ミッキーが膵臓がんだった時、

 
腹水でぽっこり膨らんだ
 
自分のお腹を見て
 
ユーモアたっぷりに、
 
でもちょっとだけ悲しげに、
 
こう言った。
 
 
「これじゃ、まるで地獄絵図だ」
 
 
手足も顔も痩せこけて
 
お腹だけまんまる。
 
地獄絵図の餓鬼みたいだって。
 
 
 
でも私は
 
どんな姿だろうが、
 
ミッキーが
 
愛おしくてたまらなかったんだ。
 
 
ちょっと天パの
 
毛先がくるんって丸まった
 
うなじとかさ。
 
 
「こんなにカサカサなのに?」と
 
ミッキーがたずねた。
 
その目を見つめ返しながら
 
私は、うなずいた。
 
 
責任感強すぎ、
 
誰にも頼ることなく生きてきた、
 
人に甘えることが出来ない、
 
助けてもらうこともストレス、
 
 
膵臓がんになった人の
 
共通する性格があると知った。
 
 
彼は企業戦士で、
 
長い間一人で戦ってきたから。
 
その上、お母さんの介護まで
 
一人で背負ってやってた。
 
 
でも、
 
肉体人生の最後の2カ月半くらい、
 
人に甘えることが出来て
 
良かった。
 
 
「ルーシィには
 
何でも正直に言えるから楽」って
 
言ってくれたの、
 
嬉しかった。
 
 
 
 
 
 
2年前に大ブレイクした映画
 
「君の名は」
 
ミッキーが亡くなった後の夏、
 
観に行ったけど、
 
あの挿入歌の中の一節は、
 
二人の人生で一番甘くて濃い時間を
 
表してるようで、
 
勝手に自分と重ね合わせて
 
映画館で号泣しちゃった。
 
 
「いつか消えて無くなる
 
君のすべてを
 
この目に焼き付けておく事は
 
もう権利なんかじゃない
 
義務だと思うんだ」
 
 
 
誰にも頼まれた訳じゃないけど、
 
彼の人生を
 
見届ける覚悟をした。
 
 
 
 
結婚の誓いの言葉には、
 
「死が二人を分かつまで」
 
ってあるけど、
 
私たちはむしろ、
 
死が二人を隔ててから、
 
より強く結ばれた。
 
 
死が彼を触れなくして
 
見えなくして、
 
それでも繋がろうとした。
 
 
 
もしミッキーがずっと生きてたら、
 
普通の夫婦みたいに
 
喧嘩もして
 
嫌いな所も見つけただろう。
 
 
でもきっと私たち二人は
 
前世で何度も夫婦をやってきたから、
 
今世の関係で
 
お互いを傷つけ合うカルマを
 
体験する必要がなかったんだろうね。
 
 
 
この世の正式な届けは
 
出してないけど、
 
二人で立ち寄った神社に、
 
なぜか真っ赤なお神酒を持ってった。
 
あれって、
 
結婚の誓いの儀式だよね。
 
五色人の神様の前で
 
二人で手を合わせたんだから。
 
私たち、たぶん今も夫婦だよね。