「「お疲れさまでした」って言われると、ちょっと悔しいですよね。」

報道ステーションの修造さんとのインタビューで、羽生さんはそうおっしゃいました。

 

一般に「お疲れさまでした」には、「=出番はもう終わりです」という意味合いが込められるから、だと思うのですが。

 

でも、本来の意味で、私は羽生さんに「お疲れさまでした」と申し上げたい。

 

・誹謗中傷

・採点のこと

 

どんなに心が疲れたことでしょう。

私は、誹謗中傷についてはよく知りません。敢えてそういう情報には近づかないようにしていました。私自身が、あの毒気に当てられると、精神的に疲弊してしまうからです。

それでも通報要望をいただけば、一応そのツイートを確認してから、通報はしていました。

本当にあのヘイトは、心理学を専門にする方達の研究テーマになりそうだと思うくらい、私には理解出来ないものでした。

1ファンである私があれだけ気分が悪くなるのです。ご本人はどれだけきつかったろうと、やさしい柔らかい心の持ち主である羽生さんにとってどれだけ害があったろうと本当に悲しくなります。

 

一部週刊誌、新聞、の、羽生さんへの人としての敬意を全く欠いた、心ない記事も羽生さんをがっかりさせたり、傷つけたりしたと思います。

 

それでもそれらは、その発信者達を「悪」「軽蔑すべき存在」と断定することが出来ます。

 

 

私は、羽生さんにとって、もっと辛かったのは、ISUやJSFの近年のひどい採点だったのではないかと思います。

なぜならISUやJSFは、幼い頃から羽生さんが「育ててもらった」存在だからです。羽生さんが感謝している存在だからです。いわば親同然に慕っていた相手から、ひどい仕打ちを数年にわたって受け続けたのですから。

 

私は、フィギュアスケートの専門家ではないので、自信を持って言うことは難しいのですが。それでも2015年に羽生さんのファンになって以来、羽生さんをより理解したくて、ルールを勉強し、プロトコルを読み込んで解析したりしてきました。

 

何か変だなと初めて思ったのは、2017年世界選手権。ショートLet’s Go Crazyで4Sコンボが無効とされ、随分厳しいなと思ったとき。フリーの最高傑作Hope&LegacyのPCSで、ジャッジ点に9.00や9.25が散見され、97.08ではあったものの、2015年のSEIMEI98.56より1.5点も低かったとき。

ちなみにPCSの10.00の数は、

2017World Hope&Legacy が12

2015GPF SEIMEI       が24 でした。

採点基準が変わったのか、と思うくらい、渋く感じました。

 

会場は揺れんばかりの大歓声で、そんな様子を人の目から隠したいのかと思われるほど、フジテレビは「2017World Hope&Legacy」の演技をYoutubeからことごとく排除しました。フジテレビが放映した映像だけでなく、世界各国のテレビ局が放映した映像もです。確かに著作権に鑑みれば、放映された映像を録画してYoutubeにアップするのは違法です。でも、そこまで徹底して削除したのは、初めてだったように思います。

ただ、フランステレビ局が独自に挙げた映像には、さすがにタッチしませんでしたね。

そして今回、羽生さんのプロ転向宣言を受けて、Skating  ISUが動画をアップしてくれました。何だか切ない思いで見てしまいました。

 

 

このとき採点が渋かったことは羽生さんも察知したのか、2017-2018オリンピックシーズンが始まる前のインタビューでかなり戦闘的な顔つきで「圧倒的に勝ちたい」と言ってます。自分が勝つためには、圧倒的に他選手を引き離す必要があることを感じたのではないかと思います。

 

採点が渋いどころではなくなったのは、平昌オリンピック以降です。

2019ACIの回転不足判定にはぎょっとして、ISUへの不信がひどくなりました。

ネイサン選手への節操のないGOE加点とPCSのアップがひどくなったのもこの頃からでしょうか。アメリカでの試合や全米選手権でぐわっと上げて、国際大会にその影響を与えるという手法のように見えました。

 

この頃のことについては、以前の記事で紹介した元スケーターのサーシャさんの記述がとても的確だと思います。一部再掲します。

 

彼はソチを制し、誰も考えもしなかったレベルのフィギュアスケートに到達し、2018年には2度目のオリンピック金メダルを獲得しました。そしてその頃、ISUはゆづを止められないこと、何かをしなければならなくなったことに気づいたのでした。

