むかしむかし、
あるところに
一人の娘がいました。
三人きょうだいの一番目に生まれたその娘
は、気高く、頑張り屋でした。
一所懸命にお母さんの手伝いをして助けました。
まじめなせいしつの娘は、どこにいても信頼されました。
あるとき、村の集まりがありました。
『誰か、収穫したこの果物の計算をしてくれないか』
しーんと静まり返って誰も手をあげませんでした。娘は、物事が進まない場で黙っていることができず（誰もする人がいないのならじゃあ私がしようかな）
「はい、私がやります！」と引き受けました。
またあるとき、村の祭りがありました。
おいしくて美しいお料理を作って持っていき、
誰よりも早く到着して場を用意しました。たくさんのご馳走が並びましたが、
娘は「さあ、どのケーキにしますか？」と
率先して皆に配り、
自分は最後に残ったケーキを食べました。
会話を盛り上げそうな人に話をふったり、
みんなが楽しんでいるかを常に気配りしたりしました。
終わった後は、進んで後片付けをしましたが
みんなが片付けないことには腹が立っていました。
祭りが終わると娘は「楽しかったけれど、なんだか疲れたわ」と思いました。
やがて娘は結婚し、夫に尽くし、大切に子どもを育てていました。
ある日、嵐が来て、深い森で迷い途方に暮れていると、おじいさんがあらわれて優しくこう言いました。
「娘よ、お前に生き方の処方箋を書いてあげよう。
お前のようなエリート級の長女にはこれが難しいことだとわかっておる。
だがお前には大切なことなのだ。
よく覚えておきなさい
『駄目は1日にして成らず』
じゃよ。さあ、いきなさい。」
処方箋にはこう書かれていました。
・旅に出なさい。
・ダメになる勇気
・転ばぬ先の杖は折れる
・手を抜くと人生が回り出す
・貴女が居なくても地球は回る
・なんでもできる女からなにもしない女へ
・出されたケーキを誰よりも先に「私これ」と言って取り、そのあと何もしないこと。
・誰もする人がいなくても「私やります」と言わないこと。10秒待ちなさい。
・途中でやめても良い、逃げ出しても良い。
・不完全なまま前に進みなさい。
娘は目を丸くして驚きました。見たことも聞いたこともない教えが書かれていたからです。
おじいさんは秘薬も教えてくれました。
長女の４大レメディーじゃ。
Bar属、Mag属、Nat属、Carc.
お前にはMag-m. Nat-m. Carc.が良いだろう。
まず、旅 に出ることにしました。
ドキドキしながら、馬の世話を友達にお願いしてみました。
友達はすぐに「いいわよ！」と頼まれてくれました。家の人に「旅に出ます」と言いました。
すると、「行ってらっしゃい！」と言われて拍子抜けしました。
（子育ても掃除も料理も大丈夫なのかしら？）
娘は、夫と子どもと馬を残して遠くへ行きました。
一人で綺麗な海を見て、美味しいものを食べ、くつろいで過ごしました。日常から離れるのはいいものだなぁと思いました。自分のために時間を初めて使ったような気がしました。
「ただいま！」家に帰ってみると、ゴミが散らかっていて、馬の毛並みも乱れてはいましたが、馬も家族も元気で伸び伸びと笑っていました。「おかえりなさい！」
娘は驚きました。
（これが、おじいさんの言っていたことなのね！
貴女が居なくても地球は回る）
娘は少しづつ変わっていきました。
不必要に頑張りすぎていた自分に気づきました。
自分で自分に制限をかけていたこともわかりました。
自分で勝手に責任を負っていたことにも気づきました。
観察して、気づく、毎日。
「観察して、気づく。気づくだけでいい」
すると、どんどん楽しくなりました。
村の祭りがありました。色とりどりの美味しそうなケーキが並んでいます。
娘は誰よりも先にケーキを取りました。
「美味しそう！わたし、これがいいわ！」
みんな大喜びで笑いました。
あのおじいさんも頷いて微笑んでいます。
こうして、娘はのびのびと、楽しくくらしました。
先日、片桐航先生の「長女の魂百まで」というセミナーを受講してきました。
メルヘン仕立てに書いたのは私ですが、内容は講義で聞いたことであり
それは片桐先生の長年の臨床と研究の成果です。
メルヘンは、シュタイナーの志賀くにみつ先生のメルヘンの講義を受講した、ながおかともこさんが私に伝えてくれて大感動したものです。というわけで私はどんどんダメになる修行中です。
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淺田ゆみ
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