フルート・トラヴェルソやルネサンス・フルートの演奏家のトレーニーさん(プロコースの生徒さん)の今回の相談は、
早くて細かいパッセージの時にタンギングがうまくいかない。
さて一度演奏してもらって、どんなことに気づいたかを言ってもらいました。
「タンギングというより、フィンガリングのバタつきのせいで楽器が動いてしまったので、タンギングの反応がうまく伝わらなかったみたい。」
さすがトレーニーさん、よく気づきました。
問題はタンギングではなく、フィンガリング(指の動き)にありました。
アレクサンダーレッスンあるあるです。
うまくいかない原因は最初に予想したところにはないことって、よくあります。
それを確認するために、そのフレーズを音を変えずに(ひとつの音だけで)リズムをタンギングで演奏してもらいました。
タンギングは非常に明確にできています。
舌の動きの問題はほとんど無いことが確認できました。
指の動きとの関連でうまくいっていない、という推測はあっていそうです。
さて、ではフィンガリングを見てみましょう。
古楽器フルートはキイがほとんどなくて穴の数も少ないので、現代の楽器に比べて運指はまことに複雑で難しいのです。
細かく早く動かしたい。
扱いにくい指使いの連続、その条件下で最大限に俊敏に指を動かしたい。
そのために起きていたことは、
手や指のみに「早く!」という指令を送ったことにより、腕全体が固まることでした。
指を盛大に機敏に動かすには、手のひらや手首、そして肘も肩も全てが柔らかく動けること、
腕や手の、ほかの場所でやっている動きと連動して、腕全体の可動性が自由であることが大切です。
再度、頭脊椎のことを思い出してもらい、腕全体の自由さを意識して吹いてもらいました。
すると、最初に吹いた時よりも手や楽器のバタつきが格段に収まるとともに、タンギングは全く問題なく細かいパッセージを刻んでいました。
このレッスン前と後の演奏の違いを見ることも大きな学びです。
授業に参加していた他のトレーニーさんたちは、動きに関する理解が変わると、動きが変わり、演奏も変わる現場を目の当たりにします。
このような事例を多く見ることは、そのまま教える時にも必ず役にたちますね。
そんなプロコース授業のひとコマでした。
嶋村順子