強盗に誘拐されて
ルース・A・ズスカムラー
寝室で寝ていたキャシーとデイビッド・バイカー夫妻は2011年8月9日早朝4時に突然の怒鳴り声に目が覚めた。
全身黒ずくめの2人の男がナイフを振りかざして、キャシーと夫のことを見下ろしていたのだ。
2人は目出し帽を被っていたので、目しか見ることができなかった。
キャシーはこれは悪夢に違いないと思い、目をつむった。
目を開けたら2人がいなくなっているだろうと願って。
60歳のおばあちゃんが目を開けたとき、最も恐れていた現実があった。
2人はまだそこにいたのだ。
キャシーは恐ろしくなった。
侵入者の1人がデイビッドにお金を要求した。もう一人の侵入者は、キャシーの手首と足首に粘着テープを巻きつけた。
キャシーは、突然、彼らが自分を誘拐しようとしていることに気がついた。
40年間連れ添った夫から引き離されてしまうことが恐ろしくて、逃げようと男を蹴り始めた。
「やめなさい。ハニー。」と夫が言った。
「彼は、君の首にナイフを突きつけているんだ!」
侵入者が自分の首にナイフを突きつけていたことに気がついてなかったキャシーは、抵抗するのをやめた。
ミシンガン州、グランドビルの自宅から、自分のSUV-男は盗むことを計画していた-に荒々しく引っ張って行かれ、キャシーは怯えた。
後部座席に横になるようにと言われ、粘着テープを目と口を塞がれた。
抵抗がまったくできなくて、無力に感じた。
このように誰かの支配下にあるのは「まさに地獄でした」とキャシーは語っている。
警察の捜査報告によると、2人の侵入者は夫妻に身代金を要求し、そうしなければキャシーを殺すと脅した。
彼らは、彼女の夫に携帯番号を教え、現金の用意ができたら電話するようにと告げた。
グループの首謀者である3番目の年配の男は、誘拐犯達に目出し帽、ナイフ、手袋、粘着テープを提供していた。
暗闇に車を走らせて
首謀者と落ち合った後、侵入者の1人が、キャシーを連れてバイカー家から暗闇へと、盗んだSUVをもうスピードで走らせた。
彼女は、彼らがどこに行こうとしているのか、男達が自分に何をしようとしているのか、この恐ろしい試練がいつまで続くのかまったく分からなかった。
誘拐犯は、左手で運転しながら、ナイフを握った右手を後部座席に向けて、始終、キャシーに横たわっているようにと命令し、もし起きたら、殺すと、脅した。
「彼がそうするだろうって思いました。」とキャシーはカリスマ誌に語った。
「彼は私の首にナイフを向けていたからです。」
この時まで、トラウマと混乱があまりにもひどく、また起こっていることが理解できなくて、祈ることが頭に思い浮かばなかった。
自分が完全に無力であることを悟った時、キャシーは神様に助けを叫び求めることを思い出した。
これが転機点でした、とキャシーは語っている。
状況はまったく変わっていなかったが、彼女の心の中で全てが変わった。
その瞬間から、彼女の思い、心、霊の中で、神様が中心になった。
SUVの後部座席で横たわりながら、生きるのか死ぬのか分からない中、キャシーは神様に集中し、異言で祈った。
あまりにも圧倒されていて、英語を一言も発することができなかった。
ローマ8:26にはこう書いてある。
「御霊も同じようにして、弱い私たちを助けてくださいます。
私たちは、どのように祈ったらよいかわからないのですが、御霊ご自身が、言いようもない深いうめきによって、私たちのためにとりなしてくださいます。」
「異言の祈りは完全な祈りです。
自分の思いが一切加わることなく、私の霊から神の霊へと行くからです。」と彼女は語っている。
粘着テープは口を閉ざし続けていたが、祈っている時に、自分の舌を動かすのを止めることはできませんでした、と彼女は語っている。
時折、彼女がつぶやくことができたのは、「神様、助けてください。」だけだった。
異言で祈っていると、体がリラックスするのを感じた。
