【タイトル】 INTEGRAL LIFE PRACTICE ~私たちの可能性を最大限に引き出す自己成長のメタ・モデル~
【者著】 ケン・ウィルバー/テリー・パッテン/アダム・レナード/マーコ・モレリ、鈴木規夫/訳
【ページ数】 776

 

 


【何を得ようと思ったか】心理療法やスピリチュアリティのみならず、人生全般に関してインテグラルな方法としてどのようなものを提供しているのかを知る。


【対象】 ケン・ウィルバーのインテグラル理論を実践に移す際に何をするのか、について興味がある人。
【評価:★5段階で】
 難易度:★★★★
 分かりやすさ:★★★★
 ユニークさ:★★★
 お勧め度:★★★★

【きっかけ・所感】

私自身は、2,30年前はケン・ウィルバーにかなり熱中したものだったが、その後はトーンダウンして最近はあまり追っかけていなかった。『進化の構造』でケン・ウィルバーの思想的な側面はほぼ完了したと言っていい感じで、その後はその理論の補正的なもので、よりその理論を「実践」という方向にウィルバーの関心は移っている。NLPやNVC、ACTについて学んだあと、再び全体像を把握したいと思ったとき、『万物の歴史』や『存在することのシンプルな感覚』以降読んでいないことに気づき、その後の著作を読んでみたいと思った。

この本には、著者としてケン・ウィルバーが含まれるが、彼自身は直接執筆せず、執筆と校正の過程には全面的に参加したということで、彼の思想が色濃く反映されている。インテグラル理論はもはやケン・ウィルバーの手を離れて、それぞれの研究者がそれに基づいて独自の発展を遂げているともいえる。


ケン・ウィルバーは、トランスパーソナル心理学の論客として名を上げたが、その後はそこから脱同一化し、「インテグラル」という全領域をカバーする方向に向かった。なので、書店には、『無境界』はまだあるものの、古典である『意識のスペクトル』『アートマンプロジェクト』は絶版となっていて、インテグラル理論などは山積みされている。以前であれば、トランスパーソナルという領域、スピリチュアリティ、ニューエイジ(ケン・ウィルバーは嫌がるが)などに分類され、そういった人でないと興味がなかったものの、最近では「ティール組織」についての注目もあって、インテグラル理論は以前に比べると広く認知されているようだ。NVCでも、四象限の考え方が導入されていたのは興味深い。

 

とはいっても、すでにケン・ウィルバーの著作を読んでいる人やスピリチュアリティにある程度理解がないと読むのは難しいと思う。そういったことがなく、この本から入った人に感想を聞いてみたい。

【要約・メモ】

 

●概要

インテグラル・ライフ・プラクティス(ILP)とは?
21世紀の生活において最適化されたフレームワークを活用し、世紀を超えて伝承されてきた多数の実践を体系化したもの。
ILPは、成長したいという願い、自らの可能性を最大限に実現したいという願いとともに始まる。この世界における最高の自由と最大の充足に至ることを可能にする。

インテグラル理論では、理論と実践は不可分で、ウィルバーは一連の書籍の中で、くり返し実践の重要性と必要性を訴えている。

「すべての視点は正しい──ただし、それらはいずれも部分的・限定的である。」
特定の限定的な文脈の重要性を否定するものではなく、そうした文脈に身を置くことで治癒や成長を実現できる。同時に、具体的な実践は、より普遍的な文脈の中に位置づけられる必要がある。

前近代の実践
 世界中の叡智の伝統とそれらを支える瞑想の実践
近代の実践
 人間の成長とそれを促す方法に関する科学的な研究。
後近代の実践
 人間という領域を把握するための多元的・多文化的な地図に加えて、すべての重要な側面(自己・文化・自然の中にある肉体的・感情的・理知的・霊的な側面)を包含するための方法

ありきたりの形而上学(metaphysics)
 現実とは、認識者の文脈、行動、認知に影響されることなく、ただ意識に与えられる。

ポスト形而上学的なインテグラル・アプローチ
 統合的な現実を体験するためには、統合的な実践を強調。実際に実践を行い、誰かが「真実」と呼んでいるものが、本当に真実であるのかを自分で判断する

クロス・トレーニング
複数の異なる領域で同時並行的に実践に取り組む
スキルを他の領域の実践に意識的に持ち込むことで相乗効果を生み出す。

ゴールド・スター・プラクティス
多忙な現代人が限られた時間の中で効果的にエッセンスを押さえる方法
1分間モジュール:非常に濃縮された形態。いつでも無理なく実践をすることができるよう考案されたもの。
伝統的な実践を蒸留し、宗教的・文化的な夾雑物を取り除いたもの


