身体の地図~呼吸のこと その1 | 音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

♪アレクサンダー・テクニークを演奏に生かすレッスン♪
~ココロを自由に、カラダも自由に、自分らしく生き、演奏する~
アレクサンダー・テクニーク教師&フルート奏者の嶋村順子です。
演奏者の心理的・身体的問題を解決する方法を探求しています。

 

今回は、演奏に関わる呼吸について

AT(アレクサンダー・テクニーク)で学んだことを皆さんとシェアしたいと思います。


以前の記事「私のミス・マッピングと間違っていた知識」

   → http://ameblo.jp/espressivo1214/entry-11257822728.html

でも触れていますが、

一応音楽大学で学んだ自分でさえ、呼吸に関する正確な情報をもっていなかったこと、

そしてかなりの年数その誤解に基づいて練習し、

さらに生徒さんにも教えてきてしまったことを、反省を込めてここで打ち明けます。


それでは、まずは肺のマッピングから始めましょう。



<肺はどこにあって、どれだけの大きさなのか>


肺のおおまかな位置は皆さんご存知だと思いますが、

一番上は鎖骨の上から少し出るくらいの高さにあることはあまり知られていません。

そして下は胸骨の下、つまりみぞおちのあたりまであります


下の図の点線が鎖骨と肋骨、胸骨です。肺はその中にあります。



フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-胸郭周辺図



肺のほとんどは肋骨(あばら骨)によって守られていますが、

この肋骨はなんと結構動ける骨なのです。


肺の中に空気がたくさん入ると、肺は大きく膨らみ、

それと同時に肋骨も広がってくれるため、

私たちの胸のあたりは息を吐いた状態(肋骨が閉じている状態)に比べて

かなり大きく膨らむことが出来ます。


参考になりそうな図と解説を載せましたので、興味がある方は読んでください。

ガイコツ君や筋肉君の絵が苦手なあなたは、

「肋骨はけっこう動けるんだぞ!」ということを覚えておいてください。


下の肋骨の図で、中心から左右に何本も出ていてぐるっと曲がり、

かごのように肺を包んでいるのが肋骨です。

横向きの図で見ると、身体の前面方向に下向きに並んでいます。


この1本1本が、息を吸うとまるでバケツの取っ手のように上方向に持ち上がり、

肺が膨らむサポートをしてくれます。

息を吐くとまた肋骨たちは下方向へ下がるのです。

こうして骨を上下しながら肋骨同士の幅を広げたり狭めたりして、

肺が膨らむサポートをしています。



フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-胸郭 正面  

フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-胸郭 横から


肋骨が上下する時に使われているのは肋間筋という、肋骨と肋骨の間にある筋肉です。



     フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-外肋間筋   ←☆印が「外肋間筋」 


『筋肉.guide』のサイトにはこう書いてあります。


外肋間筋

・肋骨と肋骨の間を走行している筋肉です。

・主に肋骨を挙上する働きをしていますが、

 これは胸郭を広げ、吸気の際に、ガス交換が上手く出来るようにする為の作用です。

・また、呼気においてもこの筋は働きます。


また、この下層に<内肋間筋>という同じような筋肉があります。

筋繊維の走行が外肋間筋とは逆で、肋骨間を狭くします。


内肋間筋

・外肋間筋と同じく肋骨と肋骨の間を走行している筋肉です。

・主に肋骨間を収縮する働きをしていますが、

 これは胸郭を狭くし、呼気の際に、ガス交換が上手く出来るようにする為の作用です。

・肋骨・外肋間筋・最内肋間筋と共に胸郭を形成している筋肉です。



さて、次は肺の背中側の様子についてです。


私たちの背中は決して平らではありません。

私たちの胴体は肋骨がぐるっと曲がって形作る「円柱形」なのです。

そこで下の図を見てください。



フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-肋骨と肺 断面   フルートとアレクサンダー・テクニーク              ~ココロもカラダも自由に自分らしく~-肺断面画像


ふたつとも、図の上方向が身体の前面、下が身体の背面です。


下の中央に脊椎があります。

下へとんがっているのは棘突起で、背中の皮膚からすぐ触ることが出来ます。

触れることのできるこれらが縦にずらっと並んでいるのを、

よく「背骨」であると誤解しています。


実際に体重を支えている脊椎の中心部は、

棘突起やその上の穴(髄液が通る脊柱管)より上にある太い部分です。


さて、この脊椎と肋骨の位置を見てください。


肋骨は脊椎中心部よりも後方にせり出しています。


肺が肋骨すれすれまで膨らむことが出来るということは、

なんと肺も脊椎より後ろにまでせり出して膨らむことが出来る、

ということなのです。

右の写真の黒い部分は肺ですので、

脊椎よりも背中側に出っ張っているのが良くわかりますね。



肺の実際の大きさがイメージできましたでしょうか。


肺は上は鎖骨から下はみぞおちまで、背中側は脊椎よりもっと後ろまであるのです。


肺は、ものすごく大きくなることが出来るのです。これは嬉しいことです。


そして、肺を守っている肋骨は単に頑丈な鎧というわけではなく、

弾力性を持って肺が膨らむことをサポートしてくれる構造になっているのです。



呼吸のかなめ、肺のマッピングを再確認することは、呼吸の改善につながります。


事実、私は年齢的には肺活量がどんどん低下するはずですが、

数年前に自分の中の肺の知識が変わったことでなんと肺活量が増えました。

その効果は、フルートでブレスが以前より続くようになった、

ブレスの時の息の音が少なくなった、など多々あります。


ここで思い出すのが、良く言われる「腹式呼吸」です。

「胸式呼吸」と対比して語られ、

歌や管楽器には「腹式呼吸で」と世の中では広く言われていますね。

この二つの言葉については後日もう少し整理して書きますので、

今回はとにかく実際の肺がどこにあるかを知ってください。


すくなくとも肺は「腹部」にはないですよね。

みぞおちより上、「胸部」にあります。


そしてとても大きく膨らむことが出来ます。


次回は、横隔膜についてです。