今日、ひとりの職人に引退を勧めた。


私よりもひとまわりも違うベテラン職人、Tさん。


うちの職人の中でも1、2を争う頑固モン。


自分がこうだと思ったら全く人の話を聞かない、聞こうとしない。


ここ1年くらいは更にそれが激しくなって現場でトラブルを起こすこともしばしばあり、正直いって手を焼いていた。


そんなTさんが先日倒れて救急車で運ばれた。


急にめまいがしてそのまま意識を無くしてしまったらしい。


ここ半年ほど前から週1回のペースで大学病院に通って検査してるけど、原因が分からないって聞いていた。


私も病院に駆けつけたんだけど、私が病院についた頃は少し目が虚ろだったけど普通に受け答えしてた。


しばらくして意識がハッキリしてきたら頑固ぶりを発揮して家に帰るの一点張り。


先生も検査の結果、異常か見つからないということでそのまま連れて帰った。


1日休んで、今後について話し合った。


本人はもうケロッとしているのだが、現場で今回の様な事が起きてしまったらと考えると最悪の結果を招いたかもしれない。


それを考えると、もうこれ以上仕事は頼めない。


何よりTさんの体のほうが心配だ。


その旨伝えると、素直に受け入れてくれた。


あの頑固モンのTさんが‥‥


正直、今の時代にまったく順応出来ない昔気質の職人。


でも相当世話になってきたのも事実。


私がまだ駆け出しの頃、失敗したり困った時は本当によくTさんに助けてもらった。


最近は、あまりにも言うこと聞かないもんだから怒鳴ったり、“もう辞めてしまえ”なんて言葉を浴びせたこともあった。


しかしいざ引退するとなると、これまでのいろんな事を思い出して‥‥‥


帰り際にお礼をいって見送ったTさんの背中が凄く小さく見えた。


なんだかわからないけど涙がこぼれそうになった。


でも仕方ない。


そう自分に言い聞かせて見送った。


Tさん、ほんとうにありがとうございました。


いつまでも元気でいてください。


そしていつでも遊びに来てください。


何度も言うけど、本当にありがとう・・・