「私達がどのように祈ったらいいのか分からない時、聖霊様が私達のために祈ってくださいます。」と、リージェント大学の名誉学部長であり、教会史の客員教授であるハロルド・ビンソン・シナン氏は語っている。
「異言の祈りは、生涯を通じて行使することができる、個人的な賜物です。」
これは、神様に信頼を置く全ての人のための賜
物だ。ミシンガン州グランドビルにある、Resurrection Life Churchのデブ・キルギス副牧師は、キャシーがすぐに異言で祈り始めた理由は、彼女が異言の祈りに力があることを前から知っていたからです、と語っている。
彼女は過去にも、異言で祈ることによって数々の勝利を体験してきていたので、あの状況で超自然の言葉で祈ることは、彼女にとって容易なことだったのだ。
イエスの血潮を唱える
御霊で祈った後、次に彼女が思い出したのは、自分の体にイエスの血潮を唱えることだった。
守りのために小羊の血を門柱に塗ることを語っている出エジプトのみことばについて考えた彼女は、自分には神様の守りが必要だと気がついた。
御霊に委ねれば委ねるほど、み言葉が次から次へと思い浮かびました、と彼女は語っている。
その時思い浮かんだみ言葉の中には箴言3:5-6もあった。
「心を尽くして主に拠り頼め。自分の悟りに頼るな。
あなたの行く所どこにおいても、主を認めよ。そうすれば、主はあなたの道をまっすぐにされる。」
「何が起こるのかは分からないけど、神様を認めよう。」と彼女は思った。
神様が彼女に次から次へとみ言葉を思い浮かばせるにつれ、とてつもなく大きな平安が押し寄せてきた。
状況はまったく変わっていませんでした、と彼女は語っている。
神様を認める前は、恐れを感じていたが、神様を認めた後は、力強さを感じた。
「神様の要素が増えるにつれて、恐れの要素が減っていきました。」とキャシーは語っている。
聖霊様を通して超自然的な力が与えられたと、キャシーは信じている。
今だ怯えていたが、この世のものではない平安が内にあった。
使徒1:8は語っている。
「しかし、聖霊があなたがたの上に臨まれるとき、あなたがたは力を受けます。
そして、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、および地の果てにまで、わたしの証人となります。」
様々な思いが殺到し、詩篇91篇と「守り」という言葉を思い出した。
詩篇91:1-2は言っている。
「いと高き方の隠れ場に住む者、全能者の陰に宿る。私は主に申し上げよう。『わが避け所、わがとりで、私の信頼するわが神』と。」
その時、キャシーは、自分の恐れよりも神様の方が大きいのだから、神様の中で安らぐことができるんだと気がついた。
奇跡的な脱出
それからすぐに、運転手は、彼女が思うに森の中に車を乗り入れた。
こう心の中で宣言したのを彼女は覚えている。
「イエスの御名によって、私は消息を絶った人達の1人にはならない!」
キャシーは、ミシガン州の別の地域の畑に引きずり込まれた。
誘拐犯は、彼女を電柱に粘着テープで縛りつけ始めた。
「お前の後ろに他のやつがいて見張っている。だから、もし逃げようとするなら、奴はお前を殺すからな。」と、男は彼女に言って、そこからいなくなった。
キャシーは、男が言ったことは本当ではないと思った。
他の誰かがいる気配がしなかったからだ。
彼が去って行ってから、10秒待って、それから手をくねらせて手首に巻き付いた粘着テープから脱出し、目と口の粘着テープを引き剥がした。
その時になって、周りがトウモロコシの茎だらけで、自分がいるのはとうもろこし畑だと気がついた。
周りを見回したが、誰もいなかった。
下を見ると、膝に粘着テープが巻かれているのが目に入ったが、簡単に破ることができた。
「奇跡でした。」と彼女は語っている。
「私を電柱に縛り付けていた粘着テープは、ほんのちょっとの力で破れたのです。」
「神様、凄い!」と彼女は思った。
それからキャシーはそこから逃げた。
後に、刑事は、天からの何らかの助けがあったに違いないと正式に認めた。
