俺の誕生日の日没まであと1時間弱
俺たちは最後の望みをかけて能登半島を走っていた。
KIMRAが頭くらいの波がわれていたといった港に近づいてきた。
普段、俺が店のMEMBERたちを海に連れていくときKIMRAを助手席に座らすことが多い。
それはコイツの分析力が優れていてうねりの大きさや向き、そして風を考慮していい波のPOINTを探すのがうまいからだ。
ただ、KIMRAの場合、動物の直感的なものではなく文明社会が生んだあらゆるものを駆使しての結果なのをおれは知っている。
もちろん、いつもPOINTに着けば、波をチェックするがそのときのKIMRAは波を読むことができない。
目が悪いのと波を見る力がまだ身についていないからだ.
当然ながら波のサイズもいつも実際のものとはチグハグなので今回KIMRAだけが見た頭の波というのも幻で終わる可能性が高い。
一瞬、国道から海は見えたがやはり腰あるかないかの波が手前でわれているようだった。
どうせここしかないので一応海岸まで行ってみることにした・・・
先程、渋滞していた神社の手前を降りていくと防波堤が見え、脇道に入ると海岸にでる小道につながった。
小道を海岸に向かってj走るとそのままBEACHに出た。
信じられない光景が目の前に広がる。
KIMRAのいうとおり、頭位のRIGHTの波が永遠と続いている。
風はSIDEOFFだったが面にはさほど影響がなく完全に風を交わしていた。
SETが止むと波はなくなるが頻繁にSETが入ってくるようだった。
SUNNYが呆然と波を見て、つぶやいた。
“マジかよ・・・・PERFECTじゃん”
その言葉を皮切りに皆一斉にWETに着替え出した。
外はめちゃくちゃ寒かった。
時折雪も降りつける。
ただ今の俺たちにはまったく関係なかった。
WETに最速で着替え、とにかく一本でもいいから、あのLONGRIGHTを乗りたいだけだ。
41は3分でWETに着替えると準備体操も何もなしで海に飛び込んだ。
続いて俺とKT8が入る。
鍵は適当においといたので誰かが勝手に閉めるだろう。
KT8と海に飛び込むと並走してパドルしながらKT8が俺に聞く。
“TENCHOU、CAPもGLOVEも付けてないけど大丈夫ですか?”
“知らねえよ。手がとれちゃっても関係ねえや・・・
ただね・・・寒くてもなんでもいいけどよ~お前に一番のセット乗られるのだけは勘弁ならね~よ”
俺がJOKEのような本音で返すと
KT8は“勘弁してくださいよ~”と笑顔で答えた。
日が沈むのが早いか?
それとも俺ら全員が波をもぎとるのが早いか。
俺らと自然との一騎うち。
今日、SURFINGできただけで既に敗者はいない。
この日はKT8の日だった。
何本も形の良いRIGHTのレギュラーをつかむと、どこまでも乗っていくのが見えた。
遠くの方でまだ乗ってるぜと言わんばかりにたまに白いスプレーが舞う。
俺はあまりいい波に乗れなかった。
ただ皆の笑顔が俺にとってのBEST RIDEだった。
誕生日に自然からの最高のPRESENTをもらい感無量だ。
ふと空を見ると凄い勢いで大きな氷が降ってきた。
頭を引っ込めるとすぐ止みそして目の前に大きなSETが顔を出した。
風に煽られながらAIRDROPすると一発目の壁で大きなFLOATERをかけ、そのままRIPしながら岸まで乗り継いだ。
もうすでにやり残すことはなかったので沖へ戻ろうとは微塵も思わなかった。
海から上がったところから車までは300mくらいあるだろうか?
長い距離を乗ったようだ。
寒い冷気がGLOVEをしてない手の甲を凍らそうとする。
ただ、今日は寒いのを忘れてすがすがしい気分で歩けた。
数秒ごとに暗くなっていくBEACHを歩きながら、この旅で幾度も神がかりにSURFINができたことを考えていた。
“心の底からSURFINGしたい奴が6人も集まれば、きっと、波に乗ることができるんだろうな”
SUNNYもKT8も41もKIMも、そしてBAKAも・・・俺だってSURFINGとったら何もないもんな・・・
神様もかわいそうだから、SURFINGぐらいやらしてくれんだろうな・・・・きっと
完全に日は暮れてあたりは真っ暗になり波待ちしている皆の姿も見えなくなった。
今夜は旅のLAST NIGHT。
SUNNYの風も治り完全復活したようだ。
間違いない。
今夜はすぐには寝れない富山の夜だろう。