●人間の発達の諸モデル

人間の発達とは自己中心性が減少していくプロセス。誕生時には生理的な欲求に従属しているが、徐々にそうした欲求を他者との関係性(意思疎通)の中で満たすようになっていく。

第一層:早期の段階
 世界を部分的・断片的に認識

第二層:高次の段階
 世界を統合的・包括的に認識。真に全体的になる。

世界は全体として意味をもち始め、そこに存在する多様な要素は相互につながりのあるものとして認識される。世界(universe)は、さまざまな哲学や思想の統合をとおして把握されるだけでなく、成長と発達のためのさまざまな実践をとおして探求される「ひとつの世界」(uni-verse)として認識され始める。
 

◆1-MINUTE MODULE

あなたのもっとも深い動機は?
あなたをもっとも深いところで衝き動かしているものに感覚を集中させ、それを意識。最後に、「目撃者(Witness)」を意識する。

 


●統合的なフレームワーク
 目の前に存在する多くの選択肢を整理する助け。
 与えられるトレーニングを受動的に消費するのではなく、主体的に自らの実践を設計していく。
 最大限の柔軟性を許容
  自らの状況に適した独自の実践を構築するための道具を提供する。
  それぞれの実践者の興味や情熱や欲求に基づいてカスタマイズ
 量的な調整が可能な実践体系
  いかに多忙であろうとも、誰もがILPを実践できる

統合的
「総合的」「調和のとれた」「包括的」を意味。全体性、あるいは完全性の感覚が伴われる。重要なことを無視していない、という感覚。

モジュール
あなたという存在の具体的な領域、(Body)・(Mind/Heart)・スピリット(Spirit)・シャドー(Shadow)という4つに紐づいた実践のカテゴリー

付属モジュール
・統合的倫理(Integral Ethics)
・統合的な性的ヨーガ(Integral Sexual Yoga)
・ILPとしての仕事(Work)
・感情の変容(Transmuting Emotions)
・統合的子育て(Integral Parenting)
・統合的人間関係(Integral Relationships)
・統合的コミュニケーション(Integral Communication)


 

◆1-MINUTE MODULE

今すぐ統合的な意識に目醒めよう!
1. 速やかに意識を拡張する「である」という感覚を意識。あなたの内部にある、あなたをあなたたらしめているものすべてを感じる。
2. 次に「私たち」―-他者との人間関係--の感覚を意識。
3. 次に「それ」の感覚を意識。「それ」とは、複雑性をそなえたあなたの肉体であり、また、この世界におけるあなたの存在をとりまく諸々のエネルギー。
4. 最後に「それら」の感覚を意識。「それら」を意識するとは、あなたの人生が埋め込まれているさまざまなシステムを意識することであり、また、このようなシステムに自らが参加しているのを意識すること。これらの諸領域に意識がひろがっていくのを感じる。

自らの純粋な意識を感じる。この意識には小さな「私」(「エゴ」)が立ちあがり、また、そこには「私たち」「それ」「それら」という視点をともに味わうことができる。この開かれた、歓びに満ちた意識を感じつつ、一日を生きる。



●シャドーモジュール

シャドー抑圧された無意識
こうした抑圧を解除して、シャドーを統合する。
自らの内部でシャドー・ボクシングをするために浪費されていたエネルギーを解放すること。

心理療法とシャドー・ワークは、近代西洋が実践にもたらしたもっとも重要な貢献のひとつ。伝統的な修行は、スピリチュアルな成長に関しては深淵な理解を誇るが、心理力学的なシャドーは、十分に扱うことができない。実際、スピリチュアリティの伝統が犯す大きな間違いのひとつは、瞑想等の実践が個人のすべてを変容することができると思い込むこと

フロイトの洞察
「受け容れがたい衝動や感情は意識から排除されるが、それは見えない形で個人の人生に影響を与えることになる」

3‐2‐1シャドー・プロセス

抑圧と投影の過程の三段階

1. 私は怒りを覚えている。
2. でもそれは許されない。怒りを抑圧する。怒りを何らかの内的なイメージに投影するかもしれない(「あなた」「彼ら」)。怒っているのは私ではないのだから、怒っているのは私以外の誰かに違いない。突然、世界は怒りに満ちた人々のあふれる場所に見えるようになる!
3. 怒りを完全に抑圧すると、もはや怒りを認識することもできなくなる。怒りは私とは何の関係もないものとなる。私は恐怖と悲しみを感じるようになる。私の実際の感情は、今や二次的な形でしか経験されなくなる。それは「怒り」という真実の姿ではなく、「恐怖と悲しみと落胆」という虚偽の感情として経験されることになる。

