FODで、

羽生結弦独占インタビュー Vol.4 2020/2/10@韓国/ソウル

~四大陸選手権直後の言葉

を観た。

 

覚えておきたいこと、深いこと、心に迫ることを沢山言っているな、と思うのだが、ともすると、羽生さんの声音に聞き惚れて、意味が取れなくなる。

羽生さんがインタビューに答えるときの声は、歌を歌うようでもある。

音程が上がったり、下がったり、休符があったり、突然速くなったり、ゆっくりになったり、ささやくような声になったり、高らかな明るい声になったり、まあ様々で、本当に歌を聴いているような気分になる。

 

これは文字起こしをしないと、意味を把握できずに終わってしまう。と思い、反則かもしれないが、文字起こしをしたので、ここに記録として書くことにする。

 

羽生さんの言葉は、一言一句、書き漏らさないように努めた。

ただ、羽生さんが考えながら話すときによく出る「なんか」は、主旋律に添える修飾音符のようで、聴いていて気持ちがよいのだが、文字にすると、ピアニッシモで素早く言われている時はそれが表現出来ず、本来の意味と違ってしまいそうで、いくつかは削った。

インタビュアーの質問は、画面に出た文字を写した。

 

**************

(入って来てくるくる回る)

インタビュアー(I):表情も全日本後のインタビューとは違ってすっきりされていて一夜明けた今の気持ちは?

YH:なんか、とりあえず、道が見えたっていうのが、大っきいですかね。

なんかその道が、今までの轍の延長線だったかもしれないんですけど、ちょっと一回、一周(身振り)遠回りしたかな、という風にも思うんですけど、でもなんか、やっと、あぁ自分なりの道が見えたなって言う、ナンカすがすがしさみたいなものはありますね。

やっぱり自分らしいフィギュアスケートでいいんだっていう、感じですかね。はい。

 

I:日本では「スーパースラム」の話で持ちきりですが。

YH:「スーパースラム」って初めて聞きました。

 

I:男子では史上初の大記録を打ち立ててお気持ちはいかがですか?

YH:いやあ、なんか、長かったなあ、って思って。

四大陸って、もしかしたらオリンピックよりも先に取るべきものかもしれなかったですし、世界選手権よりも先に取れる物だったのかもしれないんですけど、やっぱりなかなか取れなかったのは何かしらの意味があったんだと思いますし。

まあでも、自分が初めて、シニアの主要国際試合でメダルを取ったのが、やっぱり四大陸選手権っていうのも、また思い入れ深いものがありますし、なんかそこで、最後の最後に、ちゃんと、ソノ、忘れ物じゃないですけど、なんかちゃんと取り切れたのはよかったなっていう、なんか、何かしらの運命をちょっと感じてますね。

 

I:これから世界選手権に向けて一番フォーカスしたいことは?

YH:とにかく、ショートフリー揃えることっていうのが一番ですかね。

とにかく、もう、両方ともいい演技をしたいっていう気持ちが、一番多いです。

 

I:ネイサン・チェン選手との戦いに注目が集まりますが、今ネイサン選手にはどんな思いが?

YH:うーん、なんか多分、まだそこまで見えてない。そこまでの余裕はないかなと。

なんかそれよりも、今回久しぶりに、自分の演技したら、自分が思い描くいい演技をしたら、勝てるんじゃないかなっていう試合を、経験した気がしてて。

ナンカもっと、今までって、あぁここまでやりきらなきゃいけないとか、ここまで跳ばなきゃいけないとか、ナンカそういうことにすごい追われてた気持ちが、あったと思うんですよね。

ナンカ、それがなかったんですよ、今回は、というのがすごく・・・、

自分のことに集中して、自分の演技さえしっかり出し切れればいいんじゃないかな、みたいな、ナンカそれが、すごく心地よかったっていうのと、

あとナンカ多分それが一番、自分の実力が出せるっていうか、自分が一番競技のフィギュアスケートとしてやりたいことなんじゃないかなっていうのを、ナンカ改めて感じました。

 

I:「勝負師」よりも「求道者」にマインドが変わってきている?