「あれは普通の粘着テープでした。」とキャシーは語っている。
「粘着力が強くて、何重に巻かれていました。私の膝を縛っていたんです。
それが、ほんのちょっとの力で破れたのをこの目で見たんです。
あれは奇跡でした。」
神様の導きを聞く
キャシーは道路まで走って行き、そして立ち止まった。
「真っ直ぐ行くのか、右か左に曲がるか。どの方向に行くのかがとても重要である」事に彼女は気がついた。
「心の中で、神様にどうすればいいか聞きました。」
神様が真っ直ぐ行くようにと導いておられるのがはっきり分かりました、と彼女は語っている。
誘拐犯がどの方向に行ったのか分からなかったが、後になって、もし左に曲がっていたら、車を取りに戻った誘拐犯と鉢合わせになっていたことを知った。
それから、なぜ誘拐犯が自分を独りにしたのか、その理由も知った。
テープがなくなったので、車にテープを取りに行っていたのだ。
このような状況にたいして準備ができている人は誰もいません、とキャシーは語っている。
彼女はどうすればいいか分からなかった。
走り続けた方がいいのか、どこか隠れる場所を探すべきなのか分からなかった。
彼女は、まだ命の危険に怯えていた。
「自分の人生であんなにも孤独を感じたことはありませんでした。」とキャシーは語っている。
「私がどこにいるのか知っている人は誰もいなかったんです。誰も。」
暗闇の中、農家の裏側を、豹柄のパジャマ姿で、体中に粘着テープをぶらさげながら、裸足で走った。
時々、隠れたり、祈るために、偶然見つけた金属の箱の中に入ったりした。
それ以外の時は、生きるためにひたすら走った。
早朝の薄明りの中、自分を隠してくれそうな物があるとその背後をジグザグに走って逃げた。
ついに、ある建物の前で、遠くの方に「Classic Transportation」と書かれた看板が目に入った。
神様は、彼女の目がその看板を見るようにし続け、彼女は、それを覚えとくように自分に言い聞かせた。
祈ると、神様にもっと近くに行ってみるようとはっきり言われた。
近づいてみると、4メートル位の高さのフェンスがあり、その中には白い牽引自動車が何台も並んでいるのが見えた。
「扉が開いていたので、本当に嬉しかったです。」とキャシーは語っている。
何台ものトラックの横を急いで走っていると、サイドライトが点き、エンジンがかかっている1台の赤いトラックが目に入った。
中に誰かがいるに違いないと思い、ドアをバンバン叩いたが、何の応答もなかった。
けれど、運転席のドアの鍵がかかっていなかったのでホッとした。
そして、静かに扉を開けて、後ろで眠っていた男性をそっと呼んだ。
「助けてくれませんか?私、誘拐されたんです。」
最初、彼は疑わしげにしていたが、彼女の壮絶な話しを聞いた後、運転手はアレガン群の警察に電話した。
警察が来るのを待っている間に、男性は、仕事に応募するためにClassic Transportationが開くのを待っていたのだと彼女に説明した。
「彼は、その時までそこに来たことは1回もありませんでした。
神様が私を助けるために、彼をそこに置いてくださったのだと感じました。」とキャシーは語っている。
「だから、彼に言ったんです。『私、あなたが天使だと思う。』って。そしたら彼は笑ってました。」
その後、警察官が到着し、彼女を田舎の警察所に連れて行き、そこで彼女はその晩の出来事を話した。
それから、誘拐犯達が群境を越えていたので、グランドビルの警察が来て、彼女にもう一度聞き取りを行なった。
「神様の力の証人であることのゆえに、神様を賛美しました。」とキャシーは語っている。
祈り:決定的要因
キャシーが聖霊様のことを詳しく知るようになったのは、30年前、息子が生まれてちょっとしてからだ。
1984年、彼女の息子はまだ生後3か月だった。
教会には長いこと通っていたが、いつも何かが欠けているように感じていて、探し求めていた。
