----- 池田俊二氏に学ぶ。 -----

----- 著書 『日本語を知らない俳人たち』 (2005-03, PHP研究所、 1700+税) -----


高等学校で古文を習ったときも、私は良く理解できていなかったのですが、

動詞や助動詞の活用について、分かりやすく解説されたページがありますので、

ここに抜粋して紹介します。詳細は本を購入してお読みください。


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(P78から)【動詞・助動詞活用の覚え方】


・・・ 一番多いのは、四段活用と上二段・下二段の混同誤用です。

動詞活用の大部分はこの三つに属するのですから当然ですが、

これを区別する原理は極めて簡単です。

 その他に六種類の活用がありますが、いずれも数が極めて限ら

れています。上一段は今挙げた六語でほぼ尽きると思います。

下一段に至っては「蹴る」の一語だけです。これ以外には変格活

用と呼ばれる、その名のとおりにやや変則的なものが四種類あり

ますが、こちらの方も、

カ変は 「く(来)」 一語のみ、

サ変も 「す(為)」 一語のみ(「講ず」のようににごる場合もあり)、

ラ変は 「あり(有)」 「をり(居)」 「はべり(侍)」 の三語のみ、

ナ変は 「しぬ(死)」 「いぬ(往)」 の二語のみです。


 あとに挙げた六種類は何の苦もなく、機械的にでも覚えられます。

 前の三種類を判別するには、未然形(否定の助動詞「ず」の上に来

る形)を見るだけでいいのです。

 「行く」 「思ふ」 のように 「行かず」 「思はず」 とア段になれば四段活用、

 「起く」 「恥づ」 のように 「起きず」 「恥ぢず」 とイ段になれば上二段活用、

 「受く」 「考ふ」 のように 「受けず」 「考へず」 とエ段になれば下二段活用、

 ・・・ これだけのことです。


四段活用は 

未然「行か(ず)」、連用「行き(たり)」、終止「行く」、連体「行く(時)」、

已然「行け(ども)」、命令「行け」、


上二段活用は

未然「起き(ず)」、連用「起き(たり)」、終止「起く」、連体「起くる(時)」、

已然「起くれ(ども)」、命令「起きよ」 

・・・ か、き、く、け、こ のうち、上の方の 「き」 と 「く」 の二つに

わたるので、上二段といいます。


下二段活用は

未然「受け(ず)」、連用「受け(たり)」、終止「受く」、連体「受くる(時)」、

已然「受くれ(ども)」、命令「受けよ」となります。


ただし、こんなものを新に全部覚える必要は全くありません。その場で 

「ず」 「たり」 「時」 「ども」 等をつけてみればすぐに分かることです。

我々が如何に文語に不慣れでも、「行かたり」 だの 「受くれ時」 だの

とやる恐れは先ずありません。


ただ一点、四段活用では終止形と連体形は同じだが、上二段、下二段では、

「起く」 「起くる時」、 「受く」 「受くる時」 のように、終止形の下に 「る」 を

つけたものが連体形になることだけに注意すればいいでしょう。

連体形について敢えてもう一つつけ加えれば 「起きる時」 「受ける時」 は口

語で、文語では 「起くる時」 「受くる時」 だということくらいでしょう。

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----- 俳人檜紀代氏に学ぶ。 -----

----- 著書 『俳句の手ほどき』 (1998-09, 本阿弥書店、 1785円) -----


前回(番外10)からの続きです。


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 俳句の約束ごとの一つで、一句の中に一箇所切れが必要である。