当事者は、こうした二次的な感情を非常に強烈に誠実に経験している。しかし、それはあくまでも根本にあるものではなく、それを対象に治療をしても、成果をあげることはできない。

一人称の認識
    排除された自己は、一度は「私」(I・Me)として認知されていたもの。
二人称の認識
 自己のある側面が受け容れがたいものとなる時、私たちはそれを意識から追い出して、二人称に仕立てあげる。
三人称の認識
 最終的に、そうした感情や状況の脅威があまりにも巨大なものとなる時には、完全な拒絶が必要となる。私たちは、それを自身のものとして所有する段階から(一人称)、他者に帰属するものとして経験する段階に移り(二人称)、最終的には、自分とはまったく関係のない「それ」として完全に放棄する(三人称)。



治療
そうしたプロセスを3(三人称)2(二人称)1(一人称)という方向で逆転する。
それと向きあうこと」「それに話しかけること」「それに成ること


 

◆GOLD STAR PRACITCE

3‐2‐1シャドー・プロセス

 

1. 三人称のワーク:それと向きあうこと。
あなたを動揺させる対象(人物、状況、イメージ、感覚)を子細に観察し、日記に書き込む(エンプティ・チェアの技法を用いてもいい)。

2. 二人称のワーク:それに話しかけること
「あなた」「君」「おまえ」等の二人称の代名詞を用いて、対象との対話。
「あなたは誰なのですか?」
「あなたは何なのですか?」
「あなたはどこから来たのですか?」
「あなたは私に何を求めているのですか?」
「あなたは私に何を言おうとしているのですか?」
「あなたはどんな贈り物を私にくれようとしているのですか?」

こうして問いかけると、対象が答えてくれるようになる。

3. 一人称のワーク:それに成ること
ここでは、「私」「僕」「俺」等の一人称の代名詞を用いて、これまで探求してきた対象(人物、状況、イメージ、感覚)になり、意識に生まれる言葉を書き留めていく。

「私は~である」「~は私である」という形にする。

 

シャドーを自らのものとして完全に統合するために、あなたを動揺させていた対象の視点から直ちに世界を眺めるのではなく、これまでに排除してきた感情や衝動を、明確に自らの存在として共振できるまで実感する。そうすることで、排除してきた感情や衝動を自分のものとして統合することが可能になる。

シャドーが形成されるメカニズム(123)とそれを逆転させるセラピー的プロセス(321)を活用することができないと、瞑想は日常的な「自己」の虚偽性(inauthenticity)を強化する(超越的な自己に触れることは可能にしてくれるかもしれないが)。瞑想を実践するだけでは、断片化され、他者に投影された自己がますます固められることになる。

 

◆1-MINUTE MODULE

朝一番に、昨晩の夢を振り返り、自分を感情的に揺さぶった人やものを特定。その人や物を念頭に置いて、向きあう。次にその人や物に語りかける(あるいは、その対象と向きあうことを想像して、それがどのような感じがするかを味わう)。最後に、その人や物の視点をとり、その人や物に成る
夜寝る前、その日に自分を悩ませた人、あるいは自分を惹きつけた人を一人選ぶ。心の中で、その対象と向きあい、語りかけ、それに成ってみる。

 

「黄金のシャドー」(golden shadow)
私たちがまだ自らのものとして認識し、包容できていない潜在的な能力のシャドーで、高次の部分から投げかけられたシャドー。高次の領域から降りてきて、それを生きることを求める。



真に根源的な感情の変容
シャドー・ワークは重要だが、それは自らの感情を明確化するための最初のステップ。より生産的なアプローチとは、それらの感情を純粋な本質的なエネルギーに変容して表現・解放すること。

1.あなたが感じているものに気づく。
2.それを断定、抑圧しようとする自らの傾向、あるいは、それに反応しようとする自らの傾向を和らげる。
3.あなたの感情が人や物に対するものである時には、その対象に対する関係をゆるめる。
4.感情のエネルギーを実感する。
5.感情が刹那的なものであることを認識することができるまで注意を払う。感情の生のエネルギーは、沸騰した水が蒸気に変容していくように、囚われを克服して、自由な、肯定的な表現として自らを解放していく。