YH:なんか、求道者っていうのはあんま好きじゃないんですけどね、僕は(笑)。

なんか、突き詰めるだけじゃつまんないって思ってるし、やっぱりその上で、結果っていうものがね、ないと、やっぱり競技としてモチベーションもないですし、やって行けないと思うんですよね。

うん。それはやっぱり、根本的には変わってないです。

ただ、その、自分が、どういうふうなフィギュアスケートがしたいかっていう、どういう風なジャンプを跳んで、どういう風な理想を持って行くかっていうことが、ナンカやっと今、しっかりとしてきたんで。

ナンカそれを信じて、とりあえず練習していって、それを本番で出したいっていう気持ちが、ナンカその、根本的なその勝ちたいっていうもの(手振り)よりも、大きくなったな、って思うんですよね。

だから、うーん、なんか、フィギュアスケートを追求したいっていうよりも、ナンカ自分の理想を、とりあえず追いかけてるっていう感じの方が強いですかね。

ナンカ今までは、その、オリジン・オトナルで、その、偉大なスケーターの、背中を追いかけているっていう感じだったのが、なんか今は、自分が理想としている自分、の背中を追いかけてて、それにまた、近づこうとしているって感じですかね。

なんか昔もこのこと言った気がするな。(笑)

なんか、昔も、自分の理想の背中を追いかけてるってことを言ってた気がします。うん。

 

I:昨季試合に敗れた時に「心の中に炎が灯った」と話していたが今は?

(敗れた時ではない。ACIでフリーはジュンファンに次いで二位だったけれど、試合は優勝している)

YH:なんか、色が変わったのかな、と思うんですよね。

燃料、も変わったし、そのナンカ、温度が変わったから色が変わった感じですかね。

ナンカもっと静かに燃えている感じです。

 

I:何色の感じですか。

YH:自分の中では青なんですけどね。えへへ^^。はい。

 

I:それまでは何色だったんですか。

YH:なんかもっと、真っ赤な感じでした。

ずうっと、何かに、対して、何かに対して燃えてるって感じだったんですよ。ずっと。

なにかしら、何かをやりたいとか、何かを跳びたいとか、何か達成したい、誰かに勝ちたいとかっていう、何かの燃料が足されて(身振り)燃えてるって感じだったんですけど、なんか今は、すごく安定した、なんかトーチ、みたいな。

なんか、油が常にちゃんと供給されてて、すごくなんか・・・。

まあ、揺れもするんですけど、その揺れが、すごく、ナンカ落ち着いてるなっていう感じ。

ナンカスゴイちょっと難しい話になるんですけど、共振、共振、運動ってのがあって、ロウソクの火をこうやって(手振り)近づけていくと、だんだん同じように動く、ようになるんですよ。

その、ナンカロウソクの炎が、今までばらばらに動いていたのは多分、自分のロウソクと多分他の人のロウソクを比べて、燃やしてたから。

ナンカ自分ももっと大きくなりたい大きくなりたいってずっとやってて、ぐじゃぐじゃになってて、自分のスケートがぐじゃぐじゃになっちゃったみたいな感じですね。

でも、ナンカ今は、ナンカ自分の理想がもうちょっと近く、見えてる、から、もしかしたらその自分の理想、のスケートに対しての波長がちょっと合ってきたのかな、ていう感じがしてて。

だからなんか、今、すごく安定してるんですよね、うん。

ナンカ追いつこうっ、てしてるんじゃなくて、一緒に動いてる感じ、がします。

 

I:めちゃくちゃ頭良い話ですね。

YH:(照れ笑い)メトロノームとかで調べると面白いですよ。

7:53

 

I:今期プログラムを変えて競技者として結果への手応えは?

