こんばんは。せおっちです。
最近、いろんなブログが急に同じことを言い出しました。「AIに任せる業務と、自分で判断する業務の線引きをしよう」と。ある人は1ヶ月ChatGPTを仕事で使って『任せること/判断すること』を切り分けた話を書き([出典1](https://note.com/real_ram24/n/n3253874d7fbd))、別の人は『AIを入れる前に9割は決まっている』と言い([出典2](https://note.com/madobe_tech/n/n584f0f281e1a))、さらに別の人は『自動化しない業務を先に台帳に登録しておけ』と提案していました([出典3](https://zenn.dev/miraigent/articles/ai-non-automation-scope-register))。
潮目が変わった、と思いました。みんな「線引き」を語り始めた。
私は8年くらいECをやりながら、AIエージェントを作って約260社に提供しています。自称、5分の作業をサボるために5時間かけて自動化ツールを作る人間です。その私が、この「線引き」の話に一つだけ毒を盛ります。
——順番が、逆なんです。
「AIを入れてから、どこまで任せるか考える」では遅い。火が出てから消火器の場所を探すのと同じです。線引きは、AIを入れる前に終わっていないといけない。今日はその話をします。
「とりあえず全部AIに」が一番やってはいけない設計
まず、一番やりがちで一番危ないパターンから。
新しいツールを入れると、人は欲が出ます。「在庫も価格もクレーム返信も、ぜんぶ自動にできるじゃん」と。気持ちはわかります。私なんて、面倒なことを見ると脳が勝手に自動化を始める病気なので。
でも、ここで「とりあえず全部任せる」をやると、判断の重い業務まで一緒に丸投げされます。在庫補充みたいに間違えても発注し直せばいい業務と、お客さんへの返信みたいに一度ミスると信頼が溶ける業務が、同じ箱に放り込まれる。
『全部自動で回る。ほなAIやないか。』——いや、待ってください。設定も判断基準も人が決めずに丸投げしただけなら、それはAIじゃなくて『単なる暴走するマクロ』とちゃうか。同じ「自動」でも、線を引いてから任せたものと、考えるのをサボって投げたものは、まったくの別物です。
AIは優秀な新人みたいなものです(この例え、もう日本中のAIブログで擦り倒されていますが、事実なので仕方ない)。優秀だからこそ、何も教えずに「全部いい感じにやっといて」と言うと、いい感じに全力で間違えます。
任せる前に決めるべきは「ツール」じゃなく「やらせないこと」
ここで効いてくるのが、3本目のブログが言っていた『自動化しない業務を先に登録する』という発想です。
普通、人は「何を自動化するか」のリストを作ります。でも本当に先に作るべきは、その逆——「何があっても人間が判断する業務」のリストの方です。
私の現場の感覚で言うと、線を引く基準はシンプルです。「間違えたとき、やり直しがきくか」。これだけ。
やり直しがきく(在庫の発注、商品説明の下書き、レビューの分類) → どんどんAIに任せる
やり直しがきかない(返金の可否、クレームへの一次返信、価格の最終決定) → 人が必ず最後に通る
この線引き表を、ツールを契約する前に作る。Zennの記事が「台帳に登録しておけ」と言っていたのは、つまりこういうことです。AIにとっての『十戒』を、先に石板に刻んでおく。「ここから先には入るな」という結界を張ってから、初めてドアを開ける。
順番を間違えると、結界を張る前に魔物を家に上げることになります。
私が物販を1年半放置できた、たった一つの理由
ここで自分の話を一つ。
正直に言うと、私は業務改善にハマりすぎて、自分の物販を1年半くらい放置していた時期があります。経営者として褒められた話ではない(妻からは『あなた今日AIとしか話してないわね』と冷たい目で見られています)。
でも、放置しても店が死ななかった。なぜか。
受注から発送までの「やり直しがきく業務」は全部AIと仕組みに任せていて、なおかつ「在庫を切らす」みたいな失敗が起きても、それは取り返しのつく失敗の側に置いてあったからです。発注をミスっても、頭を下げて再発注すれば店は続く。
逆に言うと、ここで私がもし「クレーム対応も全部AIに任せて放置」していたら、1年半後に戻ってきたとき、店は跡形もなかったと思います。お客さんの信頼は、在庫と違って再発注できない。
『認めたくないものだな、自分の面倒くさがりが過ぎた過ちというものを』——でも放置できたのは、運じゃなく、最初に「やり直しのきく業務だけ任せる」線を引いていたからでした。サボるための自動化にも、サボっちゃいけない一線がある。
「9割は決まっている」の中身は、AIの賢さじゃない
2本目のブログの『AIを入れる前に9割は決まっている』。この言葉、誤解されがちなので補足します。
「9割」の正体は、最新モデルの性能でも、すごいプロンプトでもありません。業務をどこで切るか、という人間側の設計です。
ここを履き違えると、新しいモデルが出るたびに「次こそは全部いけるはず」と乗り換えては、毎回同じ場所で火を出すことになります。ガチャを回し続けて、SSRを引いたはずなのに毎回同じ場所で爆発する。問題はガチャの確率じゃなくて、装備せずに最終ボスに突っ込んでる方なんですよね。
私がAIの理想像をドラえもんだと思っているのは、ここに理由があります。ドラえもんは確かに何でも出してくれる。でも、のび太が道具を雑に使って毎回痛い目に遭うのは、道具のせいじゃない。「いつ・どこまで使うか」を決めるのび太の側の設計が9割だからです。
道具はもう十分賢い。決まっていないのは、いつも人間の側です。
今日からやれる、線引き表の作り方
長くなったので、明日から使える1個に落とします。
紙でもメモアプリでも何でもいいので、自分の業務を縦に並べて、横に1列だけ足してください。見出しは「ミスったら取り返しがつくか? ○か×か」。それだけ。
○がついた業務 → AIに任せる候補。どんどん渡していい
×がついた業務 → 人が最後に必ず目を通す。ここは自動化しても「下書きまで」で止める
ツールの比較表を作るのは、この表ができてからです。順番を守る。これだけで、冒頭の「全部任せて火を出す」事故はほぼ消えます。
機械が苦手とか、AIはまだ怖いとか、いろいろ言い訳は出てくると思います。でも、そんなの関係ねぇ。この表、書くのに5分もかかりません。5分の作業をサボるために5時間自動化する私が言うんだから、この5分だけは惜しまない方がいい。
AIに任せる前に、9割はもう決まっている。そしてその9割は、最新のAIではなく、今あなたの手元にある紙とペンで決まります。
——さて、これだけ偉そうに線引きを語っておいて、私自身は今この記事をAIと壁打ちしながら書いています。最後の判断だけは、ちゃんと人間がやってますよ。多分。
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最終更新:2026年6月
書いた人:せおっち。EC(楽天・Amazon)を自分でやりつつ、AIエージェント/AI業務改善ツールを提供しています。
参考にした記事:
[1ヶ月ChatGPTを仕事で使って「任せること/判断すること」を切り分けた話 (note)](https://note.com/real_ram24/n/n3253874d7fbd)
[AIを入れる前に9割は決まっている (note)](https://note.com/madobe_tech/n/n584f0f281e1a)
[AI導入前に「自動化しない業務」を登録する (Zenn)](https://zenn.dev/miraigent/articles/ai-non-automation-scope-register)