発句に用いる主要な切れ字として 〔切字十八字〕 があり、「かな」 

「もがな」 「し」 「じ」 「や」 「らん」 「か」 「けり」 「よ」 「ざ」

「つ」 「せ」 「ず」 「り」 「ぬ」 「へ」 「け」 「いかに」 があげられ

る。このうち 「せ」 「れ」 「へ」 「り」 は動詞の命令形語尾にあた

り、「し」 は形容詞語尾を指す。


 芭蕉は 「切字に用ふる時は、四十八字皆切字也。用ひざる時は

一字も切字なし」(去来抄)と述べている。「切れ」は先にあげた十八

字に限らず、体言止、助詞、用言の終止形・連用形などでも起こる。


【や】 助詞(間投助詞)。用言・助動詞の終止形、命令形、名詞、助

詞などに付いて相手に働きかけ、相手の気持を引き、また話し手の

感動を伝える語で、意味を強めたり、詠嘆、呼びかけの意を表した

り、語調を整えたりする。


【かな】 (哉) 助詞。体言及び活用語の連体形に付く終助詞。詠嘆

の意を表わす。・・・だなぁ。 ・・・ものだなぁ。 感動を表現するため

に、俳句の末尾に使われることが多い。


【けり】 助動詞 (活用 けら・○・けり・ける・けれ・○) 動詞・助動詞

の連用形に付く。ある事実が真実であったことを新たに認識し、感嘆

するのが本意。思えば・・・なのだなぁ。 はっと・・・思いあたった。

・・・していた。 ・・・した。 ・・・ということだ。 何でも・・・だというよ。


【終止形の切れ】 四段活用の場合、終止形と連体形が同じ。直後に

名詞があれば、名詞に掛かり、「切れ」 ることにはならない。


【連用形の切れ】 直後に名詞があっても「切れる」 ことにはなるが、

終止形の切れの方がよい。


【「ぬ」の切れ】 完了の助動詞 「ぬ」 の終止形と、打消しの助動詞

「ず」 の連体形があるが、連体形は 「切れ」 にならないことがあり、

「ぬは切れ字」 と考えないで活用形を確かめる。


【「か」の切れ】 終助詞で、体言及び用言の連体形に付く。

 (1) 疑問を表わす (2) 問いかけを表わす (3) 反語を表わす

 (4) 詠嘆・感動を表わす (5) 「ぬか」 「ないか」 の形で、勧誘・

 命令の意を表わす・・・などの用途がある。


【「よ」の切れ】 終助詞。 (1) 用言の命令形に接続して命令・許容・

 禁止などの意を表わす (2) 体言や活用語の終止形・連体形など

 に接続して詠嘆の意を表わす (3) 体言に付いて呼びかけを表わ

 す (4) 種々の語に付いて意を強める働きをする。


【名詞と名詞を置く切れ】 意味がつながらない名詞が続く場合は、

それらの名詞の間で「切れる」 ことになる。


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 浅野信著 『切字の研究』 によれば、『専順法眼之詞秘之事』 

という本の中に、「発句切字十八之事」 とあり、元禄時代を中心と

して、その前後にわたり、初心者のための作法事や式目書が刊行

され、それらの書ごとに切字の数が、二十八、三十二、四十八、

三十九、五十六 となり、又もとの 十八 に戻っていると記載され

ている。

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[私の追記] 以上が 『俳句の手ほどき』 からの内容です。

10年程前に読んだ本からメモ書きした資料をもとに、ここに転記

しましたので、誤記があるかも知れません。詳細を知りたい方は、

必ず原書をお読みください。

----- 俳人檜紀代氏に学ぶ。 -----

----- 著書『俳句の手ほどき』(1998-09, 本阿弥書店、 1785円) -----


初心者に適した俳句解説書を以前探していたら、

檜紀代著 『俳句の手ほどき』 が見つかりました。

参考になる内容なので、この本の概要を紹介する

ことにしました。


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 広辞苑で 「匂う」 を引くと、「にお・う ニホフ 〔匂う〕 《自四》」

と出てをリ、歴史的仮名遣いは片仮名で書かれている。動詞の

活用表は辞典の後部に記載されている。初心者は戸惑うだろうが、

まめに辞書を引いて慣れるしか方法がない。


【四段活用】 「匂えり」 の場合、「匂え」 は四段活用のハ行の

已然形の 「へ」 で、「り」 は助動詞の完了で四段動詞の已然

形(または命令形)に付き、「匂へり」となるのが正しい。


【下二段活用】 「植へし」 の場合は、「植へ」 は下二段で、「

え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ」 と活用し、ここでは連用形の「植え」

となり、「し」 は助動詞の過去で、用言(動詞・形容詞・助動詞)

の連用形に付き、「植えし」 となるのが正しい。


【上二段活用】 「老ふて」 の場合、「老ゆ」 は上二段活用で

「い・い・ゆ・ゆる・ゆれ・いよ」 となり、「て」 は連用形に付くの

で、「老いて」 となるのが正しい。「老ゆ」 は四段活用のハ行

と間違えられることが多い。「て」 の上に 「ふ」 なし、と記憶

すればよい。


【仮名遣いの統一】 俳句は主に歴史的仮名遣いと文語によっ

て表記されるが、内容によっては現代仮名遣いと口語の場合

もあるが、一句の中に文語と口語が混ざっているのは感心し

ない。「嫌われるなや」 の場合、「れる」 は受身の助動詞で、

文語の活用は 「れ・れ・る・るる・るれ・れよ」 なので、「嫌はる」

か 「嫌はるる」 かのどちらかとなる。 「な」 は禁止の終助詞

で基本的には終止形に付くので、「嫌はるなや」が正しい。


【頻度の多いものは覚える】 「どおし」 は 「通し」 で。歴史的

仮名遣いは 「どほし」。 「ほつる衣」 は下二活用の 「ほつる」 

から 「ほつるる衣」 となり 「なお」 は 「なほ」 となる。 

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