Slackの通知を見て、タブを切り替える。Notionの「後で読む」DBを開く。新規ページを作る。タイトルを入れる。日付を選ぶ。タグをつける。URLを貼る。この一連の動作、気づくと毎日かなりの回数やっています。

私はこれを「タスクの手入力年貢」と呼んでいます。生産性を生まないのに、毎日きっちり納めるやつです。1件30秒でも、1日20件なら10分。1年続けば約60時間。通勤より長い。しかも残るのは、肩こりと「今、何をやっていたんだっけ」という感覚だけです。

そこで作ったのが、ブラウザの右クリックメニューからNotionのタスクDBに情報を送る仕組みです。

右クリックで入る

流れは単純です。

気になるページで右クリックして、「Notionに入れる」を選ぶ。するとページ情報が取得され、必要な項目に整えられて、NotionのDBに登録されます。タイトル、URL、タグ、期限の候補まで、ひとまず入る。手でコピペしていた作業が、かなり減りました。

誤解しないでほしいのですが、Claude Codeが右クリックの瞬間に直接動いているわけではありません。Claude CodeはCLIベースのコーディング支援であって、魔法の黒箱ではありません。実際には、Chrome拡張がページ情報を取り、AIで整形し、最後にNotion APIへ書き込む、という分業です。見た目は一発、裏側はちゃんと配管です。

この手の自動化は、派手ではありません。けれど、毎日触るものほど効きます。1回あたり10秒短縮できるだけでも、1日20件で約3分。1年ならかなりの差になります。10秒は軽く見られがちですが、積み上がると想像以上に重いです。手入力している人だけが、毎日その重さを抱えています。

AIに文章を書かせるより、道具を作らせる

ここで一番言いたいのは、AIに文章を書かせること自体ではありません。AIに「小さな道具」を作らせることです。

AI活用というと、プロンプトを投げて文章や画像を受け取る使い方が目立ちます。もちろんそれも便利です。ですが、私はそちらより、日々の作業を減らす仕組みを作るほうに価値を感じます。

買う側の使い方は、毎回画面を開いて、項目を埋めて、確認して、保存する。作る側の使い方は、右クリックした瞬間に、必要な情報が半分そろっている。

差は地味です。けれど、地味な差が毎日続くと効きます。AIEC路線というのは、AIで記事を量産する話ではなく、AIで自分たちの業務に合う道具を作る話です。自社の面倒に刺さる仕組みを、少しずつ増やしていく。

この仕組みを、私は内輪で「右クリック神託」と呼んでいます。神様が降りてくるわけではない。右クリックメニューが、ただ黙って仕事をしてくれるだけです。ありがたいのは、だいたいそういうものです。

どこで詰まるかを先に決める

非エンジニアでも、最初の一歩は大きくなくていいです。

私が自分で使っている基準は「10回ルール」です。同じ手作業を10回以上繰り返しているなら、自動化候補にする。これだけです。世界の真理ではないですが、自分の運用ではかなり当たります。

やることはシンプルです。

何を毎回見ているかを書き出す

どこで迷うかを洗い出す

どこでコピペが発生しているかを確認する

そのうえで、どこまでを自動化するか決める

たとえばNotionへの登録なら、詰まりやすいのはだいたい同じです。Notion APIトークンの取得、データベースIDの確認、権限設定、整形ルールの決定。ここを先に見える化しておくと、作業が止まりにくくなります。

Claude Codeが使えるなら、設計のたたき台を作らせるのにも向いています。ただし、コードを書く手段はそれだけではありません。MakeやZapierの連携、Notion Web Clipper、スマホの共有機能からの保存など、入口はいくつもあります。まずは「毎回人間がやる前提」を少し崩す。それで十分です。

実務で使うなら、ここは外せない

自動化は便利ですが、雑に触ると普通に事故ります。

最低限、次の3つは押さえたほうがいいです。

本番DBの前にテストDBで試す

トークンは環境変数かパスワードマネージャーで管理する

実装前に公式ドキュメントで最新のAPI仕様、料金、権限を確認する

特に右クリックでページ情報を外部APIに渡す仕組みは、送信先に本文が入る可能性があります。社内情報や個人情報を含むページなら、扱いはかなり慎重にしたほうがいいです。便利さより、先に守るべき線があります。

AIは強いですが、送っていい情報まで勝手に判断してくれるわけではありません。そこを曖昧にすると、後で一番高くつきます。

手入力の時間は、案外ばかにならない

この仕組みを作った理由は、たいそうなものではありません。単純に、毎日やる手入力がしんどかったからです。

1件ずつは小さい。けれど、積み上がると大きい。タスクの登録、メモの整理、URLの保存、ラベル付け。こういう作業は、放っておくと静かに時間を食います。しかも、その時間は「仕事を進めた感じ」があまり残らない。

だからこそ、最初に削る価値があります。10秒短縮できるなら、10秒を積み上げたほうがいい。年単位で見ると、手入力の方がかなり高い買い物になっています。

妻の一言で終わる話でもある

ここで、うちの中央銀行総裁、つまり妻に報告しました。「これでタスク管理がかなり楽になる」と。

返ってきたのは、これでした。

「結局、在庫は切らすんでしょ」

鋭いです。実に鋭い。手入力の年貢を減らしても、商売の現実まで消えるわけではありません。自動化で空いた時間は、次の面倒に使われます。発注、在庫確認、優先順位の見直し。仕事は別の顔で戻ってくる。

自動化は、サボるための道具です。ただし、サボるための道具を作ると、だいたい次の仕事が見えてきます。これが現実です。便利になるほど、別の面倒が見つかる。火を使えるようになったら料理が始まり、料理を覚えたら片付けが始まる。そういうものです。

それでも、手入力の年貢を払わなくてよくなるのは大きい。空いた時間でやるべきことに、ちゃんと時間を使えるからです。たとえば発注。たとえば確認。たとえば、在庫を切らさないための仕組みづくりです。

今日からやるなら

今日からできることは一つだけです。

今週1週間で、同じ手作業を何回やったか数えてみる。10回を超えたら、それを最初の自動化候補にする。

それだけで十分です。最初から完璧な仕組みを作る必要はありません。まずは一つ、毎回やっている面倒を減らす。そこからです。

手入力の時代を終わらせる、というより、手入力に払っていた年貢を少しずつ減らす。そのくらいの感覚で始めるのが、たぶんちょうどいいです。