YH:別になんか、このプログラムで、勝ちたいからこうしたってわけじゃないんですよね、全然。

なんか、守りたい、みたいなものでもまったく無くて、

いや、守りたい、っていうんであれば、PCSそんなに変わってないのでずっと。

むしろ下がってるかもしれないので、グランプリファイナルとか昔のグランプリファイナルとかと比べてみたら。

そしたら、じゃあ今まで練習してきたことはなんなんだ、ってなってしまいますし。

でも自分の中でなんですけど、あの頃よりもやっぱりスケーティングとか、ステップとか、やっぱり上手になったなって、自分の中では思ってて、深みも増していると思いますし、

だから、別にそれを守りたいとか、それで勝ちたいとかっていうものではなくて、

ただ、今の自分、を、等身大に写せる、現し身みたいな。

バラード第1番は、特にそうだったし、

SEIMEIに関しては、そのSEIMEIというストーリーだったり、安倍晴明っていう人物像に、自分を、また重ねる、

自分が、その強い、晴明になりきる、というようなイメージがあるので、

だからなんか、プログラムに勝たせてもらうっていうか、プログラムに強くさせてもらうっていうイメージが強いです、自分の中では。うん。

 

I:SEIMEIに関しては新しい一面もあったりして、僕らは「新SEIMEI」だったり「SEIMEI2」という印象を受けましたが?

YH:(哄笑)

まあやってる感覚はちょっと違いますけどね。

ただやっぱり、その、音楽が入ってくる感じとか、やっぱりほっとするんですよね、ちょっと。

試合であったとしても。

ああ、馴染んでるな。っていうか。

ナンカからだの底から、ナンカ引き上げてくれるような、

ものがあるんですよね、あの曲とストーリー自体に。

だからそれがやっぱり自分の中では大きいんですかね。うん。

 

I:「新SEIMEI」か「SEIMEI2」かでいったらどうですか?

YH:それは明言しないでおきます(笑)。

使われるから、ずっと(哄笑)。

恥ずかしくなる。

 

I:4回転アクセルは今も作業中だと思いますがどのような壁があってどういった状況ですか?

YH:まず、回し始めるのが大変なんですよ。

まず、怖い。

恐怖心が半端じゃなくて。

あの、普通のトリプルアクセルよりも、明らかに上に上がらなきゃいけないし、身体も、吹き飛ばすようなイメージで、跳ばなきゃいけない。

で、それをやって行くと、軸がぶれちゃうので、今度は回転に繋がらないんですよ。

で、回転を重視しちゃうと、ちっちゃくジャンプ跳べば回転は出来るので、回転をすることは、出来るんですけど、そしたらちっちゃく跳んだときに回転数が足りるかって言われたら、足りない。

っていうそのジレンマが結構あって、そこが第一関門。

で、それは大分越せたかなって思ってるんですよ。

そのバランスのいいところは、ちょっと見つけられてて。

あとは、あの、何ていうかな、とりあえず、締め切って、片足で降りてくれば、降りれるかなっていう感覚があって。

まぁそれがどれだけ難しいかっていうのは、ちょっと表現出来ないんですけど。

うん。でも、なんか、自分の中では、形は見えて来ているっていうか、

あの4回転半っていう、今まで形が見えなかったものが、なんとなく形としては見えてきているのかなっていう、感覚はあります。

 

I:GPファイナルの公式練習でやられていましたがあの時と比べて

YH:あん時よりも力抜けてるんで。

だから、まぁ力抜くことが正解なのか、力を入れきることが正解なのか、

まぁそれもまた、まぁその時の調子次第だったり、技術的な問題だったりもするんですけど。

でも、あの時よりも、感覚はいいですね。はい。

 

I:今の時点で世界選手権でアクセルは?

