じことやってますよね」と鏡のように返されて、多摩川の土手で一人赤面しました。
検索窓に「チャットGPT 画像生成」と打ち込んだ人が、最後に見るのは自分が探していた言葉ではなく、初めて聞くモデルの名前かもしれない。それでいい。そこで正直に名乗ってくれるサービスの方を、私は信用します。
※AIツールの料金・クレジット消費・提供元の扱いは変更されることがあります。実際に使う際は各サービスの最新の公式情報をご確認ください。