感情の持続的な変容を成功させるには、執念深い実践が欠かせない。
感情が、否定的な経験に反射的に反応するものだと気づく。実践を積むことで、反射的な反応までもが自然と自己解放する

ジークムント・フロイト「"それ"ありしところに、"私"をあらしめよ」
同様にシャドー・ワークと感情の変容は、・「それ」(it)だったものを「私」(I)に・「私」(I)だったものを「私のもの」(mine)にする。
そして、自己の本質である純粋な意識(I AM)がこのプロセスを目撃するし、エネルギーが回復され、解放される。
虚偽の二次的な感情は、真実の一次的な感情に変容されたあと、さらに覚醒した超越的なエネルギーに変容する

上級の瞑想実践者であっても、シャドー・ワークを無視してきた実践者と、シャドー・ワークを実践してきた実践者とのあいだには大きな差が生まれる。多数の高名なスピリチュアルな人物の名声は、無意識のシャドーの衝動によりもたらされた醜聞により汚されている(多くは性、権力、金をめぐるもの)。
シャドー・ワークは必要なもので、終わりのないもの。どれほど意識を開拓しても、心を完璧なものにできる終着点はない。


●マインド・モジュール

成長とは、世界に対していっそう開かれた視点を確立することをとおして達成される。それまでに囚われていた限定的な視点、限定的な真実を超越し、より包括的な視野を確立する。最終的に私たちは、「視点というものをとおして世界を認識する行為」そのものを対象化する視点を獲得する。意識の進化とはそのようにして展開する。より多くの視点を把握しようとする素朴な意図こそが、マインド・モジュールの基本的な実践。

ILPは理性知性を含むもので、置き去りにするものではない。明晰な思考は、倫理的な判断力、意識的な選択と共感のためにも必要。そもそも、他者の視点に立てなければ、他者に共感することはできない。それは知的な行為である。

AQAL
 「地図の地図」、あるいは、数百の理論の本質的な真実を統合するメタ理論
 すべてのものに居場所を与えること。
全象限、全段階、全ライン、全状態、全タイプ」(all quadrants, all levels, all lines, all states, all types)
 インテグラル理論はしばしば「あれもこれも」(both/and)思考と形容される。

AQALは、ふたつのカテゴリーを用いて、あらゆる物事が存在するための場所を用意。
1.「内面」(interior:思考、感情、意味、瞑想体験)と「外面」(exterior:原子、脳、身体、行動)
2.「個」(individual:自己の独自の形態と経験をもつ)と「集合」(collective:文化的な集団およびシステムとして相互に関係をもつ)


統合的な枠組みの基礎──四象限
 多くの衝突や誤解は、これらの領域のうちのどれかを無視することに起因。
 四つすべてを同時に意識すること。

あなたの存在の四つの領域のこと
・個人的な内面(例:あなたの思考、感情、意図、心理)
・集合的な内面(例:あなたの関係性、文化、共有された価値観)
・個人的な外面(例:あなたの物理的な身体、行動)
・集合的な外面(例:あなたの環境、社会的な構造と機構)

それぞれの領域を認識する時の四つの視点
・個人的な内面:「私(I)」
・集合的な内面:「私たち(We)」
・個人的な外面:「それ(It)」
・集合的な外面:「それら(Its)」

私たち(We):あなたと私が互いを理解する時、互いを愛する時、互いを嫌悪する時、つまり、他者の存在を自らの存在の一部として感じる時に形成される。

左上象限と右上象限の両方が真実であり、また、還元不可能なものであることを認めることができる時、意識と脳のどちらが「本当に実在する」のかという無意味な議論に終止符を打つことが可能となる。


 

・意識の段階(levels)

進化とは四象限のすべてにおいて発生する。

発達段階には「悪い」(bad)段階も「誤った」(wrong)段階もない。あらゆる段階は自然の摂理が生み出したプロセスの一部分であり、存在する権利がある。それぞれの段階は、限定的に正しい。ただし、高次のレベルは(定義上)低次の段階を超越し、包含するため、より真実の段階である。絶対的にもっとも高い段階というものは存在しない。今、高次の段階として存在するものを超えるさらに高い段階が創発する可能性は常にある。

