----- 俳人檜紀代氏に学ぶ。 -----
----- 著書 『俳句の手ほどき』 (1998-09, 本阿弥書店、 1785円) -----
前回(番外10)からの続きです。
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俳句の約束ごとの一つで、一句の中に一箇所切れが必要である。
発句に用いる主要な切れ字として 〔切字十八字〕 があり、「かな」
「もがな」 「し」 「じ」 「や」 「らん」 「か」 「けり」 「よ」 「ざ」
「つ」 「せ」 「ず」 「り」 「ぬ」 「へ」 「け」 「いかに」 があげられ
る。このうち 「せ」 「れ」 「へ」 「り」 は動詞の命令形語尾にあた
り、「し」 は形容詞語尾を指す。
芭蕉は 「切字に用ふる時は、四十八字皆切字也。用ひざる時は
一字も切字なし」(去来抄)と述べている。「切れ」は先にあげた十八
字に限らず、体言止、助詞、用言の終止形・連用形などでも起こる。
【や】 助詞(間投助詞)。用言・助動詞の終止形、命令形、名詞、助
詞などに付いて相手に働きかけ、相手の気持を引き、また話し手の
感動を伝える語で、意味を強めたり、詠嘆、呼びかけの意を表した
り、語調を整えたりする。
【かな】 (哉) 助詞。体言及び活用語の連体形に付く終助詞。詠嘆
の意を表わす。・・・だなぁ。 ・・・ものだなぁ。 感動を表現するため
に、俳句の末尾に使われることが多い。
【けり】 助動詞 (活用 けら・○・けり・ける・けれ・○) 動詞・助動詞
の連用形に付く。ある事実が真実であったことを新たに認識し、感嘆
するのが本意。思えば・・・なのだなぁ。 はっと・・・思いあたった。
・・・していた。 ・・・した。 ・・・ということだ。 何でも・・・だというよ。
【終止形の切れ】 四段活用の場合、終止形と連体形が同じ。直後に
名詞があれば、名詞に掛かり、「切れ」 ることにはならない。
【連用形の切れ】 直後に名詞があっても「切れる」 ことにはなるが、
終止形の切れの方がよい。
【「ぬ」の切れ】 完了の助動詞 「ぬ」 の終止形と、打消しの助動詞
「ず」 の連体形があるが、連体形は 「切れ」 にならないことがあり、
「ぬは切れ字」 と考えないで活用形を確かめる。
【「か」の切れ】 終助詞で、体言及び用言の連体形に付く。
(1) 疑問を表わす (2) 問いかけを表わす (3) 反語を表わす
(4) 詠嘆・感動を表わす (5) 「ぬか」 「ないか」 の形で、勧誘・
命令の意を表わす・・・などの用途がある。
【「よ」の切れ】 終助詞。 (1) 用言の命令形に接続して命令・許容・
禁止などの意を表わす (2) 体言や活用語の終止形・連体形など
に接続して詠嘆の意を表わす (3) 体言に付いて呼びかけを表わ
す (4) 種々の語に付いて意を強める働きをする。
【名詞と名詞を置く切れ】 意味がつながらない名詞が続く場合は、
それらの名詞の間で「切れる」 ことになる。
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浅野信著 『切字の研究』 によれば、『専順法眼之詞秘之事』
という本の中に、「発句切字十八之事」 とあり、元禄時代を中心と
して、その前後にわたり、初心者のための作法事や式目書が刊行
され、それらの書ごとに切字の数が、二十八、三十二、四十八、
三十九、五十六 となり、又もとの 十八 に戻っていると記載され
ている。
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[私の追記] 以上が 『俳句の手ほどき』 からの内容です。
10年程前に読んだ本からメモ書きした資料をもとに、ここに転記
しましたので、誤記があるかも知れません。詳細を知りたい方は、
必ず原書をお読みください。