いつものように母と姉と夜ごはんを食べた後、私は犬と戯れていた。

母は食器を洗いながら結婚の小言を言ってきた。


「今日のランチでは恥ずかしかった。うちには年頃の子供が3人もいるのに誰も結婚してないなんてぷんぷん」


また始まったか・・・・と思いながら私は犬と戯れ続けた。

その場にいた姉は「しまった、2階に逃げ遅れたガーン」みたいな顔をして、母に背中を向けて食卓に黙ったまま座っていた。


母は続けて、何より恥ずかしかったのは、母がトイレから帰ってきたら、席で待っていた友達が孫の話を急に止めたことだという。ちょっと聞こえたみたいだ。

母の友達は孫のいない母に気を遣って会話になるべく孫の話を出さないようにしていたのだろう。

それが逆に屈辱的だったようだ。


母は今まで抑えていた何かが外れたように感情的になっていた。


「もう周りには孫のいない友達がいなくなったドコモ絵文字」

「なんで結婚してくれないのハテナ はてな びっくり ビックリ 驚き」

「私は3人全員を大学にまで出して頑張ってきたのにドコモ絵文字」

「なんで私がこんな仕打ちを受けなきゃいけないのドコモ絵文字」

「情けないドコモ絵文字恥ずかしいドコモ絵文字」


途中から涙声に変わっていた。滅多に泣かない母が屈辱の涙を流していた。

いつもとは違う母の様子に姉も私も黙ったまま何も言えなかった。



私は中学生の頃の母から罵倒された時を思い出していた。

あの時も「情けないドコモ絵文字恥ずかしいドコモ絵文字」と言われた。

その時から自分に劣等感を抱き、こんな性癖の自分が恥ずかしい、こんな子供で申し訳ないと母に負い目を感じていた。


だから私がこの状況を何とかしなくては!と思った。

結婚して孫の顔を見せて、母を早く苦しみから抜け出させてあげなくちゃ!と思った。

親孝行なのか負い目を感じていた私の名誉挽回のつもりなのか分からないが、その場で強く決意した。


その時は目標を達成した後に何が待っているのかまでは想定していなかった。