いつのまにか、というか先月下旬に、2019年本屋大賞のノミネート作品が決定しておりました。

  今年は去年の「かがみの孤城」的な作品は、出現しませんでした。が、個人的に 「これは!」 と思う作品もあったわけですが・・・・・

 

  まあ、なんと言いますか・・・・・・実際にノミネートされたのは、以下のラインナップでございます。

 

 ・三浦しをんさん「愛なき世界」

 ・平野啓一郎さんの「ある男」

 ・木皿泉さん「さざなみのよる」

 ・瀬尾まいこさん「そして、バトンは渡された」

 ・小野寺史宣さん「ひと」

 ・知念実希人さん「ひとつむぎの手」

 ・芦沢央さん「火のないところに煙は」

 ・伊坂幸太郎さん「フーガはユーガ」

 なんだか「スケール小さっ!!」と思っていたところで、以下の2作の、あまり「堂々たる」とはいえない、ひっそり登場。

 ・森見登美彦さん「熱帯」

 ・深緑野分さん「ベルリンは晴れているか」

 

と、こんな感じ。

 

 早々に予想を言っちゃいますが、木皿さんの「さざなみ」が獲るだろう、と。 ん、テンション、低いです。

 しかし、いかにも木皿さんは選考書店員さんの「好み」「ド直球ストライク」な作家さんなんですよね。小川糸さんと同じような立ち位置にいらっしゃいます。 ちょっと無理していえば、宮下奈都さんの傍流、みたいな。

 「さざなみ」も本屋大賞好みの作品。

 血みどろの死体が大量生産されることもないし(思えば、昨年、なぜ今村昌弘さんがノミネートされたのか、まったくもって不可解です。これは、今村さんへの賛辞です)、人間の美しい部分を丁寧に描いた作品で(かなぁ?疑問あり。人間の美しい部分を丁寧に描いた作品というと、宮内悠介さんの「彼女がエスパーだったころ」や乙一さんの「失踪HOLIDAY」あたりが、浮かんじゃうんですけど)、かといって「明るさMAXはっちゃけストーリー」でもない。受賞しても、どこからもクレームがつかない無難そのものの作品だと思います。もし、昨年、「かがみの孤城」をさしおいて「屍人荘の殺人」が受賞していたら、空恐ろしいことになってたのでは、と思います。伊坂幸太郎さんの「AX」でさえ、かなりヤバかった。「殺し屋ホームドラマ」ですからね。

 木皿さんは、数年前に3作目の小説「昨日のカレー、明日のパン」が、2位にランクインしたので、次作にあたる「さざなみのよる」は大賞を獲るのに絶妙のタイミング、ともいえるでしょう。

 

 このラインナップの中では、ぜひ「ベルリンは晴れているか」に獲ってほしいですが、無理でしょう。ミステリーとしてだけではなく、戦争小説としても秀逸な「戦場のコックたち」でも、大賞を獲れなかったのですから。「コックたち」と比べると低めクオリティの「ベルリン」で受賞できるとは思えない。

 

  次推しは森見登美彦さんの「熱帯」。森見さんは実は好みの作家さんとは言えないんですが、「夜行」でオオバケしたなと、あらためて感じた作品がこの「熱帯」です。でも、これも無理かな、と予想。「夜行」が無理だったくらいですからね。恒川光太郎さん、朱川湊人さん、やや趣向は変わりますが詠坂雄二さん系統の作品が受賞できた前例はありません。

  その点では知念実希人さんも同じ。たとえ毎年ノミネートされても、ノミネート止まりに終わるのではないかと思います。昨年の「崩れる脳をだきしめて」なんて、タイトルが秀逸だと思うのですが、そのタイトルのせいで落選決定かと思います。だいたい、知念さんの作品で圧倒的におもしろいのは、「天久鷹央」シリーズ。ミステリーとしての謎、その推理ともに申し分ない作品ですし、精神医療小説としてもスグレモノ。「新潮文庫」ではなく「新潮文庫Nex」で刊行されたという時点で、アウトなんでしょうね。過去の大賞「謎解きはディナーのあとで」なんて、「天久鷹央」以上に「ラノベ」なんですけど。

 

 平野啓一郎さんの「ある男」も秀作ですが、受賞はない、と予想。なぜか、純文学系作家さんに冷淡な本屋大賞。吉田修一さん、山田宗樹さん、全滅。「百年法」の設定なんて当時は斬新でおもしろかったのに。「しろいろの街の、その骨の体温の」「消滅世界」などエンタメ度の高い作品が目白押しな村田沙耶香さんに至っては、芥川賞受賞作「コンビニ人間」のみが、かろうじてノミネートされただけという、塩対応をされています。

