連作ミステリ長編☆第3話「絆の言い訳」2-② | ☆えすぎ・あみ~ごのつづりもの☆

☆えすぎ・あみ~ごのつづりもの☆

歴史小説や現代ミステリー小説を主に綴っています☆
音楽や映画のreview/外国語・英会話の話題/
HANDMADEやCOOKING /
保護猫ちゃんや地域猫ちゃんとの暮らし/
などなど。

~私立探偵コジマ&検察官マイコのシリーズ~

 

Vol.2-②

 

「、、、ふたり、、、できる。知らせに。。。」

 

 息絶え絶えにしゃべるので、何の事かは分からない。

 分からないなりに、ベテランスタッフの女性が、かすかに意識を取り戻した白いコートの女性を励ます。

 

「大丈夫。気を失っただけね❔友達は❔独り❔」

 

 言葉にならないが、縦に弱々しく頷いた。

 

「今、救急車来るから。大丈夫。

しゃべらなくて良い。助かるよ❔」

 

 

 

 

 一生懸命に声かける女性スタッフの元へ、側近の若いマネージャーと、ベテランイベンターのスーツ姿と、それより少し若い30代くらいの〈統括〉マネージャーが近づいて来た。

 

「どうだ?息はあるか?」

「大丈夫です。さっき、うわ言みたいに何か言ってました。よくわからないけど。伝えたかったみたい」

 

「どこか刺されてるの?」

 女性スタッフは首を横に振る。

「わからないけど、上半身みたいです」

「刃物?」

 また女性スタッフが首を横にかぶりを振る。

 統括マネージャーである男性が、告げる。

「警察に依頼しよう。下手な推測するより正確だ」

 

 

 

 

 

 

「それにしても、あいつ、ひでえ態度だな。

ファンが酷いケガ負ってんのに『ライヴが済んでから見つけられて、好かった』だって。

 LIVE中に刺されても分かんないくらい、キャーキャーワーワーなのに、な」

 

 

 チラッとキツイ視線でイベンター担当者を睨み、感情を抑えてから統括マネージャーが、応える。

「すまんビックリマークあいつは、ああいう奴なんだ。

色々あってちょっとひねくれてしまった。悪いな。

これからも担当で居てくれよ❔」

 

「わかってるよ。

 佐々木さんに免じて、うちのイベンター処理にするよ。

ただし、あいつ。黒田玲苑を早く館内から追い出してくれよ。

楽屋で呑み始めたぞ?以前はもっとこっちを慮ってくれてたよ。

なあ!?

 

「わかってる。

 TVに出なくなってから、素行が本来のあいつらしくなったのかもだ。許してくれ。

 好感度高い男を演じてなくて済む分だけ、少し楽に成るかと思ったが、反動で荒れ出したんだ。

 それでも興行収入は増えてるんだから、ちょっと眼をつぶってやってくれよ」

 

「ごめん。佐々木さん。悪かった。

TVや動画だけで済ませてたファンが、ライヴにも来るようになったんだ。ありがたい事だ。

 すまない。黒田は、昔はあんな奴じゃなかったって、言いたかっただけだ」

 

 頷いてから、佐々木はイベンター担当者の肩を、軽くポンと叩いた。

 

「、、、ふたりで。。。」

 女性スタッフの腕の中で、もう一度白いコートの女性がうわ言をこぼした。本当に意識があるのを確認する。

 イベンターと統括マネージャーは、ぐったりして眼をつぶっているが、メイクの崩れた目尻と眼頭に、涙が溜まっているのを見届けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 警視庁から、捜査一課と初動捜査班が到着した。

 

 閉館して後、トランスポット車の大型トラックが2台、次の街へ向かって発車した。

 現場も、人の出入りが封鎖された。もちろんまだ現場検証完了するまで、明日以降しばらく、このホールは使えない。

 

 

 

 警視庁捜査一課の谷警部は、一旦、お堀の外側の霞が関方面へと移動した。振り返り、〈日本武道館〉を遠くから眺める。

 

『大きなタマネギ』とは、よくぞ言ったもんだ。そのまんま。

 この武道館。初めて音楽で使ったのはビートルズらしいが、こんな事件が客席で起こったなんて、初めてだ。

 

 

 谷警部は、千鳥ヶ淵まで再び近づいた。伝統ある武道と音楽のホール外観を近くからも見つめながら、スマホで連絡する。

 

「ぁ、イヤ1つ気になってな。

 アーティスト側やイベンターには黙ってろよ❔

被害者女性のショルダーバッグの内ポケットから、招待状の封筒が出て来たんだ。

ああいうのは、仕事関係にも配るもんなのか❔

身内でなくても〈INVITATION〉の封筒を受け取るのかい❔

誰かにプレゼントでもらったか❔」

 

 谷警部が、レスポンスに対してニヤリと口角を上げた。

 

「そうかい。音楽関係者には黙ってろよ!?

向こうから言って来るまで、なビックリマーク

 

 

 

 

 

ーーー to be continued.