小柄のフルート奏者さんとのレッスンその①「右手の小指が突っ張って痛い」 | 音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

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♪アレクサンダー・テクニークを演奏に生かすレッスン♪
~ココロを自由に、カラダも自由に、自分らしく生き、演奏する~
アレクサンダー・テクニーク教師&フルート奏者の嶋村順子です。
演奏者の心理的・身体的問題を解決する方法を探求しています。

先日大阪レッスン会にいらした小学生の生徒さんとのレッスンの様子です。
小学4年生の女の子、大人に比べたらとにかく小柄です。
体は小さく、腕も細い。胴廻りなど私の半分ではないかと。。。
フルートが大好きで、上手になりたくて練習も熱心です。
教えていらっしゃる先生の良いご指導もあって、これまで迷うことなくフルートに向き合ってきたそうです。

で、なぜ私のレッスンにいらしたか。
ご本人と、ご一緒にいらしたお母様(レッスンのお申し込みもお母様から)の双方に伺うと、次のようなお話でした。

「右手の小指が突っ張ってしまって、痛い」
「右手の形が良くないから直しましょう、と先生に言われる」
「でも、どうやって直せばいいのかわからない」
「最近は、レッスンで指のことばかり注意を受けるうちに、迷宮に入ってしまった」

フルートが大好きなお子さんですが、指のことが気になって最近はちょっと楽しくなくなってしまった。
そんなお子さんの様子を見て、お母様は何か解決策はないかと探して、私のところにご連絡をくださいました。


【右手の小指が突っ張ってしまう理由】

小柄な方とのレッスンではフルートの構え方に時間を丁寧に取ることが多いです。
体格によって、あの長さの、あの重さのフルートを横に構えて持つことの難易度の違い、あると思いませんか。
背の高さ、腕の長さ、手の大きさ、それぞれの筋力は、フルートを構えるのに重要な要素です。
フルートを吹く人のすべてが右手の小指を突っ張ってはいないと思います。

私たちアレクサンダー・テクニークの教師は、
「右手の小指を突っ張らないようにする方法」を教えるのではありません。
「この小学生の女の子が右手の小指を突っ張ってしまう原因がどこにあるのか」
を見ていきます。


理由はすぐにわかりました。
フルートの構えには少し軸の回転を必要とします。
具体的に言うと、頭部を首から上で少し左に向けます。顔の向きと胴体前面の向きを少し変えています。
それによって、楽器を持ち上げる腕の使い方の効率が良くなり、腕の負担や体の負担が減ります。
熟達したプレイヤーの様子を見ると、ほとんどそうやっています。

このお子さんも、それをやっていないわけではなかったのですが、
この小柄な体格であればその回転をもう少し割り増ししたほうが長い横笛を持つには楽になります。
なので、もう少し今までよりも顔を左に向ける角度を増やしてみてもらいました。


【顔を左に向ける動きを丁寧に見る】

さて、顔を左に向ける時、その動きがどこで起きているのかを確認します。
頭の向きを左右に回転させるのは首ですよね。
首のマッピングはこのときとても大事です。
本当の首の長さ、本当の頭の乗っている高さ、ここを確認します。
ほぼ耳の穴の高さです。この高さから動けることを思いながら左に回転します。
参考→ https://ameblo.jp/espressivo1214/entry-11496748798.html

もし実際の高さより下からが首だと思って回転すると、首や喉が窮屈な感じがすると思います。
頭の中で首の長さのイメージをいろいろ変えつつ試してみると面白いですよ。

小学生さんには「キリンさんが美味しい葉っぱはどこかな〜って見回すみたいに左を向いて見て」
というと、素晴らしい動きでした。(お子さんは首の押し下げの習慣がまだ少ないのでいいですね!)
喉と首にスペースのある、自然に高い位置で顔が左を向けました。


【腕を身体の前で使うこと】

先に結論から言うと、
フルートを構えるときに両腕を身体の右側に伸ばして持ってしまうと、指に必要以上の負担がかかります。
顔と身体とを同じ正面に向けてフルートを持ち上げると、こうなってしまいますね。
左手は胸の前を通過して右肩の近くで楽器を支えることになります。非常に厳しい。
右腕は肘の位置が身体より後ろにいかざるを得ない状況なので、肩甲骨を含めた腕全体が後ろに引き込まれます。


人間の腕は身体の前方向で使うようにデザインされているそうです。
頭を左に回転させることで、腕を身体の右側に引っ張ることなく、胴体の正面に近いところで使うことができます。
この構えに関しては体格の個人差や、それまでの構え方の癖の個人差があって、
みなさんに全く同じアドバイスはできないので、お会いして伝えさせていただけるのが一番です。


この小柄な小学生フルーティストさんは、
・キリンさんの首でいつもより多めに左に顔を向けてみよう
・両腕を身体の前、「前ならえ」の方向で使ってみよう
この2つのアドバイスで楽器の構えの負担が全身に分散されました。
そのおかげで右手の指がふわっと緩み、小指を突っ張る必要もなくなりました。


【”正しい構え”と”動ける構え”】

小学生フルーティストさんはここで既にお目々がキラキラして、「フルートが軽い〜」と。
横ではお母様が私の言葉を熱心にメモしていらっしゃいます。
でも、ここで最も大切なことをお話ししました。

私が今アドバイスしたのは「正しい姿勢、正しい構え方」ではありません。
楽に感じたりうまくいったのは「動ける姿勢、動ける構え方」だからです。


首が自由に動けること、頭がバランスを取り続けられること、顔の向きを自由に変えられること、
腕が顔の向きに合わせてフルートを支え、唇にフィットさせてあげられること、
これはすべて「身体全部が協力しあって動ける状態」だからです。
顔の向きも肩の位置もお腹の向きも、全部動けていいんですよ。

「動いていいって言うのは驚きです」
お母様の表情が物語っていましたが、指導には「正解」の提示が多いですね。
妥当解はあると思います。
でも、あらゆる可能性を見出すために、私たちは動き続けたいものです。

ひとまずこの記事はここで一旦終えます。
続く、小柄のフルート奏者さんとのレッスンその②「音が長く続かない」まで少しお待ちください。

 

 

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嶋村順子
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