YH:う~~~ん。イメージは湧かないです(笑)。

でも、なんか練習はしたいなって、すごく思ってるんですよね。

だから、そこに向けて、まずはまあ世界選手権っていうところに向けて、まあ練習のモチベーションにしたいな、と。

世界選手権を、その4回転半の練習のモチベーションにしたいな、っていうふうには思っています。

 

I:気持ちとしてはってことですね(何を言っているのかちょっと不明)

YH:う~ん。まあ、降りたら、ですけどね。

まあ降りた、って言っても、それがプログラムに入るか入らないかって、やっぱり、かなり難しいものがあるんで、まあ、徐々にかな、とは思ってますけど、自分の中では。

とりあえず、まあSEIMEIがこのような形になっているっていうのもありますし、

まずは、Lutzしっかり決めたいなっていう、気持ちの方が強いです、正直言っちゃうと。

とりあえず、世界選手権の目標としては、そっちの方が強いですね。はい。

 

I:世界選手権で勝つことがそのシーズンの勝者だと去年仰っていましたが?

YH:また重たいこと言いますねぇ、自分に。

自分に重たいこと言いますね。(笑)

 

I:自分史上最強の姿を今季最後にもっていきたいと話されていましたが改めてどんな世界選手権にしたい?

YH:なんか、とりあえず胸張れる終わり方したいなって思ってます。

すごく、胸を張って、何て言うかな、別になんか、

まぁ最強・・・、強さを求めるっていう意味の最強じゃなくて、ナンカ自分の中で胸を張れるものにしたいっていう意味での最強かなって、今は思ってますね。

うーん、なんか、ここまでやりきれたぞみたいな、ものにしたいっていうのがあって、

うん、今回の、バラード第1番みたく、あの、クオリティを、やっぱりSEIMEIでも出したいなっていうのが、すごい強いので、あれが出来れば、自分の中で胸を張って最強だって、自分、の中(手振り)での最強だって、言えるんじゃないかなって思うんですよね。

それを世界選手権では目指したい。

 

I:それが本来のフィギュアスケートのあるべき姿?

YH:(被せるように)僕が、僕があるべき姿かなって思ってます。うん。

なんか、そう思いました。バラード第1番を、今回やらせて頂いて。

SEIMEIはやっぱりまだ納得全然出来てないですけど。

やっぱりバラード第1番やって、ほんとに、ああ僕はこうあるべきなんだと、

僕のジャンプとスピンとステップはこうあるべきなんだと、

プログラム自体がこうなんだ、ていうのをすごく感じれた。

だからそれをまた、なんかやったーって思うわけじゃなくて、それを糧に、頑張って行きたいなって思います。

 

YH:ありがとうございましたー。

ありがとうございました。お疲れさまでした。

ありがとうございました。

ありがとうございました。

 

****************

 

感想

羽生さんが、2020四大陸でのバラード第1番が、僕があるべき姿だったと、幸せに感じているようであることが嬉しかった。

 

スーパースラムが、19才ではなく25才の今取れたこと。自分が心から満足できる演技で取れたこと。そこに意味があると思ったのだろうか。

 

羽生さんも、バラード第1番のPCSが、2015GPFから単調減少していることに気づき、傷ついていたのだなと思った。

でも、自分の中では、あの時よりもずっと上手になっているし、深みも増していると。

バラード第1番は、自分の現し身のようだと。深いなあ。←理解仕切れていない。

 

ネイサンとの戦い、ということから脱却して、一段高いところに行った気がする。

ネイサンも、ジャッジも、もういいです、という感じを受ける。

「そこまでの余裕はない」という表現をしているけれど。

自分の理想を追いかけたい、と。

 

炎の色が、静かに燃えている青になったと(青い炎の方が赤い炎より温度が高い)。

高い温度で、静かに燃えているのですね。

燃料はもはや、ネイサンでもなく、世界初のジャンプを跳ぶことでもなく、GPF5勝、でもなく、自分の理想。

それが今、かなり近く、感じられている。

澄み切った表情。

 

4Aも、俺が初めて決めるんだとメラメラしているというよりは、純粋に自分の中の4Aへの愛に忠実でありたい、という風に感じる。