あの日、あの朝~兄貴が鬱ったんです~ -2ページ目

学校に行きたい。

おかしくなって2日目の夜

兄貴は部屋の中をウロウロと歩き回るようになった。

その歩き方はまるでチンパンジー。背中が曲がっていて、手が前でブラブラしている。見るからにおかしい。


そして、果敢に外に行こうとする。

誰かが「ダメ!」というと、フラッと茶の間に戻って来る。それでもまた、フラッと玄関に行く。その繰り返しだった。

母が言った。「きっと学校に行こうとしてるのよ。」
兄貴は本来、生真面目な性格だから、学校を休んでいる事が凄く気になっていたのだろう。

生真面目すぎる……。


その夜から、いつも私の部屋で寝ていた母が、兄貴の横で添い寝するようになった。

夜に活動的になる兄貴がまたフラフラと歩き出すのが心配だからだった。

高校生の兄貴が、まるで赤ん坊のように母に撫でられながら寝る姿は、不思議な光景だった……。

苦しすぎる姿

兄貴がおかしくなって2日目。

母にうながされて、兄貴はベットから出て、茶の間に来る事が出来た。

少しご飯も食べるようになった。トイレもゆっくりとした動きで行くようになった。

でも、目はまだ曇っていた。座ったままボーッと一点を見つめていた…。



中学生だった私はその時、いわゆる「オタク」だった。
当然のように学校ではイジメられていた。

でも兄貴は、真面目で優しくて明るく、男子からも女子からも人気のある人だった。

友達もたくさんいて、片思いながら恋もしていて、高校生という時期を楽しんでいた。


でも今、目の前にいる兄貴はそんな2日前までの姿が嘘のように、まるで廃人のような絶望を背負った顔をしていた。


憧れていた兄貴のそんな姿が、思春期だった私の心には酷く刺さった。

悲しいんじゃない…苦しい……。苦しくて苦しくて、見ていられなかった。

おかしくなった兄貴

兄貴がおかしくなったその日
中学生だった私は普段通りに学校に行くしかなかった。

当時、高校1年生だった兄貴は当然、学校は休む事となった。


一体、何があったんだろう…知識も何も無い私にはわかるわけもない。不安だけが気持ちに覆い被さった。


学校から帰ったら、何事も無かったように兄貴が普通に戻っていればいいのに……。


そんな願いも虚しく、学校から帰った私が見た兄貴は、朝のままベットの上でボーッとしていた。


朝から体勢を変えず、ご飯も食べず、ただ一点を見つめる兄貴の目は、まるで黒い霧がかかったように曇っていた。人の目って本当に曇ってしまう物なんだなぁ…。

ねぇ、兄貴?
一体、どうしちゃったの??
一体、何を見つめてるの??
冗談だったらいい加減にしてよ…。
ねぇ、兄貴。
真面目で一生懸命だった兄貴に何があったの??


———真面目で一生懸命、これが後に大きな要因になる事を、この時は誰も知るよしが無かった———