ATの原理<1>頭と脊椎の関係(プライマリー・コントロール) | 嶋村順子 アレクサンダー・テクニーク & Flute 

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♪ アレクサンダー・テクニークを演奏に生かすレッスン ♪
~ココロを自由に、カラダも自由に、自分らしく生き、演奏する~
アレクサンダー・テクニーク教師&フルート奏者の嶋村順子です。
演奏者の心理的・身体的問題を解決する方法を探求しています。

さて、そろそろアレクサンダー・テクニークをどんなふうに演奏に役立てるのか

イメージしていただけるようになったでしょうか?


そこで、AT(アレクサンダー・テクニーク)の原理について説明しようと思います。


AT7つの原理」と言われる7つの要素があります。

(この7つに関しては先生や関係著書により、言葉や表現、順序が少しずつ違うこともあります)

まずそのひとつ目、「頭と脊椎の関係(プライマリー・コントロール)」について説明します。


これまで書いてきた中に、念仏のように再三現れてきた自分に指示を出す言葉がありましたね。

「頭と首が自由に動いて、身体全体がついていく」

なぜこの言葉を言うのかを、これから説明します。




まずわかりやすい実験をしてみましょう。


今、あなたが椅子に座っていたら、

普段通りに「床に落ちているペンを拾う」「上から背中に手を回してどこまで届くかやってみる」「立ち上がってみる」という3つの動作をしてみてください。

そしてどんな感じだったか覚えておいてください。


つぎに、わざと首にぎゅっと力を入れて縮めてみてください。

こうやって頭を押し下げた状態のまま、さきほどの3つの動作をやってみてください。

違いはどうでしたか?

明らかに頭を押し下げている方が身体の動きが制限されて、

やりにくかったり痛かったりしたと思います。


それでは今度は首の力を緩めて楽にしてあげてください。


そしてあなたの頭がふわふわと軽くなり、

頭が身体から遠い方へ遠い方へと離れていくようにイメージしてみてください。


その「頭ふわふわ」につられて肋骨も楽になって息がすうっと入ってくる、

身体全体が上方向へ楽に伸びていくように思ってみて、


それで3つの動作をやってみてください。



2回目がやりにくいのはよくわかると思いますが、

もし1回目と比べて3回目の動きに何か新しく気づいた良いこと

(楽だ、簡単になった、など)があれば、

それが「頭と首が自由で、身体全体がついていった」状態です。


もしよく違いが分からなかったとしても大丈夫です。

普段やっているやり方から離れることは簡単ではありませんから。

なにしろこれまで考えもしなかった繊細なレベルでの実験です。

「よくわからない」全然OKです。

もし実際にATのレッスンを受ける機会があれば、きっと体験できます。



この実験でわかることは、頭と首を固めていると動きが阻害される、ということです。

逆に頭と首が繊細に自由に動くことが出来ると、動きもスムーズにいきます。


頭と首の状態が、身体全体の動き、腕や脚の動きにも影響するのです。




ところで、

人間の身体にはもともと備わったバランス調整のシステムがあります。

このシステムが姿勢の微調整をしてくれるのです。


たとえば両足で立って身体を少し前に傾けていくと、

脚の筋肉が頑張り始めて倒れないようにバランスを取りますよね。

こういう細かい微細な調節をする機能が人間の脳と身体にはあるのです。


その一番根源的な調整器官がどこにあるかというと、

頭蓋骨の後ろ側の一番下と頸椎(首の骨)の一番上を繋いでいる細かい筋肉群です。

後頭下筋群といいます)


ここでキャッチした情報(姿勢が傾いているよ、バランスが崩れてきているよ、など)

が脳に送られ、

脳から胴体や四肢へ「バランスを調整してちょうだい」と指令が送られることで

バランスを取ることが出来ます。

すべての脊椎動物にはこの機能が備わっていて、

すべての姿勢と動きに影響していることは生物学的に証明されている事実です。


もちろん日常生活上の動きだけでなく、

より繊細なコントロールを必要とする演奏に使う動きにもそれは反映されます。


頭と首を固めたような状態で、この機能がうまく働かないとどうなるでしょう。

首を固めると後頭下筋群のセンサーがうまく働かず、身体の微調整がうまくいかなくなり、

本来の楽な姿勢や動きを阻害してしまいます。


アガって身体が固くなると演奏が思い通りにできず、

にっちもさっちもいかなくなる原因のおおもとはここにあるのです。


人間がもともと持っているこの素晴らしい調整器官のことを

アレクサンダーさんは「プライマリー・コントロール」と名付けました。


アレクサンダー・テクニークの原理のひとつめは、


「プライマリー・コントロールを邪魔しないことなのです。


「コントロール」とついているせいで、

何かをコントロールする手法のように誤解されることがありますが、

そうではなく、

人がみなもともと持っているこのコントロール機能を「干渉しない」

つまり邪魔しない、ということです。


ATは何かを「する」のではなく「やめていく」テクニークだ、


と言っているのはこのことなのです。


そしてプライマリー・コントロールの邪魔をしないためには、

後頭下筋群が繊細に身体の状況をキャッチできるように、

頭と首のあたりをいつも繊細に動けるようにしてあげることがたいせつになってくるのです。


人間以外の脊椎動物には問題がなく、

人間だけが文明の発達した暮らしの中で得た恩恵と引き換えに退化させてしまったのが

この「プライマリー・コントロール」です。


でもプライマリー・コントロールを再び良い状態にするよう、

自分を教育しなおすことが出来ます。

それがアレクサンダー・テクニークなのです。