ジム・トンプスン『脱落者』☆脱落者たちのモノローグで繋がれた、独特異様な蛇行展開のノワールの佳篇 | 書物と音盤 批評耽奇漫録

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ジム・トンプスン『脱落者』(1961年)☆

 

またまた文遊社から出ましたトンプスン作品

 

テキサスの西の、大きな砂地の町にて、保安官補のトム・ロードは、原油採掘権をめぐる陰謀の犠牲となり、ガス会社の男を恨んでいた☆

 

だが男は突発的な事態の中、死んでしまい、トムは職を捨てて、仲のいい娼婦ジョイスと土地を離れるか否か煩悶する☆

 

その頃、死んだ男の若き未亡人ドナが、夫の復讐のため、トムを追い回す☆

 

その後、死の連鎖が続くが…

 

 

 

と、お話のさわりを端的に要約するとそんな感じなんですが、実際には、有り得ないほど独特に蛇行した、意表を突くような不思議な展開で描かれています☆

 

おまけに話者が、章ごとにかなりコロコロ変わるので、さらに不思議な独特展開と錯綜したサスペンス感が増幅し、最後まで予定調和な構成には全くならないままエンドとなります☆

 

ノワールと言えば、ノワールだし、疑心暗鬼な怪しい奴だらけの不思議な描き方のサスペンスミステリと言えば、まあそんな感じですかね☆

 

いずれにしても、これも、実に文遊社刊行のトンプスン作品らしい、着地点不明な蛇行を繰り返す作品ですな☆

 

主人公の保安官補トム・ロードの、イケメンで二重人格的なところは『内なる殺人者』や、または『アフターダーク』的だけど、このトムを追い回す若き未亡人ドナは、元義父だった男と結婚した女で、かなり直情型の正義漢☆

 

トムの相手役的な存在が、ファムファタル的だけど、どこか純情な娼婦ジョイス(『内なる殺人者』に出てきた娼婦と同じ名の、ジョイス☆)から、この若き未亡人ドナに変換するところもいいです☆

 

また、妻子との貧しい暮らしに打ちひしがれ、自身の不甲斐なさに絶望している、一見、まるでダメ保安官補みたいな、脇の脇役的なトムの同僚が、その実、中々しっかりした捜査官として終盤台頭してきたり、暴力的な黒幕の、いかにもノワールらしいキャラとかもいいですな☆

 

章ごとに話者が変わると、毎度かなりコッテリした内面描写がその度に丁寧に描かれているので、主人公のトムだけが主役という感じがせず、最後に発覚する連続殺人の犯人の事情なんかもちゃんと語られていて、ヒューマンなノワール小説としても秀逸な作品ですね☆

 

いずれにしても、トンプスンらしい不思議で独特な蛇行感の展開の描き方に、強い個性が出ている、今作も中々に面白いノワールサスペンス小説ですね☆

 

原題の「THE TRANSGRESSORS」とは、罪人、脱落者、またはSが最後に付いてるから「罪人たち」「脱落者たち」という意味でしょうが、つまり、ここに出てくる奴らは、主人公のトム以外もみんな罪人、または脱落者である、謂わば「内なる殺人者」の最後の一文「おれたちみんな」に匹敵する、様々なタイプの違う「脱落者たち」ばかりが描かれ、そうした、タイプの違う複数の脱落者と脱落者のギリギリのモノローグを繋ぎ合わせて語り継いでいる=「おれたちみんな」の内なる声で語り継いだトンプスン・ノワールという感じなんですな☆

 

だから展開も、脱落していくような異様展開や、脱落者たちのそれぞれのギリギリの内面描写の連続となっているんでしょうな☆