入社初日に、退職代行を使って辞める。

 

そんなニュースを見て、少々驚きました。

 

おそらく事前に考えていたのでしょうし、ごく一部のケースだとは思います。ただ、それでも象徴的な出来事ではあります。

いまは超売り手市場です。より良い環境を求めて早く動くこと自体は合理的。合わない場所で無理に我慢する必要はない。早く決断する価値もあるでしょう。

 

ただ、環境を理由に最初の一歩を引き返す人は、次の環境でも同じ壁にぶつかるのではないか、と。

 

理想の会社、理想の部署、理想の上司。それらが最初から揃っていることは、まずありません。

 

 

ここで少し、時代の話を。

いわゆる就職氷河期世代は、「選べない」時代でした。企業は採用を極端に絞り、そもそもスタートラインに立つこと自体が難しかった。しかし、その反省は確実に企業に残っています。

リーマンショックの際、多少採用は減ったものの、かつてのように極端に絞り込むことは避けられました。世代の空白を生み、人事構造を歪めた就職氷河期の失敗を繰り返さないためです。

 

その結果、現在は景気の波があっても採用が安定し、若い世代にとっては「入口が閉ざされにくい」環境が整っています。

これは間違いなく、恵まれた変化です。

 

そして、その「選択肢の広さ」は他の分野でも同じです。

 

例えば司法試験。

 

かつての旧司法試験は合格率1〜3%、平均合格年齢は30歳前後という厳しい世界でした。私の大学の友人も、10年近く挑戦し続け、制度変更後にロースクールを経てようやく合格したケースがあります。いまは制度が整備され、努力の積み上げがより報われやすくなっています。(ロースクール経由の合格率は30〜50%)

 

また、パイロットもそうです。

 

以前は裸眼視力の厳しい制限があり、その時点で夢を諦めざるを得ない人も多かった。しかし、いまはメガネやコンタクトでも可能になり、門戸は広がっています。

 

さらに言えば、情報環境も大きく変わりました。

 

昔は技術も知識も“見て盗む”ものでしたが、いまはYouTubeやSNSを開けば一流のノウハウに触れられる。

環境としては、間違いなく今の方が整っています。

 

 

組織側も劇的に変わりました。

 

「背中を見て学べ」は通用せず、丁寧に教え、配慮しなければ若者は簡単に離れていく。つまり、個人も組織も、どちらも「優しくなった」とも言えます。

 

その中で、「合わなければ、いやならすぐ辞める」という選択が生まれるのは自然な流れかもしれません。

 

ただ、どんな環境にも必ずノイズはあります。

 

人間関係、業務内容、期待とのギャップ。

 

選択肢が増え、守られる環境が整った時代ほど、人は「選び直せる自由」に振り回されるのかもしれませんね。