身体の地図~呼吸のこと その3 | 音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

♪アレクサンダー・テクニークを演奏に生かすレッスン♪
~ココロを自由に、カラダも自由に、自分らしく生き、演奏する~
アレクサンダー・テクニーク教師&フルート奏者の嶋村順子です。
演奏者の心理的・身体的問題を解決する方法を探求しています。

 

呼吸についての「その3」です。


今回は、たくさん息を吸ったり吐いたりしたい時の呼吸、より積極的な呼吸についてです。

管楽器演奏や歌う時のブレスはこちらですね。


通常時の呼吸の仕組みを知ったうえで、

いったいどんなことを意識すれば演奏時のブレスがうまくいくのか。

私がこれまでアレクサンダー・テクニークで学んできたことや、

実際の体験から言えることを書いてみます。


と、その前に

アレクサンダー・テクニークで最優先に考えたいことを思い出してください。

それは、頭と脊椎を自由にしてあげるための「自分への指示」です。

(参照)

「頭と脊椎の関係(プライマリー・コントロール)

http://ameblo.jp/espressivo1214/entry-11256115099.html  

「方向性~ディレクション」

http://ameblo.jp/espressivo1214/entry-11272354441.html  

  

より効率的かつ楽で自由な身体の使い方ができるように

自分自身に出す指示、または意図することです。



「頭が動けて、自分全部がそれについていく」


人間が本来持っている協調作用(バランス調整機能)を邪魔する

不必要な筋肉の緊張を解放してください。


自分全体が楽でありながら、生き生きした質を持った状態になるように。


これを意図して初めて、ブレスの情報が活かされるのです。

マッピングなどの身体の各部の知識は必要ですが、

それを上手く使いこなすには、とにかく自分のこれまでの習慣をやめて

ニュートラルな状態でやってみることです。


頭と首を楽にして、自分全体を思い出しながら次を読んでくださいませ。




<積極的な呼吸>


・・・積極的に息を吸う時・・・


A:肋骨

通常時の呼吸よりも肋骨が上方向に動けることをより意識します。

(「呼吸のこと その1」の中で肋骨はバケツの取っ手のように

可動性があることを書きました。)

そうすると、外肋間筋が働いて肋骨どうしの幅が広がり、

胸の容積がぐっと広がります。



         外肋間筋の図     フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-外肋間筋

この時、筋肉のどこかで頑張るような緊張は必要ありません。

「肋骨は動けるよ」と思ってください。


さらに肋骨を動きやすくする助けになる情報は、肋軟骨(ろくなんこつ)です。

肋骨は、身体の前面では胸骨のところで軟骨を間に挟んでつながっています。

軟骨なので骨よりも柔らかく、可動性が高いのです。(下の図の薄緑色が肋軟骨)




        フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-肋軟骨

B:脊椎

肋骨が動くことを助けるヒントが脊椎にもあります。

呼吸によって脊椎の湾曲が少々変化することをご存知ですか?

肋骨がぐわっと広がるのですから、12対の肋骨がくっついている脊椎にも何らかの動きがありそうですよね。

   
           脊椎の図   フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-脊椎


どう動くかというと、


息を吸うと脊椎全体は縮んで短くなり、胸部のカーブがもっとまるくなります。

息を吐くと脊椎は伸びて元の長さに戻り、胸部のカーブも戻ります。


なので積極的に息を吸う時には、上の図の胸部湾曲が自然に少しだけ前に丸まります。

もし上体を反らしたまま息を吸うと、この動きを阻害していることになりますね。

「胸の脊椎がまあるくなる」とイメージしてください。

でも、極端な前かがみをやりすぎないでください。ほんの少し、です。


C:横隔膜

 横隔膜は肺の膨らみに応じて下がります。

この際に横隔膜がじゅうぶん下がれるように、できるだけ腹筋あたりの固めをやめてあげます。

腹筋が固いままだと横隔膜は行き場がなくなり、肺もそこまでしか膨らむことができないからです。


私はフルートを吹くためには腹筋を固くして支えを保つことが必要だと思い

(それ自体は間違ってないのですが)、

ブレスの最中も絶え間なく腹筋を固め続けていました。

これは大間違いでした。息を吸う時にはお腹を緩めてあげましょう。


※横隔膜を意識的にコントロールして引っ張り下げることはとても難しく、特別な訓練がいりそうです。私は横隔膜自体に直接働きかけることは意図しません。横隔膜が自由に動けるよう、周辺の邪魔をなくすことを意図します。


D:骨盤

 息が入ってくる時には骨盤底筋も下に下がって、腹部の臓器がさらに骨盤内に進みやすくなります。横隔膜が下がりやすいように、骨盤底筋も呼吸のサポートをしてくれます。




・・・積極的に息を吐く時・・・


A:肋骨

内肋間筋が働いて肋骨の幅が狭まり、肋骨は下に下げられます。



               内肋間筋の図フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-内肋間筋


B:脊椎

脊椎は息を吐くにつれてカーブが伸びていき、長くなっていきます。

本来、息を吐き出すと脊椎は伸びるのです。(息を吸う時には少し前に丸まります。)

息を吐き出しながら、脊椎が長くなっていくようにイメージしてください。


C:横隔膜

腹直筋、腹横筋など腹部の呼気筋を意識的に働かせて、

臓器と共に横隔膜を上に押し上げます。

通常時の呼吸では、外肋間筋と横隔膜が緩むことで息が出ていくのですが、

積極的な呼吸の際には腹部の筋肉がしっかり働いて息を吐き出します。


でも、息を吐ききった後はすぐに吐くための筋肉(腹筋)はお仕事をやめましょう。

いつまでもお腹を固くしていると、息が入ってこられません。


D:骨盤

骨盤底筋も上に上がっていきます。

腹筋や骨盤底筋の力を借りて、肺の中にある空気が通常時よりも積極的に吐き出されます。

「息をコントロールして吐き出す時には腹筋の支えが必要」と考えてられていますが、

腹筋だけでなく骨盤底筋の存在も知っていると良いと思います。

するともっと楽に身体全体で吹くことができます。


息を吐く時は骨盤底筋も上がって、

息を上に押し出すサポートをしてくれているのです。




          横隔膜と骨盤底筋の図フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-横隔膜と骨盤底筋


以上が積極的な呼吸、楽器を吹く呼吸に関して私が理解していることです。


この理解をもとにブレスを変えて行った結果、

ブレスが以前より長く続くようになり、ブレスの音(息を吸い込む音)が減り、

音に伸びが出て、演奏する時の疲れが減りました。


次回「その4」は、まとめです。