高次の階層が低次の階層を超越し包含する時、そこには質的な創発が起こる。つまり、それまでに存在していなかった新しい何かがそこに生まれる。この新しい何かの存在こそが、高次の発達段階が生まれたことを物語る。
人類は炭素原子を超越する存在であるだけでなく、炭素原子を自己の肉体の構成要素として包含する存在である炭素原子が経験することのできない実に無数の行動や体験をすることができる。

自己中心的=私
集団中心的=私達
世界中心的=われわれのすべて
宇宙中心的=生命を宿し創発し続ける宇宙そのもの

個人は決してひとつのレベルにあるわけではない。むしろ、個人はひとつのレベルを中心として上下運動をしている

・発達のライン(lines)
発達の領域が複数あることを想定したうえで、各領域内の成長はある程度自律的に展開している。

・認知(cognition)
・欲求(needs)
・自己認識(self-identity)
・価値観(values)
・感情(emotions)
・美意識(aesthetic)
・倫理(morals)
・人間関係(inter personal relating)
・身体能力(kinesthetic)
・スピリチュアリティ(spirituality)

ILPは、あらゆる能力領域において傑出したレベルの発達を実現することを要求したり、推奨したりするものではない。

能力領域(line)は、人生がくり返し突きつける「問い」(question)として捉えることができる。

・私が意識しているのは何か?(認知)
・私が必要としているものは何か?(欲求)
・私は誰なのか?(自己認識)
・私にとって大切なものは何か?(価値)

水平的成長
私たちは「水平的」(horizontally)にも、「垂直的」(vertically)にも成長する。
一段一段と高度があがることによって、世界観は真実性を増し、限定性を減らしていく。
私たちは「重心」(a center of gravity)となる世界観をもっており、ほとんどの場合、そこから行動をする。

世界観のスペクトル

インフラレッド 原始的世界観
 「生存」こそが原始的な世界観を衝き動かす使命であり、目的。

マジェンタ 呪術的世界観
 主体(認識する主体)と客体(認識される対象)は部分的に重なりあうため、岩や川をはじめとする「非生命体」を生きているものとして感じられたり、魂をもつものとして感じられたりする。

レッド 力の世界観
 部族と峻別された存在としての「自己」(ego)の発生を促す--ただし、この「自己」はしばしば自らが帰属する集団のために衝動的に行動する。自己を世界の中心としてみなして(自己中心的)、レッド段階の自己は自らの欲求と欲望をただちに表現し、充足する。レッドにとって、他者を恐喝、支配することこそが、物事を達成するための方法。

アンバー 神話的な世界観
 自集団中心的。神話的世界観の神や神々の支配は、地上の人間の営みに直接的に関与する「力」(power)として経験される。
 二極対立的、黒と白、集団中心的な発想が支配的となる。規則は人生に明確で絶対的な意味と方向性と目的を与える。尊重されなければならない高い価値や法則がある。

オレンジ 合理的な世界観
 特定の集団に対する忠誠心を断ち切り、普遍的な方法と法則をすべての人類に適用。その意味では、最初の世界中心的な世界観である。

グリーン 相対主義的な世界観
 オレンジの世界観の単一的なシステムの外に立つ。グリーンは、まだ垂直性・深層性に関する判断をすることができないため、相対主義と平等主義が代表的な行動パターンとなる。あらゆるものが広大な生命の網の相互関係の中に平等に位置づけられる。

ティール インテグラル・システムの世界観
 意識はある非常に重要なことに気づく。それは、「すべての視点は、現実のある重要な側面を非常によく捉えることができるということ」、そして「すべての視点は、現実のある側面を軽視、抑圧するということ」。それぞれの視点が正しいものであり、また、限定的なものであるということ。また、他の視点と比べて、ある視点はより正しいと言えること。すべての視点は平等ではなく、深層性というものが存在することに気づく。
 ティール段階において、「欠乏欲求」(deficiency needs)は「存在欲求」(being needs)にとって代わられる。

ターコイズ 統合的・包括的な世界観
 すべてのアイデアが構築物であることを認識する。私たち自身の「自己」の感覚さえも。こうした意識が目醒めると、人々はあらゆる概念的なプロセスの本質的な限界を認識する。そして、彼らは、徐々に「視点」にではなく、「視点」というものが立ちあがる空間に自然と共感をする。
 一人の個人としての「自己」ではなく、そうしたシステムそのものと自己を一致させる。

インディゴ、そしてその後 超統合的な世界観
 真の意味で「個を超えた」(transpersonal)世界観。その自己感覚は「個」というものを超えてひろがる。
 ターコイズは、ヴィジョン(ヴィジョン・ロジック)をとおして思考するが、インディゴは、多様な要素を織りあわせることなく、ただ全体を認識する