友人が、聖霊のバプテスマについて語り、彼女に手を置いて、祈ってくれたのはその時だった。
「神様の愛と知識で満たされたような感じでした。」と彼女は語っている。
それから、彼女は貪るように聖書を学ぶようになり、聖霊様についての節には全部、アンダーラインを引いた。
ある日、聖霊様を悲しませてはいけないと語っているエペソ4:30を読んだ。
「神様は、私が異言で祈ることについてある部分で抵抗していると語られました。」と彼女は言っている。
「けれども、神様は私が準備できるまで待っておられました。」
キャシーは英語、つまり母国語で神様を賛美することに満足していて、それ以上は彼女の理解を越えていたのだ。
自分が聖霊様を悲しませていることに気がつき、悔い改めるまでは、彼女は異言で祈ることにたいして心を開いてなかった。
その事に気がつき、悔い改めた後に初めて、彼女は異言の祈りを受け入れるようになった。
最初、彼女の祈りの言語は一つだけだったが、聖霊様の力を受け入れるようになるにつれて、少しずつ増えて行った。
ミシガン州ロックフォードにある、Rockford Resurrection Life Churchのダグ・バーグスマ牧師は、バイカー夫妻のことを20年以上知っている。
聖霊の賜物を信じ、聖書を真っ直ぐに語る教師であるバーグスマ牧師も、キャシーが誘拐された時に、デイビッドが電話した内の1人だった。
バーグスマ牧師はすぐに祈った。
彼がバイカー家に着いた時には、12人近くの人達がすでに集まって祈っており、ある人達は異言で祈り、キャシーにたいしてみ言葉を宣言していた。
彼は、人が聖霊を受けると、祈りの言語(他の言語で話す力)を受けると説明している。
Ⅰコリント14:15でパウロはこう語っている。
「ではどうすればよいのでしょう。私は霊において祈り、また知性においても祈りましょう。」
異言は御霊の賜物の一つであり、そこからその他の多くの賜物がもたらされてきます、とバーグスマ師は語っている。
「私は、長年、人間の知性では理解することができない導きの言葉や、神の守り、啓示の証を聞いて来ました。
あのような状況で、平安を持ち、平安を見出すことはキャシーにとって、神様の守りがあるという驚くべき確かな証拠だったのです。」
苦々しさを解き放つ
キャシーの誘拐に関与した3人の犯人は、長期の実刑判決を受け、現在服役している。
「赦しは感情ではなく、選択なので、私は、彼らを神様の前で赦すことにしました。」とキャシーは語っている。
「そしてその結果、神様は私の内から苦々しさと恨みを取り去ってくださり、私を自由にしてくれました。
私のような多くのアメリカ人が、自由を当たり前のことと思っています。
私は、短い時間でしたが、自由を取り去られた時に、それがどれほど貴重なものであるのかを知りました。
自由であるということは、宝なのです。」
神様は私達が自由を得るために戦ってくださるお方であり、解放者です、と彼女は語っている。
「私が肉体的に体験したことを、霊的に体験している人達が沢山います。
彼らは縛られています。
人質にされているのです。
悪魔がそれをしています。
悪魔はフェアプレーなんてしません。
悪魔は私達全員のことを憎んでいます。
神様は、私達全員を救うためにそばにおられるのです。
最も困難な時にも、神様がそばにいてくださると私は証言することができます。
神様は私のためだけにいてくださるのではありません。
神様は全ての人のためにいてくださるのです。」
ルース・A・ズスカムラー
太平洋岸北西部出身。ゴダードカレッジで美術学修士号を取得。ライター、写真家。
Reprinted with permission from Charisma.
Copyright Charisma Media, USA. All rights reserved. www.charismamag.com.「主イエス・キリストを信じなさい。
そうすればあなたもあなたの家族も救われます。」
