最近、ネットを見ていますと、たまに「医学部を出て医者にならないのは税金のムダ」

 

という意見を見かけます。

 

特に、起業したり、外資系企業へ行ったり、研究職や別分野へ進んだ医学部卒に対して、「税金を使って育ててもらったのに」という意見があります。

 

確かに、気持ちは分かります。医療は、道路や電気、水道と同じ「社会インフラ」だからです。

 

 

つまり医学部は、

 

「将来、社会へ医療として還元される」

 

ことを前提に、多額の税金が投入されている。

 

だから感情的には、

 

「医者にならないのはおかしい」

 

となる。

 

 

 

そもそも、なぜ医学部には多額の税金が必要なのか。

 

これは単純に、教育コストが桁違いだからです。

 

最先端の医療研究設備。

高度なシミュレーター。

解剖実習。

少人数教育。

 

一番の理由は、学生数に対して圧倒的に多い教員数。医学部は、教授や講師の多くが現役医師でもあり、各診療科ごとに専門家を大量に抱えています。

 

他学部のように大教室で数百人を一気に教える構造とは違い、極めて「人件費集約型」の教育です。

 

その結果、国立医学部では、学生1人あたり数千万円規模の公費が投入されていると言われています。

 

ここで、分かりやすい例として東大を出します。(別に東大批判ではありません。)

 

むしろ東大は、医師以外の道へ進んでも社会的インパクトを出す人が多く、「それはそれで国家への貢献」と比較的好意的に受け止められている特殊な大学かと思います。

 

東大理三。6年間で、学生1人あたり約7,000万円規模の税金が投入されるとも言われているそうです。

 

一方、東大工学部は4年間で約1,500万円程度。

 

「やっぱり医学部は高いじゃないか」

 

となるのですが、ここからが少し興味深い。

 

学年全体で見ると、

 

理三100人で約70億円。のうち、臨床医以外の道へ進む人は約1割前後とも言われています。単純計算すると、”医療以外へ流れる国家投資”は約7億円です。

 

一方、工学部は約940人。総額では約140億円規模とも言われています。仮に3〜4割が専門外へ進むとすると、投資ベースでは約45〜50億円規模が「本来の専門外」へ流れている計算になります。

 

工学部卒業生の多くは、必ずしも研究やエンジニアになるわけではありませんよね。

 

コンサル。

金融。

総合商社。

外資。

 

もちろん、それ自体は素晴らしいキャリアです。

でも、もし「専門外へ進む=税金のムダ」という理屈なら、工学部の方が流出総額は圧倒的に大きいのです。

 

 

結局、この問題は、「医療がインフラだから」叩かれやすい。社会維持と直結している分、期待値が高いのでしょうか。

 

 

ただ、国家への貢献という意味では、医師だけが唯一の正解でもありません。

 

研究。

起業。

行政。

AI開発。

教育。

 

結果的に、社会へ大きなリターンを返す人もいる。

 

だから私は、「医学部卒=必ず臨床医であるべき」

 

という単純な話ではないと思っています。

 

ただ一方で、

 

「国家的ROIの視点」

 

つまり、税金投資に対する回収効率という観点で考えると、また別の議論も出てきます。

 

特に最近よく見かける、「社会人から医学部へ」というテーマです。

 

ここは少し感情論ではなく、シビアに考えなければいけない問題だと個人的に考えています。(後編へ続きます)