・「タイプ」(types)
あらゆる発達段階に存在する水平的な差異(例:男性性と女性性)
統合的な意識が開発されてくると、私たちは自己の存在のすべての側面を受容できる
タイプは、個人を区分けするための固定的な箱ではなく、ダイナミックで流動的な個性に対する豊かな洞察をもたらしてくれるもの。
コミュニケーションと成長を促進するために、自己と他者の中に働いているパターンを認識するための手助けとなる。
 

◆1-MINUTE MODULE

意識状態(概観)

五感を利用して、物理的な次元に触れる。
より微細な意識状態に移り、感情に関連する感覚に注意を向ける。
さらに微細な領域に入り、意識を知性の領域に向ける。
これまでに一つひとつ経験してきたすべてのものを目撃しているあなたの存在そのものに向ける。


 

◆1-MINUTE MODULE

四象限スキャン

自分の思考と感情(I)、他者の視点(We)、問題をとりまく周囲の状況(Its)、そして、自分がとり得る行動(It)について大まかに把握する。
I・We・It・Itsの象限に15秒ずつ触れて、そこに何が現れてくるかを見る。


あなたが立脚している視点は?
AQALを習得することは、多様な視点を共感的に理解するための能力を強化する。
あなたの見解に同意しない人は、能力領域において、あなたとは異なる意識の段階にいるのかもしれない。

多くの議論は、客観的な事実と証拠を並べることでは決することはできない。意見の不一致は、それらの事実に関する異なる解釈に起因している(それらの解釈は異なる主観的な意識のレベルに基づく)。

すべての人がある視点に立脚して世界を認識している。視点とは本質的に限定的、部分的なもの
真の課題とは、すべての人のための居場所をつくること。すべての人々が、安全にひとつの人生の停泊所から次の停泊所に--自己中心的、集団中心的、世界中心的、宇宙中心的という停泊所に--歩みを進めることができるための空間をつくること。可能な限り、あらゆるものに居場所を確保することによって、誤解--自らの限定性を認めるのを拒絶する部分的な真実--を認識するのを容易にする。

意識状態

状態と構造の混同(The State/Structure Fallacy)
意識状態と意識構造が同じものであるという間違い。
意識状態は、移ろいやすい体験として一時的なひらめきの中に生まれては、消えていく。私たちは、どの瞬間においても感情的な状態、知的な状態、精神的な状態を経験することができる。また、誰もが一日のうちに覚醒状態-夢見状態-熟睡状態という周期を経験する。一方、意識構造とは、長期的かつ安定的なもので、普通は数年のあいだは持続する。

高次のサトルやコーザルの意識状態といえども、基本的にあらゆる意識段階においてすべて人に体験可能なものとしてある。
解釈は体験と同等に重要で、意識構造が、その体験にどのような意味を付与するかに影響を与える。AQALとは、インテグラル段階の意識構造に基づいて、人間が体験する数多くの意識状態(そして、意識構造、身体、シャドー)を解釈するための枠組みである。


●ボディ・モジュール

三つの主要な意識状態(覚醒状態、夢見状態、熟睡状態)と三つの体は相互に依存し、関連しあう。すべての主観的な意識状態はそれと関係する客観的なエネルギー、あるいは、身体をもっている。

1.物質的、肉体的な「グロス・ボディ」

2.サトル・ボディ(subtle body)
 様々なエネルギー(「気」や「プラーナ」)や他の精妙なシステム(エネルギーの中心、チャクラ、指圧の経絡)により構成される。
 サトル・ボディの中でももっとも濃密なエネルギーは、肉体的な体とより緊密に関連。指圧の経絡として、生命力の脈動の身体的な感覚として経験する。より精妙なエネルギーは性と感情と、さらに精妙なエネルギーは知性や洞察と、そしてもっとも精妙なものは超合理的、法悦的、直感的な知性と関連する。

3.コーザル・ボディ(causalbody)
 無限の静謐さを湛えた体のことで、瞑想等の実践をとおして確かめられる。この体は言葉で説明することも概念的に整理することもできない。それは常にそこに在る目撃者の意識がエネルギー的に実体化したもの。それは、すべての経験が生まれることになる空間。