 

しかし、平昌後のルール変更でさえ、彼の世界記録の更新を止めることはできませんでした。彼のスケーティングには弱点がなかったからです。なので、ISUには、ルールをとことん無視するしか選択肢はなかったのです。

 

そして、不可思議な回転不足判定、完璧なエレメントに対する+3や+4のGOE、わずかなミスに対するPCSの抑え、そして彼のライバルに対する甘い判定と寛大な採点が生まれたのです。これらは、非常に効果的でした。不幸なことに、ゆづが完璧主義者だったからです。

 

ゆづにとって、+4GOEは、自分の不完全さを意味しました。バイアス採点に過ぎなかったのに。この数年の採点は、ある意味、精神的な虐待でした。自分のスケーティングに対する信頼を破壊するという意味で。

 

 

本当に平昌以降の4年間は、JSFとISUによる「精神的な虐待」だったと思います。

自分を信じていいのか分からなくなることは絶対あったと思います。

それでも自分を信じることに決めた。

 

しかし、ゆづはゆづでした。彼は、反撃し続けました。技術的な限界に挑戦し続け、非常に複雑で入り組んだプログラムを作り上げました(最も無能な審査員でも「トランジション」に気づくかもしれないという期待を持って)。

 

結果として、彼とライバルとの差はさらに広がっていきました。それは点数には反映されませんでした。ただ、滑るたびに彼だけが獲得することができた新しいファンの数が、それを証明していました。

 

ーー引用終わりーー

 

ISUは、羽生さんだけが美しく遂行できる要素はルールから外すようにルール変更をしました。

単独ジャンプ前のステップ。

そして今回はトランジションも。

 

 

JSFもあからさまな他選手擁護。専門家も首をかしげるスピンノーカン。羽生さんが2019年「全日本選手権には自分の居場所がないのではないかと怖かった」と言うのも当然です。

 

あれは、いじめだったと思います。

最も連盟に貢献してくれている選手に対するいじめ。

 

もちろん、JSFもISUもいじめたとは思っていないでしょう。加害者はほとんどの場合、罪の意識がありませんから。次代を作ろうとするのに必死だったのでしょう。でも羽生さんに対する罪は大きいと私は思います。

 

普通の人間だったら、精神が疲弊して、破壊されそうになって、すぐにも離れようとしたでしょう。

 

羽生さんはがんばりました。よくぞ北京まで。そしてこの2021-2022シーズンが終わるまで辞めずにいてくれたと思います。

本当なら、とっくの昔に引導渡して縁を切っていても、誰も責めなかったと思います。

 

だから、私は言いたいのです。

「お疲れさまでした。そして、これからは、自由に羽ばたいて下さい」

「私たちはどこまでもあなたを応援します」

 

吹き付ける風や、雨、時には強い日の光も痛いかもしれないけれど、それらは羽化したての羽生さんを強くもしました。

これからは、色んな課題や障壁は、4Aと同じく、羽生さんを生き生きとさせるもの、生きていることを実感させてくれるものになることでしょう。そうであることを祈っています。

 

追記:

羽生さんの言葉(抜粋)

記者会見から(2022.07.19)

競技会に対して、評価をもう求めなくなってしまった

(自分はジャンプの技術もふくめ)今が一番うまいと思う

 

有働さんとのインタビューから(2022.07.19)

僕は表現とかスケートの技術と言った面でほぼ満点を2015年には獲ってしまっている。

それから常に常に努力をし続けて、スケートの技術、音の解釈等を勉強して頑張ってきたが、点数はむしろ下がる方が多い。

自分が努力してきたことと乖離している。

それでも、うまくなったな、とか、羽生結弦のスケート違うよね、って思って下さる方々も沢山いらっしゃることも分かって、

僕は、ちゃんと皆さんに見てもらう方が幸せだな、そこに勝ち負けをつける必要はないかなと、思ってしまいました。

 

「みんすぽ」のインタビューから(2022.07.23)

キス&クライで、昔みたいに無邪気に「やったーっ」て、喜べる機会が無くなっているっていうのが正直、あって、

「自分て必要とされてないのかな」って思うことが、正直あって、

「ああ、「もう、羽生結弦、早く引退しろ」って言われてんのかな」みたいなぐらいの時もあって、「辛いなー」って思ったことはもちろん、あったんですけど。