 

 そして、なにも小林泰三さんの「ドロシイ殺し」や、鳥飼否宇さんの「隠蔽人類」、ましてや白井智之さんの「~を~す100の方法」をノミネートしろなんて暴言は吐きませんけど・・・・・・上田早夕里さんの「破滅の王」、櫛木理宇さんの「鵜頭川事件」、深水黎一郎さんの「虚構のアラベスク」、飛鳥井千砂さんの「そのバケツでは水がくめない」、宇佐美まことさんの「少女たちは夜歩く」、そして、まさかまさか原寮さんの「それまでの明日」あたりの作品までノミネートされていないって・・・・・・まさか、書店員さんたちに読んでもらえてもない・・・・・のかな?

平積みにならなかった作品ばかりだもんね。原寮さんは、逆に有名すぎでこの賞には合わないしね。「売れている本」ではなくて、「個人的にお客様におススメしたい本」を紹介するのが、この賞の本来のコンセプトでしたものね。

 

 過去実績をみるに、ノミネートされてもたぶん受賞出来ないであろう作家さんたちといえば、前述の知念さんたち以外では、ノミネート常連の貴志祐介さん、中田永一さん(乙一さん、です)、横山秀夫さん(”賞”嫌いなので、ご本人も獲りたくないかも)、奥田英朗さん、柚木麻子さん(「ダイアナ」も無理だったしね)、柚月裕子さん、月村了衛さん(好みではないけどスゴイことは理解してます)、そして米澤穂信さんも! 湊かなえさんの「告白」レベルの作品があっさり受賞しちゃうのに、「犬はどこだ」「折れた竜骨」「追想五断章」「儚い羊たちの祝宴」「ボトルネック」は、かすりもしないというワンダーランド。

 あと、これは作家さん側に言いたいけど、塩田武士さん。なんで、よりにもよって選考員さんたちの好みから「外した」作品ばかり書くんでしょうか? 「騙し絵の牙」なんて、書影からして、書店員さんたちの神経を逆なでしちゃってるのでは。 もはや、「書店員さんに嫌われることに賭ける」つまり確信犯としか思えません。

 歴史小説くらいは「まじで面白い掘り出し物」を受賞させてほしいんですが。和田竜さんは、初読おもしろくても、読み返すたびに、つまらなくなる作品の典型なのに「村上海賊の娘」であっさり受賞。木下昌輝さんや天野純希さん、岡田秀文さんの立場なし。

 

  木下さんたち同様、たぶん、今後もノミネートさえされないと思うのは、本格ミステリー作家さん全員。新鋭の青崎有吾さんや市川憂人さんも、たぶん同賞とは無縁の作家人生を送るのでは。本格ではないけれど、貫井徳郎さんが無視され続けている理由がわからない。「悲愁」なんて書店員さんたちに率先して売ってほしい作品なのに。今野敏さんも、丸無視ですね。加えてSFの冷遇ぶりにも、目を見張るものがあります。別に、田中啓文さんの「蹴りたい田中」をノミネートしろなんて、大それたこと言いません。でも小川一水さんはどうなるの(本屋大賞を選ぶ立場の書店員さんでも、「アリスマ王の愛した魔物」とか読んでいない? 好みじゃなかった?)、宮内悠介さん、野崎まどさん、飛浩隆さん、石持浅海さんSF部門、小林泰三さんSF部門、ことごとく無視ですね。

 ほかにも、純文学からの華麗なる転換の原田ひ香さん、心がヒリつくような社会派ミステリーの望月諒子さん、上橋菜穂子さんに負けないファンタジーを書く乾石智子さん、引き出しの広さにビックリの門井慶喜さん、老齢とは思えない筆力の皆川博子さん、全員無視。「ビブリア」や「君の膵臓~」をノミネートしているのに、河野裕さんの「階段島」シリーズ完全無視。大森望さん大絶賛の「いなくなれ、群青」はトリハダものだったんですが。

 ラノベではないけど・・・・・せめて「みをつくし料理帖」の「天の梯」くらいは、ノミネートしていただきたかったです。

 

今後、本屋大賞でありそうな展開は・・・・・

 

「恩田陸さん最新刊、3回目の本屋大賞受賞!」

 

これで決まり。