三つの体の鍛錬

筋力トレーニングをする時にも、ランニングをする時にも、愛する時にも、息をする時にも、三つの体のすべてを同時に意識的に鍛錬することができる。

1.意識・瞑想の実践をとおして、自らをコーザル・ボディに根づかせる
2.サトル・エネルギー領域の実践をとおして、サトル・ボディを活性化させる
3.肉体的な実践をとおして、グロス・ボディを強化する
4.ストレッチ運動とクーリング・ダウン運動をとおして、意識をグロス・ボディからサトル・ボディに移行する
5.座った状態での瞑想をとおして、コーザル・ボディに安息する

その時の感覚をじっくりと感じ、感覚そのものになる。目撃者としての意識の中にそれが立ちあがり、溶けていくのを観察する。
 

◆1-MINUTE MODULE

3ボディ・ワークアウト

「この瞬間のありのままに気づくこと。この瞬間、そして、あらゆる瞬間のありのままに気づくこと。私は世界のありのままであり、また、あらゆるものが生じる空そのものである」
「私は無限の中に解き放つ」
「私は生命の豊かさに向けて息を吸い込む」
「息を吐き出し、私は光に帰る」
「円を閉じることで、私は自由になり、満たされる」
「無限の自由と豊かさが、このかけがえのない人間の体として顕現する」
「地面に触れることで、私はあらゆる存在とつながる」

 

インテグラル・デディケーション
終わりに、実践の成果をすべての生きとし生けるものに捧げる。
 「私の意識(個人の内面、左上象限)と/私の行為(個人の外面、右上象限)が/あらゆる世界において(集団の外面、右下象限)/すべての存在のためになりますように(集団の内面、左下象限)」
「すべてを解き放つ」
「この瞬間、そして、あらゆる瞬間の」
「あるがままの中に……」

 

筋力強化
筋力強化の他には、全体的な健康にこれほどに驚異的な効果をもたらすエクササイズはない。筋肉の量が増えることで、新陳代謝が変化し、体重の減少と健康の維持が容易になる。
 

◆GOLD STAR PRACITCE

フォーカス・インテンシティ・トレーニング(FIT)

FITでは、グロス・ボディ(肉体)は、ウエイト・リフティングをとおして鍛える。サトル・ボディは、意識を集中し、エネルギーを体中に循環させることをとおして鍛える。コーザル・ボディは、各ワークアウトに取り組む中で、すべての感覚、光景、音声、感情に気づいている「永遠の目撃者」(the ever-present Witness)とのつながりを維持することをとおして鍛える。

 

1.グラウンド(Ground)
2.上昇(Elevate)交感神経を活性化させるために、短く、激しい胸呼吸を3-5回行う。
3.集中(Focus)意識を集中してエクササイズを始める。
4.回復(Recover)

その日のエクササイズを振り返り、記録する。感情、感覚、注意等の自身の主観的な状態について簡単に書き留めておく。
トレーニングの終了後、しばしのあいだ瞑想する。始める前に設定した意図やデディケーションを思い起こし、それらを完結させる。


トレーニングの前に、ワークアウトに関する意識の枠組みを設定する。明晰な意識を維持しつつトレーニング会場に運転していき、意識的な呼吸を心がけながら着替えるという、一連の意識づけの儀式をとおして行う。具体的に何に取り組むのかを明確化し、高次の意識を維持しつつ、トレーニングに励んでいる自らの姿をイメージする。実践に関する自らの意図(intention)デディケーション(dedication)を設定する際には、数分間、簡単な瞑想をして、自らの意図を再確認する。実践を自己を超えた誰か、何かに奉げてもいい。

 

◆1-MINUTE MODULE

筋力トレーニング

この1分間モジュールは、非常に短時間のあいだに、極度の負荷を体にかける。

1.FITのコア・サイクルを--グラウンド-上昇-集中-回復というサイクル--を始める
2.筋群が完全に疲れ果てるまでエクササイズをくり返す
3.「完全に疲れ果てるまで」とは、どんなにやりたくても、もうくり返しができない状態に到達する

 

 

◆1-MINUTE MODULE

エアロビック・ワークアウト

この1分間モジュールは、HIIT(high-intensity-interval-training)の短時間版。
最大限に集中して、高強度運動を行う。十分に力を発揮する。無理をし過ぎない。実施時間は1-3分間に留める。


ILPの栄養哲学
すべての人に当てはまる栄養摂取法というものはない。食事とは、個人的なものであり、自己理解と自己責任を要求するも、具体的にその人がどのような食生活を送るかは、非常に個人的な条件による

左上象限(意図):意識して食べる
 意識を鋭敏にすると、食事をしている中で、味覚の状態が徐々に鈍化していく(「味覚満腹感」)。意識的な食生活においては、少ない量を食べることが満足につながる。
左下象限(文化):意味ある食事
右上象限(行動):最善の食事をする
右下象限(システム):持続可能な食生活
 食料製品を購入し消費する時、それを意識せずに、その商品の隠れた歴史と来歴を支持していることになる。

小周天の基本的なガイダンス

エネルギーの下降方向の流入と生命力の充実の感覚は、息を吸い込む時に、それが体の前面を下降方向に下りていくのを実感することで意識的に深める。生命のサトル・エネルギーは、会陰(性器と肛門の間に位置する胴体の基底)で方向を変えて、背骨に沿って上昇することになる。そして、このエネルギーは、頭頂部の上のあたりに到達すると、自由と光としてより精妙な形で経験される。

不安感や倦怠感を感じている時、私たちは喋り過ぎたり、イライラしたり、間食をし過ぎたりする。そして、これらはすべて内部に充満しつつある生命エネルギーを放出する行為である。しかし、呼吸を利用して、日常のあらゆる体験を統御することをとおして--特に強烈でじっとしていることが難しい体験--こうしたサトルなストレスを耐える鍛錬をすることによって、より多様なエネルギー状態を楽しむことができるようになる。
緊張に反応するのではなく、それをじっくりと感じるという実践に取り組むこと。そうした感覚が単なるエネルギーと緊張に過ぎないことに気づく

3ボディ・セックス

性的な興奮が喚起する高度に衝動的なエネルギーを、ひろがりの感覚と深淵な愉悦の中に結びつける。そうした取り組みをとおして、体のサトル・エネルギーの回路を開き、強化できる。また、性的な実践は生命に満ちあふれている感覚をじっくりと味わい、それを、性器だけではなく、全身をとおして統御するための学びの機会を与えてくれる。

あなたの愛する人は、スピリットを内在させるスピリットの体現者となる。あなたが得ることよりも与えることを意図して、奉仕の気持ちに基づいてそれを実践するのであるならば……。

グロスのレベルでは、ホルモンの衝動に基いて、あなたとパートナーの体は触れあい、交じりあう。
サトルのレベルでは、二人は、深い感情的な交流をする。
コーザルのレベルでは、あなたは、性行為のあいだ、完璧に静寂で、途切れることのない意識の中に安らぐことになる。

あなたのすべての体の非二元の融合において、あの静寂・静謐な目撃者の意識が、無限の輝く愛そのものとして姿を現す。そして、すべてに浸透する愛そのものが、ふたりの裸の人間による愛の行為をとおして、芸術を創造する。この芸術において、あなたは無限の前に歓びとともに自己を明け渡し、恋人を神の腕の中に抱き留め、自己のアイデンティティをとおして、このような法悦を可能とする宇宙の神秘を感じる。

サトル呼吸の実践

「頭」「胸」「腹」という身体の三つの中心に注目する方法

統合医療の治療者は、しばしば、意識的な呼吸こそが健康を維持するための最高の実践であると言う。霊的修行の指導者は、意識的な呼吸が最高の霊的な実践であると言う。注意を内面に向けても、外面に向けても、私たちはそれから逃れることはできない。どのように呼吸するかは、健康と意識と幸福感に大きな影響を与える

思考と感情

仏教の実践のひとつである「マインドフルネス」(mindfulness)は、「感情的意識」(feeling-awareness)と呼ばれるべき。また、「観想者」(Witness)の意識とは、より正確には、「感情的な目撃者の意識」(feeling witness consciousness)と呼ばれるべき。円滑に流れる感情とは、透徹した知性に息づく自然な側面。それは、一般的に考えられているものとは異なり、思考の対極にあるものではない。明晰な思考とは豊かな感情そのもの

コーザルボディに安息する

「何もないということ」(no-thing-ness)こそがコーザル・ボディの本質。それは、瞑想中の意識状態や深い睡眠状態を特徴づける「静止」と「静寂」と「空」と言うこともできる。

根源的な意識が、覚醒状態-夢見状態-熟睡状態をとおして維持される。不変の純粋な意識が自己認識し、安定化する。

スピリットと融合する高次の状態は、この途切れることのない意識の流れに自己を明け渡すことを伴う。そして、それは覚醒状態、夢見状態、熟睡状態という状態の変化をとおして、そこに流れ続けるものに寄り添い続ける。

(長いので、続く